超SS No2

「なあ、名前呼んでみて?」

先日買ったばかりのアイボリーのソファーにふんぞり返ってバライティ番組を見ていた千秋に高耶が真顔でたずねる。
千秋は首を思いっきり傾けて「はい?」と聞き返した。

「名前だよ!」

高耶はソファーごと千秋を後ろに倒しそうな勢いだ。
千秋は高耶を自分の隣に座らせるとおでこに手を当てて自分の体温と比較してみる。
いきなりおかしなことを言い出したので熱でもあるのかと思ったのだ。

「熱はないみたいだな」

真面目な顔で千秋が言う。
高耶はおでこにある千秋の手をどかした。

「熱なんかねーよ。それよか名前!」

あまりにしつこいので仕方なく「景虎」と呼んでやった。

「違う」

「は?」

「そっちじゃなくて仰木高耶の方」

いきなり何なのか千秋にはわからない。

「いきなりなんだよ」

背中に入れていたクッションを抱きかかえて千秋は名前を呼ばずに問いかけた。

「いやさ、思ったんだよ。俺って景虎って呼ばれたり高耶って呼ばれたりするだろ。だから確かめてる」

「何を確かめてるんだ?」

「呼ばれごこち」

「はぁ」

千秋はよくわからないが高耶はとにかく名前を呼んで欲しいらしい。
しかたなく千秋は「高耶」と呼んでやった。

すると高耶は「やっぱ違うよな」とそっぽを向いてしまった。

「何が違うんだよ」

せっかく呼んでやったのにかわいくない態度をとられた千秋は高耶にクッションを投げた。
見事命中である。

「何で俺の事景虎って呼ぶんだ?」

高耶が不思議そうな顔をした。

「えー今更だろ。俺から見たらオマエは景虎以外の何者でもないだろが」

「そういうもんかな?」

「そういうもんだよ」

end


また落ちナシですが千秋は高耶のこと高耶って呼ばないなーというところからできました。
ずっと書いてみたかったけど落ちがつかめなくて放置していて今回こんな感じで書いてみました。
千秋のことは高耶さん長秀ってあんまり呼ばないけどね。

2009.4.8 貴月ゆあ