そして彼女達は行く


「もう来ネーヨ!! ウワアァァァァン!!」
 と捨て台詞を残し弟、名無しさんなんだよ(29番)の元から走り去ってしまった私、訳あり名無しさんだよもん25番独身東京都出身高砂部ya……ってなんでやねん!
 なんで私まだ走ってるの! なんだかその場の勢いにまかせて突っ走っちゃったけど、止まるに止まれないここは何処? 私は誰?
 ってこれじゃホントに弟の所まで帰れないじゃない、ああもう武器も捨てちゃったし、どどどど、どうすればいんだー!
 ってますます加速してるわよ私。そう私達は加速していく! 
 って違う、そうじゃなくって、えーと、えーと考えるのよどうするどうする……わーわかんないわよ!
 ん? 何か前の方から声が聞こえ……! 空から女が蔦に掴まりながらもの凄い勢いでこちらに向かってきますよ。
 もの凄い勢いで木から木へ飛び移る女ターザンの画像が見られるスレはここですか?
 その女は私の目の前にストンと着地した。あれ? この娘何処かで会ったような……
「な、ナナ先輩! 私ですzinです!」
 突然目の前に現れて私に抱きつく女の子。そう私は今正にギャルゲーの主役! 役得!
 zin、zin、zin、zin、zi、zi、zin……って何かのフレーズが頭の中を駆けめぐるが思い出した。
「あ、貴方○×」
「先輩! それ本名なんで一応コテハンで呼んで下さい」
「あ、ゴメンゴメン。zinね。オッケー」
 私の可愛い後輩。お互いマイペースだけど何故か気が合った二人。
 私が卒業してからは全然会ってなかったけどこんな所で再開できるなんて。
 嗚呼有り難う神様仏様麻枝様! 下川氏ね! 馬場も氏ね!
 いやそうじゃなくて、私はこの奇跡的な再会を心から喜び彼女を抱きしめ返した。

「でもナナ先輩もハカロワを書いていたなんて、私、ちょっと感激です」
「あ、あー、まぁね 訳ありなのよ……ってzin貴方さっきあの部屋にいた? いたなら気がつかないハズないんだけどなぁ」
「私達、9人程後発組がいたんです」
「あ、そう言えばシェンムーが放送でそんな事言ってたわね」
 私達がのんびりそんな話をしていると向こうから誰かがよろよろとやって来た。
 銃を持った男だ。しかもかなり息が荒い。
 zinタンハァハァとか言いかねないヤツだ。危ない。
 私はzinを庇うように更にきつく抱きしめ男を睨み付けた。
「きゃ! ナナ先輩……人が……見てます」
「フフ……減るもんじゃなしいいじゃないか」
 ワザと男の声色を使って喋る私。
 ってそうじゃなくて! 今は危機的状況なの! ピンチにパンチ!
「はぁ……あんまり……一人で……先に行かないで……下さいよ……」
 肩で息をしながら男が呟く。ほへ? どういう事?
 するとzinが私の胸の中で小刻みに体を震わせながら笑いだした。
「相変わらず貧乳ですね先輩」
 ずて。思わずズッこけてしまった。いや本当の事だけどさ、
 そっちこそ相変わらず思った事をズバッと言う娘だこと。
 でも彼女のそんな正直でまっすぐな所が私は好きだったりするのだ。
「彼は私の仲間の真空パックさんです」
「な、なーんだ、それならそうと早く言ってよ」
 私は力無くその場にへたりこんだ。

 それから私達三人はお互いの状況を確かめ合った。
 そう彼女は昔から争いごとが嫌いだった。こんな状況でもそれを止めようと思うのは無理もないか。
 嗚呼でもこの真空パックさんも可哀相に、なんだか妙に疲れた顔をしている。
 きっと彼女のマイペースに振り回されたんだろうなぁ。
 話は結局の所彼女の探知機で仲間になってくれそうな人を捜すというのを当面の目的とする事になった。
 仲間、仲間、な〜か〜ま〜って言っても他に誰が……忘れてた。
 我が親愛なる弟名無しさんなんだよ29番童貞(憶測)東京都出身二子山部y……
 とにかく弟を捜さないと。
「わかりました、じゃまずはナナ先輩の弟さんを探しましょう」
「もうのたれ死んでるかもしれないけどね」
 ツカツカと先を歩いていく二人の後ろで真空パックは呟いた。
「姉弟でハカロワかよ。おめでてーな」

【25:訳あり名無しさんだよもん 学校で後輩だったzinと合流】
【41:zin 訳あり名無しさんだよもんことナナ先輩と合流】
【42:真空パック 仕方なく二人についていく】