飛べない夜鶯
YELLOWはただひたすら疾走していた。何でも願いを叶えてくれるドラゴンボール改め、どこでも好きなソープに連れて行ってくれる瀬戸を捜すために。
その神龍瀬戸が彼に出した条件。それは葉鍵ロワイアル一巻を完売させるに足る完成度にすること。それが満たされたとき、YELLOWをソープに招待させる、と瀬戸は彼に誓った。その誓約のために彼は(2巻はしりませんが)改訂もしたし改題もやった。
「おらぁ! 誰かでてこい! 誰でもいいから俺の前に出てきて瀬戸っちの行方をおしえんかーい!」
周りに響き渡るようにYELLOWは怒鳴りながら走る。出会った人物ことごとくに瀬戸の消息を訪ねていけばいつかぶちあたる。簡単な話だ。
YELLOWは最近凝っている推理アドベンチャーゲームから多くのこと(主にコマンド総当たりのすばらしさ)を学んでいた。
「伊達と酔狂でてめぇのホムペの100の質問に『趣味はエロゲーとオナニー』なんて書いてないんだよ。だから瀬戸っちでてきんしゃい!」
そう。瀬戸にソープをおごらせた時、ようやく自己紹介の趣味欄に『風俗』の二文字が爛々と輝かせることができる。その時、彼は真のハカロワ書き手として全世界に覇を唱えることができるのだ──少なくともYELLOWはそう思っていた。
走りながら彼はバッグを抱く力を強めた。YELLOWへの支給武器はティッシュペーパーと枕とローションだった。
普通の書き手であれば絶望と失望にうちひしがれるようなブツであったが、彼は落胆しなかった。むしろ誇らしげでもあった。
ソープという栄光の場所を目指すという彼にとって、それらは約束の地へのパスポートも同じなのだ。
「この舞台を生き残った時……俺はおとなの特選街を越える」
しかし、彼は知らなかった。自分の向かう方角と正反対に瀬戸がいて、しかも彼の向かうすぐ先に、三人を殺した命が手ぐすね引いて待ちかまえていることを……。
人間努力と辛抱。神は七難八苦を黄色き人に与えたもう。
ソープへの道は長く、そして険しかった……。