Promise

 

「ただいま」

高耶がムスッとして帰ってきた。
今は事件の事もあって仮住まいの駅に近いマンションに千秋と住んでいる。
直江は実家が忙しいので宇都宮に帰っているが事件の調査はそっちで続けており
その結果が定期的に送られてきていた。

昨日『仕事が一段落つきそうだから会って食事でもしませんか?』と直江から誘いの電話があった。
久しぶりに直江と会える、と高耶は楽しみに待っていたのだが昼間バイト先に『どうしても抜けられない仕事が
入ってしまったので今日は申し訳ありませんが行けそうにありません』との連絡が入った。
楽しみにしていた分だけ約束を破られたショックは大きい。
だが、あの直江が高耶との約束を断ってまでしなくてはならい事だからよほどの事だとは分かっていても
イライラが募った。リビングに千秋の姿はない。
部屋に居るのかもしれないが自分には関係ないと部屋に行こうとした時向かいの千秋の部屋から声が聞こえた。

(誰かいるのか?)

高耶が千秋の部屋をノックする。

「千秋?いるのか」

返事はない。が、しかし確かに声が聞こえた。

「千秋?あけるぞ」

ガチャと部屋を開けると、千秋の部屋に見知らぬ女性がいた。
思わす3人で見詰め合う。5秒固まって、やっと事情を飲み込んだ高耶は何も言わずバタン!と音を立てて
扉を閉めすと自室に入った。

(あちゃ〜。あいつ今日は直江とデートじゃなかったのかぁ?)

一番見られたくない相手に見られたな。と千秋は思う。

「だぁれ?あの子」

見知らぬ女性は「?」とばかしに首をかしげている。

「わりぃけど今日はここまで。今度埋めるわ。悪ぃな」

「も〜ぉ」

今日はずっと一緒に居られると思った女性はふくれながらも千秋に従ったて渋々玄関に向かう。

「今度絶対埋め合わせしてね」といって女性はマンションを出て行った。

一方、高耶はベッドにうつぶせになっていた。
帰ってきてあんな所を目撃してしまうのは間が悪い。

(ついてね〜。ってか。なんで女連れこんでんだよ!!)

直江に会えなかったのと千秋に対する怒りが込み上げてきて高耶のイライラ度は上がっていた。
しばらくすると部屋の外が騒がしくなった。きっと千秋達が部屋から出ていくのだろう。
あんな場面を見せられたら出て行くしかない。まあ千秋の事だからきっとのこのこと帰ってくるだろうけど。

(はぁ〜。何なんだよ!!)

何故かフツフツと怒りが湧いて来る、自分は何もしていないのになんだかイライラする。
おもわず机の上にあった野球応援用のメガホンを扉に投げつけようと投げた瞬間に扉が開き、
千秋の顔にヒットしてしまった。

「いってー」

千秋はメガホンを拾い上げると机の上に戻す。

「な、おまえ出ていかなかったのか?」

メガホンを当てた事なんてなかったかのような発言にちょっとムカっときたが、さっきの自分の失態?
を見られているのでそうそう逆らえない。

「ああ。それよか、なんで帰ってきたんだよ。おまえ直江とデートじゃなかったのか?」

直江の単語に高耶が反応する。

「バイト先に電話があった。急な仕事が入ってダメなんだって。」

「へーっ。お前との約束蹴ってまで仕事が忙しいとなると相当だな」

千秋は驚いてみせる。しかし次の瞬間高耶がギッっと睨んで千秋に尋ねた。

「で……さっきの誰?」

「あ?さっきの女?結構綺麗だろ。ま、ちょっとした知り合い。」

曖昧な返事。高耶はなんだか納得いかない。

「ふ〜ん。俺は帰ってこなかった方がいいって?んじゃ出てってやるよ!!」

思いきり怒鳴って今度は枕を千秋に投げつけると部屋を出て行こうとする。

「待てよ」

それを千秋が止める。千秋は高耶の腕をつかんだ。

「離せ。」

「ヤダ」

「離せってっ!!」

高耶は腕を振り解こうとするが千秋の力が予想以上に強くて離せない。

「はなせよ…っ」

最後は涙声になってしまう。そんな高耶を急に千秋が引っ張って自分の方に引き寄せた。

「ったく、強がるなよなぁ。そんなに直江に会いたかったんだったら無理してでも会いたいって言えよ」

いよいよ泣き出してしまった高耶の背中をポンポンと軽く叩きながら千秋が高耶を抱きしめる。

「っ…てしご…と邪魔……」

高耶は引きずった声で一生懸命答える。『仕事の邪魔になる』と言いたいらしい。千秋は軽くため息をつき、

「奴は仕事捨てでもお前に会いに来てくれっぞ。」

高耶が泣いている。千秋はぎゅっと高耶を抱きしめる。そのままどれくらい時間が経過しただろうか。
だんだん高耶も落ちついてきた。千秋は高耶の涙で濡れた頬拭って、

「泣くなって、よし。今日は直江の変わりに俺が全力で遊んでやる」

と言ってにやっと笑いかけた。それにられてか高耶は

「遊んでやるって俺は子供じゃないぞ」

ちょっと拗ねたような笑顔を作った。そんな顔をできるようになったってことは落ちつきを取り戻した証拠である。

「十分子供だよ」

と、高耶のおでこをパトンと指で弾いてもう一度高耶を抱きしめた。

end


こちらも碓井さんのHPへ載せて頂いていた作品です。そしてまたちーたか・・・・・・。(苦笑)

確か「千秋になぐさめられる高耶」ってが見たくて書いた話だったと思います。

私の中の千秋ってこ〜いっつも高耶の世話焼きみたいな感じがするんですよね〜。(ごめんよ千秋/苦笑)

これはまさにそれが出たお話でした。碓井さんのHPに載せて頂いていたのを加筆修正してあります。

 

2000917 沙良