川へと続く道


 テレビで「長寿のご老人、○○歳の誕生日」などというニュースを目にする度、反吐が出る思いだった。
 80年だか100年だか知らないが、自分の人生を極限まで薄めて、何の得があるというのか。
 例え短くても、思い切り濃い人生を歩んで生きたい。ずっと、そう思っていた。

 エロゲーには、様々な人間の、様々な人生が濃縮されて詰まっていると思った。
 だから、俺はエロゲーをやった。面白かった。色んな人生を体験出来るというのは、いいことだ。
 ハカロワに参加したのもその一環だと言える。時には主人公になり、時にはヒロインになり、
 様々な人間の様々な人生を書き上げていった。充実した時間だったが、終わったあとには、空しさが残った。
 ゲームは、ゲームだ。ゲームの期間が終了したら、その後には何も無い。

 だから、れっきとした現実世界でこのような事に巻き込まれるのは、とても幸運だと感じる。
 俺はここで死ぬかもしれない、というかその可能性は限りなく高い。
 だが、何を悔やむことがあるだろうか?
 俺は今、のうのうと退屈な日々を過ごす凡人よりも、何倍も濃い人生を送っているのだ。
 このとびっきり非現実的な現実の中で最期を迎える。最高じゃないか。
 だから俺は、精一杯このゲームを楽しむことに決めた。

 誰かを守って行くのもいい。殺戮者になって、徹底的な悪役になるのもいい。
 その一瞬一瞬が、人生最高の思い出となって、いつまでも俺の心の中に残るだろう。

 ——そう、川のほとりへ持って行くには、最高の宝物じゃないか?

【16:River.武器などはまだ一切不明】