御神籤

   「寒みぃっ!!」

   手袋をした手を顔の前で組んで息を吹きかける。
   こんな極寒の中だが境内へと向かう参道は多くの人で埋め尽くされていた。

   「だからもっと後に来ればよかたのに。」

   横でダウンジャケットにマフラー手袋と千秋よりも完全武装をした高耶があきれた声で千秋に話しかける。

   「そうは言ってもだな、元日ってのは1年に1回しかないんだぞ?」

   「そりゃそうだけど。」

   二人が並んでいるのは初詣の参拝の列である。
   せっかくだから日付変更線を超えたらすぐに行くぞと深夜12時を過ぎて家を出てきた二人である。
   大きい神社でもないが近隣からの参拝客で神社は多くの人でにぎわっていた。

   やっとのことで賽銭箱の前へと辿り着くと仲良くふたりでお賽銭を投げ入れる。
   二度ほど手をたたいて二人はそっと静かに目を閉じた。

   「おまえいつまで祈ってんだよ。」

   素早く済ました高耶に対し、千秋はやけに長く目を閉じていた。

   「だって500円お賽銭入れたんだもんそのぶんお願いしなきゃもったないだろ」

   「そういう問題じゃないと思うけど・・・・」

   そんな高耶の言葉が耳に入っているのかは行っていないのか
   千秋は高耶より先に歩き出すと目の前のこれまた長蛇の列を指差した。

   「あれ、やるか?」

   指差した先はおみくじに並ぶ列だ。窓口が多いので回転率はよい。

   「せっかくだ、占ってみるか。」

   二人は並びおみくじを結ぶ板が置いてある場所で待ち合わせをすることにして別々の列へと並ぶ。
   5分も待たずに自分たちの順番がまわってきた。100円を渡しておみくじと大きく書かれた筒を振る。
   それぞれ受け取ると中身は一緒に見せることにしていたので中身が見えないよう閉じて待ち合わせ場所へと向かった。
   千秋のほうが1、2分送れてやってきた。

   「わりぃ、前の子供が長くって。」

   「別にいいって。それよりせーので見せあいだ。いいな?」

   「臨むところよ!」

   「勝負じゃないってーの。」

   「わかってる。じゃ、せーの!」

   二人がお互いの見える位置におみくじを開くと高耶が『凶』で千秋が『大吉』だった。

   「げ、俺凶だ?」

   という高耶に対し

   「やったー大吉。俺様ってやっぱ凄いっ!!」

   大喜びの千秋である。

   「おまえ正月からついてないなー。今年は気をつけろよ。うんうん。」

   上機嫌の千秋に対し「凶、凶、凶・・・・」と高耶は凶を引いてしまったことに対し気持が沈み気味だった。
   お互い中身を読んだろころでおみくじはこの神社へ結んで帰ることにする。

   「じゃ、結んで帰るかな。」

   「ああ。」

   二人とも一番高い位置におみくじをむすぶことにしておみくじを縦に折り始める。すると千秋が

   「あ、ちょっとおまえのおみくじかして」

   と言って結ぼうとしている高耶のおみくじを奪った。

   「なにすんだよ。」

   凶を当てて機嫌の悪い高耶がムっとする。

   「こーするの。」

   千秋はいきなり高耶のおみくじを半分に破いてしまった。

   「おまえ何やってんだよ!」

   これには高耶も声を上げて怒る。周りの人が何事かとちらっと目線を向けた。

   「まあまあ、で、こっちもこーするっと。」

   今度は自分のおみくじを同じく半分に破いてしまった。

   「ほれ」

   千秋は高耶に半分になったおみくじを返した。

   「どうすんだよ!正月から縁起でもない。ただでさえ凶なのに!!」

   ガミガミと怒る高耶に対し千秋はいつもの余裕顔だ。

   「いいじゃん、俺様の大吉と半分こしたら吉くらいにはなるだろ?」

   「え?」

   よく見ると渡されたおみくじは自分の引いた凶と千秋の引いた大吉の半分だった。

   「おすそわけ」

   千秋はそう言って手早くおみくじを結んだ。

   「お前も早く結べって。早く帰ろうぜ。」

   「あ、ああ」

   高耶も千秋の横におみくじを結んだ。

   「じゃ、帰ろうか。あ、途中でおでん買って帰ろうぜ。暖かいし。」

   千秋が提案をする。

   「おう。あと・・・」

   「何?」

   「ありがとう。おみくじ。」

   高耶が下向き加減に千秋にお礼を言う。

   「ドオイタシマシテ!ほれ。」

   差し出された手を高耶は素直に掴むと二人は家路へと足早に向かっていった。

 

 


   明けましておめでとうございます。(激遅)
   今年ものんびりペースで更新していきますのでよろしくお願い致します。<(_ _)>

   短いお話ですが、ちあきのイイヒトぶりが発揮できていたらいいなと思います。
   今年も甘々でちーたか街道歩きますよ〜。

   感想やリクエストお待ちしております♪♪

   2006年2月4日 貴月ゆあ