星に願いを

ベッドルームの天井に備え付けられている大きな窓。ベッドへ横になると空が見えるようになっている。
星が瞬く天然のプラネタリウムを見ながら千秋はウトウトしはじめていた。
隣にはべったりとくっついている高耶が幸せそうに千秋の腕枕で寝位置を定めるためにゴロゴロしている。
位置が定まったのか高耶は動きを止めると千秋の手に自分の指をからませた。どうやら最近お気に入りらしい。
そっと千秋が手を握り返してやると高耶も握りかえした。

「なあ。」突然高耶が千秋を呼んだ。

「どうした?」

「俺たちいつまで生き続けるんだと思う?」

手をほどかないまま千秋を見上げる。

「なんで?」

千秋は閉じていた目を開けて高耶に視線を合わせた。

「いつまで生き続けていいのかな?」

心配そうに見つめる高耶。千秋は高耶の不安を消すかのように微笑む。

「そりゃ難しい問題だな。ま、難しいことは明日考えようぜ。今日は寝る寝る。」

高耶が声には出さずうなずくのを確認してから千秋は腕枕をしている方の腕で高耶の頭をそっとなでた。
千秋はよほど眠たかったのか数秒もしないうちに寝息を立てて眠ってしまった。いつもは大抵高耶の方が先に寝てしまうので
高耶は千秋の腕に抱かれながら眠くなるまで夜空と千秋を見つめていることにした。

 

二人がいるのは軽井沢である。
夏休みも始まったばかりなので街はあまり混雑していない。東京から新幹線で約1時間半。
急に軽井沢に行くぞと言われ驚いた高耶だったが来てみるとさすが避暑地だけあって涼しく自然も多いので満足している。

「本当に行くのか?」

あまり眠れず眠い目を擦りながら出かける準備をしている高耶が「早くしろ」とさきほどからせかす千秋に問いかけた。

「行くに決まってるだろ!早くしろって。」

「へいへい。」

これから二人はサイクリングへ行くのだ。避暑地とはいえ昼間はそこそこ暑いが天気は最高にサイクリング日和である。
軽井沢へと言えばサイクリングだ!と千秋が来る前からやけに張り切っていたので仕方なく付き合う事にした。
高耶は仕上げの最後に財布をポケットへと入れると立ち上がる。

「準備できたよ。」

「おし、じゃー朝飯食って出かけますかな。」

二人はコテージの本館で軽く朝食を済ませるとシャトルバスへ乗って駅へと向かった。
駅前にはアウトレット目当ての観光客やゴルフへ行く人やら色々な人が集まっている。
二人はレンタルサイクルで自転車をかりるとさっそく軽井沢観光へと出かけた。

 

ほどよく緑の葉を付けた木々の並ぶ並木道や山々。
景色を楽しみつつほどよく走ったところで高耶が先を走る千秋に「待った」と声をかけた。

「なんだ?」

千秋が振り返る。

「結婚式。ほら。」

高耶が指差した方向をよく見るとそこは小さな教会で結婚式が行われていた。
ちょうど教会から出て行くところで多くの人でにぎわっていた。新郎新婦の幸せそうな顔が見える。二人は止まって結婚式の様子を見ていた。

「そういや美弥が昔さ、美弥大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんに

「美弥ちゃんの結婚式来月だったっけ?」

「おう。あいつもついに嫁に行っちゃうんだな〜。」

「俺この間会った時、お兄ちゃんをよろしくね。って言われたぜ。」

「たはは。」

来月美弥は就職先で知り合った人と結婚するのだ。先日仰木家に挨拶にきたときに会ったが
高耶より1個年下なのにずいぶんとしっかりしていた。家庭環境のせいか高耶はなんだか娘を嫁に出す心境になっている。

「お兄ちゃんさみしい?」

「まあな。でも美弥には幸せになってほしい。」

「おまえが認めた奴なら大丈夫じゃね?行こうぜ。」

今度は高耶が千秋の先を走る。結婚式を横目に二人は更にサイクリングを楽しむべく走り続けた。
細い道を入ったところにある小さなイタリアンのお店で昼食済ませ、二人はレストランの店主に教えてもらったいくつかのポイントを観光した。

 

づつく


4年ぶりの高耶さんBirthdayものです。
今年はサイト10周年なんで絶対更新するぞーと決めていたのです。更新できてよかった〜。
このお話は数年前にほぼ書き上げていてUPするの忘れてた・・・・ものであります。
久しぶりに甘々ちーたかです♪

2009/7/20 貴月ゆあ