GV学園は、平和だ。
 そこらじゅうで爆発の音が響いたりどこかの穴の中では殺伐と殺し合いめいたことをやっていたりしても平和なのだ。彼らにとっては。とりあえずそういうことにしておいてくれ! 頼むから!!
 しかし、必ずそれを脅かすものが現れる。そのために、今ここに、新たなる戦士たちが立ち上がる!
 ……という理由からではなく、単に少し手におえないような厄介事のために組織された戦士たちが今、立ち上がった!
 非常に格好悪い(ボソリ)。

 鋼鉄爆誕アルフォンガー
  prologue〜爆誕! fullmetal body & iron heart!!〜
 第0話『0って何だ0って。いやっけしてOではないぞ。……見た目では変わらんな。前者が零、後者はアルファベット15番目だ。さて、というわけで0。無だ。え? 無駄? それはやばいではないかいきなり始まる以前という意味での0からして無駄だとは。あぁもうこれでは続けることは不可能。無駄無駄無駄ぁっ! と撲殺されてしまう!』

「流石に、われわれだけでは手に負えなくなってきたな」
「そもそも上のほうだけでどうにかしようって言うのが無理な話だったんだよ」
「いまさら言っても仕方あるまい。そうだな。生徒の問題は生徒に解決させるのが一番だな」
「しかしアレには生徒とはいえないものも。ただの裏山の……」
「言うな。ここでは大差ない。問題を起こすことには変わりないんだ」
「はぁ、そんなもんですか」
「そうだ。それに、そうやってこちらの仕事を減らせば、その分あの計画も……」
 どこかでの会話。暗い部屋で、誰が話しているか、何人話しているかもわからない。
 そして、秘密裏に進められる計画。それは果たして、GV学園にいったいどのような事態を引き起こすのであろうか……。
 ……だが、そんなことはまったく関係なく。
 その解決策は、ある一人の少女の気まぐれな欲望によって生み出されるのであった。

 ピンポンパンポ〜ン
 微妙に気の抜ける音。放送の合図だ。
「え〜。これから呼ぶ生徒は、緊急の要件があるので、すぐに第8会議室まで集合すること。……以上。直ちに向かってください」
 呼ばれた生徒たちは、なんだなんだと乗り気でないながらもとりあえず第2会議室に向かうのであった。
 それが彼らの後の人生に、とんでもない思い出したくない記憶を植えつけるものだとしても(若干名除外)。

 第8会議室。
 GV学園にある8つの会議室のうちのひとつ。会議室は部活のミーティング、委員会の定例会、授業などに使われる多目的室となっている。中でも第8会議室は、最近できたばっかりでほとんどまだ誰も入ったことがないのであった。
 そこにぞろぞろと集まってくる生徒たち。黒板に座席表があったので、そのように座る。
 ちなみに1番に来ていたのはミラルカ・ボーダー。最後はイリア(迷子になったらしい)だった。
「いったいなんだって言うんだ。こんな濃いメンバーばっかり集めて」
「兄さん。僕らも人のこといえないよ」
 そういうのは錬金術師のエルリック兄弟。兄弟間違われる率№1だ。
 だが、確かにエルリック兄弟のいうとおりこの部屋には濃いメンバーばかりが集められていた。
 若干、影の薄すぎるものなどいるような気もするが。
 みながいろいろと喋っていると、ドアが開いて小河原親子が入ってきた。
「えー。突然君たちに集まってもらったのは他でもない。君たちも知っているとは思うが、近頃一部の生徒、生徒以外のものによる大規模な破壊的行為が目に余る。自治会で何とかするよう努力はしていたが、流石に限界に近い。そこで、この学園なわけだから、生徒たち自らにやらせようという提案がなされ、こちらで適当な(適当ににあらず)人材を選出し、ここに来てもらったというわけだ」
 教室内に一時どよめきが起こる。
「すみません」
 誰かの挙手があった。
「何だね、トマ君」
「あの、つまるところ僕たちはどういう風なことをするんでしょうか?」
 現太と両兵が顔を見合わせた。
「単刀直入に言わせてもらおうか。巨大ロボットを作成し手におえない事件の鎮圧にあたってもらいたい」
 えー!
 誰が言い出したでもなく、そこらじゅうから似たような声が続々と上がった。
 何で俺が横暴だあんたらがやれよしったこっちゃない俺以外にやらせろ……多種多様な意見。さすが個性あふれるGV学園。考えることも十人五万色だ。
「静かに。まぁ、諸君らの言いたいこともわかる。だが、何も只でやれといっているわけではない。もちろんやってくれる人たちには特別待遇がある」
 そういうと、現太は黒板になにやら書き始めた。両兵は黒板横でつまらなそうにしていた。
 そして、現太の書いた内容はというと。
 ・特別単位(10単位)認定!
 ・購買までの特別ショートカット通路使用権!
 ・食堂にて特別メニュー注文可能!
 ・個人ロッカールーム所有権!
「やります」×9割以上の生徒
 はやかった。
 少数派のそれでもごねたやつらは、現太の「全員認めないとこの話はなかったことに……」との言葉より、数の暴力=多数決によって抹消。無残なり数の暴力。

 というわけで。ここに5年3組地球防衛組が誕生した!
「上っ面だけだけどな」
「そもそも地球って何?」
「マックス漢〜漢マックスマキシマム〜♪」
「それCJ」
 突込みが多々はいったがさておき。
「さておくな」
「兄さん、ところでぼくら誰にツッこんでるんだろうね?」
「さぁな」

 一通り意味のない行為が終わったあとで閑話休題と。
「質問です」
「なんだね?」
 トマ(任命・質問係)はおそらく皆が思っていたことを聞いた。
「5年3組っていったいどういうことですか? 僕達結構年ばらばらですよ。兄弟だっているんですし……」
 少し静寂。現太もどこか言いにくそうにしている。
 ようやく口を開いた。
「いや、それについては私も進言したのだが、この計画を提案し、予算も出したいわばスポンサー兼チーフの意見で、『学校+巨大ロボット=5年3組は絶対不文律』といわれて。誰も強くいえなくてな。そこら辺はひとつの固有名詞と考えて気にしないでくれたまえ」
「誰だよそんな馬鹿なこと言ったの〜」
 パン。乾いた音がした。発言者・ルッカは倒れた。でも結構丈夫だったので復活した。
 そして皆は悟った。 (スポンサーはミラルカさんか……)
 逆らえない。誰もがそう思った。(若干名の馬鹿と記憶喪失除く)
「さて、晴れて5年3組のメンバーとなった君たちには早速」
 少し間をおいたあと。
「ロボットを製作してもらう」
 えー!
 再びどよめき。というか罵声。
「落ち着きたまえ。何も1からというわけではない。ここにはうってつけの頭脳的人材と、製作に大いに役に立つ錬金術師がいるじゃないか」
 皆の視線がレオン、プリシス、エルリック兄弟に向く。
「そして操縦のほうは人機操縦の経験を生かし、青葉君とルイ君にメインを任せ、他の皆は両兵に指導をしてもらってサブのほうを担当してもらう」
「で、でも先生」
「何だねアルフォンス君」
「いくら兄さんでも、巨大ロボットみたいなものはいくらなんでも練成できないよ」
「その点は心配要らない」
 そういうと、現太は荷物の中からいくつかビンに入った液体を取り出した。
「そ、それは……!」
「そう、賢者の石(偽)だ」
「でも、それの材料って生きた人間なんじゃ……」
「心配には及ばない。材料はすべてハリーだ。あれでも一応人間だからな。問題はない」
「嫌、それは、ちょっと、どうかな……」
「問題はない。使用についてはなんらさしさわりがないそうだ」
 ぼそりと、アルがエドに呟いた。
「兄さん。たとえもらえてもボクあれで元に戻りたくないよ」
「安心しろ。俺もしたくない」
 というわけで、設計図作りをレオンとプリシス(一応エドとアルも)、戦闘、武器の扱いに慣れているもので両兵の指導を受け、残りの何ためにいるのか微妙にわからない人たちで材料集めに奔走した。

「設計図はこんなもんだね」
「材料大体これくらいでいいでしょ〜?」
「親父。大体のところは教え終わったぜ」
「うむ、では早速試運転と」
「あ、あの、先生」
 現太の持っていた紙を見て、アルが恐る恐る聞いた。
「何だね? アルフォンス君」
「そ、その、『鋼鉄爆誕アルフォンガー計画』って、いったいなんなんですか?」
「……」
「……」
 気まずい沈黙。
「あぁ、わすれていたよ。アルフォンス君。君が巨大化されてロボの外骨格になる。内部機械は君の中。操縦席も君の中だ」
「え、えぇ〜っ!!!」
「すまんが、スポンサーからの要望なのだ、逆らえないんだ。それにもう、みんな名簿にサインしてしまっただろ? あれが実は契約書で、違反すると重大な厳罰が……」
 アルフォンスは、後ろから感じるミラルカの視線のせいで、ただ頷き、夜は布団を涙にぬらすことしかできなかった。
「アルフォンス君も認めてくれたところで、早速試運転を……」
 アラーム。赤くなる視界。緊急事態発生の合図だ。
「どうした?」
「大変です。また……!」
「くっ。結成直後にいきなりか!」
 現太は5年3組の皆を見回した。
「止むをえん。諸君。いきなりだが実践だ。暴走した巨大ロボを食い止めてくれ!」
 3度目のどよめき。
「言い忘れたが、一度ミッションを成功させる毎に、祝勝パーティと称して無礼講の宴会が開けるぞ!」
 全員いっせいにいつの間にか決められていた定位置についた。
「よし、いくぜアル!」
「わかった、兄さん」
 パチン! エドワードは勢いよく両手を合わせるのと、レオンの操作により床に方陣が現れるのは同時、方陣の中央にアルフォンス。
 手のひらをあわせることにより自分内に円を生成。手を離し両手をアルフォンスの背中へ。流れ込む力。賢者の石(偽)によって増幅される。
 まず、地面に沈むアルフォンス。そこから校舎全体へと広がり、肥大化していく。エドワードの手のひらは今は方陣の中心に。
 力を十分量注ぎ込み終えれば、そこからは構築に。設計図のイメージどおり、装備、内部機構を配置。外骨格イメージの確立。
 そして……。
「鋼鉄爆誕! アルフォンガー! 推参!」
 その間わずか3秒。
「う〜む。賢者の石(ハリー)といっても侮れないな」
「そうだね。兄さん」
「うわ、なんか声が響いてくる。それに低い! アルじゃないみたいだ!」
「こっちだって、体の中から響いて変な感じだよ。高くなっちゃってるし」
 通信設備を見直さなくちゃな。レオンは冷静だった。
「喋ってる暇はねぇ!来たぞ!」
 両兵の声に、皆一斉にモニターを見る。そこに映っていたのは……。
「ガ・ガ・ガ・ピ〜!!!」
 巨大シオンロボだった。
「……5年3組の任務に来るであろう物の80%以上が、あれの鎮圧だ」
 現太の声はむなしく響いた。
「えっと。破壊すればいいんだね」
「あぁ、それで問題ない」
「よし、目標確認! 目標、巨大シオンロボ! 任務、目標破壊! 皆、行くぞ!」
「つうかいつの間にリーダー口調なってるんだ、エド」
「……いいんだよ! 弟がこういうことになってるんだ! 兄の俺ががんばらなくてどうする!」
「そういう問題なのか?」
「いいんだ! ほら、そんなこといってる間に来た!」
 目前まで、シオンロボは迫っていた。
「くっ! 左ジャブ!」
 何の味気もない真正直なジャブだったが、暴走しているだけのシオンロバにはきれいに当たった。
「よし、一気にいくぞ! 左左左右左左右右、右!」
 連撃が入る。ところどころがゆがんでいくシオンロボ。
「うわ〜、体が勝手に動く! なんか気持ち悪い〜」
「慣れるんだ。これも試練だ、アル!」
 よろよろと、シオンロボが体制を崩す。
「よし、一気に止めだ!」
「ここはJ・B(ジャスティス・ブレード)で!」
「アルはCJじゃねぇっ!」
「止めっていっても、時間なかったからたいした武器はないよ」
 そういったセイジに、突然後ろから誰かが抱きつく。
「そこは、セイジと私の愛の力でどんな敵でも殲滅よ!」
「うわ、コルディ、いきなり何するんだよ!」
「照れなくったっていいわよ。私たちの愛は、誰にも止められない。だから、私たちの行く道にあるものは何だって殲滅よ!」
「意味がわかんないだろ!」
「だぁぁっ! うっせぇ馬鹿ップル! いちゃつくのは後にしろ! コルディも持ち場を離れるな。セイジの隣にしてやるから」
「わ〜い」
「そ、そんな、せっかくコルディから少しでも離れられたと思ったのに」
「セイジなんか言った?」
「い、いえ、何も……」
 負のオーラをコルディは纏っていた。
「ふふふ。必殺技がないだって? 心配するな。ちゃんとある。考えてある!」
 言うが早いか、エドワードは両手を合わせ、そして地面に。
「照準合わせぇッ!」
「は、はい! しょ、照準、合わせました」
 気弱そうに鈴木さんが答える。
「お〜し。いくぜ! 究極絶対無敵最終奥義!」
 なんじゃそりゃ。結構な人がそう思った。
「ヘェェェッドォゥ! バァズゥゥゥゥクワァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!」
 なんて言ってるのかわかんねぇ。何人かがそう思った。
 ドッゴ〜ン!
 大きな音ともに、アルフォンスの頭部が一直線にシオンロボに向かって発射された。
「僕の頭!」
 頭部はシオンロボに直撃すると、大爆発。見事シオンロボは消滅した。アルフォンスの頭部と一緒に。
「ひどいよ兄さん!」
「心配するな。あれはどうせ本物の頭じゃない。元に戻ったらなんともないさ」
「だとしてもひどいよ。せめて一言言ってよ!」
「言ったら絶対ごねるだろ」
 シオンロボ(&アルフォンスの頭部)と一緒に爆発炎上消滅した体育館を背景に、5年3組初の雄姿は、首なし巨大ロボとともに。
 がんばれ、5年3組。GV学園の平和を守るため! ゆけゆけ、アルフォンガー! 戦え、地球防衛組!


 (ぼそり)だから地球って何さ。

第0話、完
 第1話へ続く。

・後書き
 ようやく書いた第0話。アルフォンガー誕生の秘密です。……秘密なんて、そんなたいそうなことありゃしませんけど。
 さて、結構やっつけだったんじゃないかと結構後悔してます。あと、天捺灯さん。設定をちょっと使わせてもらいました。ごめんなさい。
 ふうう。これから広げて行けるのかアルフォンガーワールド。ハガレン4巻カバー内のあれをアルフォンガーだと思いたいぜ身勝手万歳!
 レッツゴートゥージアナザーワールド! アンドシーユーネクストウィーク!
 ……来週なわけないだろ(ぼそり)。