『彼が愛したやつらへ』
私の友人は死にそうです。
病気なんですよ。一種の。
体中に病原体がくっついてましてね。
だめなんですよ。もう。
私は彼とは長いつき合い…そう
長い長いつき合いになんですがね。
もうだめですね。
赤褐色の肌は紙の様にカサカサ
あんなに豊かだった緑の髪も腐りかけたり
半分が抜け落ちたりしているし。
青い瞳は小汚い薄茶だし。
どう思います?
やっぱりだめですね。
病気にかかってない頃の彼はそれはもう
綺麗なものでした。
誰もが彼を畏れ崇め讃えた。
本当なんですよ。
今の彼からじゃ想像もつかないでしょう。
いや、本当の事なんです。
でもね
彼は優しすぎたんですね。
優しすぎたんです。
人間どもは偉大な彼を最初は崇めていたのに
最近…
いや、ずっと遠い時に思えるね。
おろかにも蝕みはじめた。
本当におろかだね。
彼がいなくなれば人間は死んでしまうのに。
彼はお前たちの父なのに。
そう。
私は月。
そして私の友人はお前らに飲み込まれた地球。
優しすぎた地球。