■疲れた夜だけど■
「ただいま。」
そっと玄関を開ける。時刻は夜中の2時。仕事で大阪まで行って来てやっと帰ってきたところだ。
さすがに大阪から東京までの距離を運転するのは疲れる。さっさと寝ようと自室に入ろうとした時、
居間の方が明るいのに気が付いた。
(まだ起きてるのか?)
覗いて見ると、ソファーで高耶がすやすやと寝ていた。テレビは付けっぱなしで電気だけ消してあった。
きっとテレビを見ていてそのまま寝てしまったのだろう。ここで寝ていては風邪を引く。
「おい、景虎、起きろ。」
声をかけてみる。しかし起きる気配はない。もう一度呼びかけたがやはり無反応である。
(なんでこんなに熟睡してるんだ?またっく。)
しかたなく千秋は高耶を担ぐと高耶を部屋に運ぶ。このマンションは仮の住まいである。
いつも住んでいるわけではなく、必要に応じで使っているが滞在時間が長くなる事もあるために、
ある程度の物は自室に持ち込まれていた。
高耶の部屋に入るのはこれで2回目だろうか。あまり他人自分の部屋の中に入れたがらない。
無断で入った日には罵声が飛ぶ。高耶の部屋は本当に必要最低限の家具しか置いていない。
机にコンポにベッドにたんす。それしか置いていなかった。
千秋は高耶をベッドに寝かせて布団をかけてやった。自室に戻ろうとすると、
「ちあき?」
部屋を出ようとしたところで高耶の声に呼びとめられる。何日かぶりに聞いた高耶の声に少し嬉しさを感じた。
「おう。起こしちまったか?帰ってきたよ。」
「お帰り。メシは?」
眠たい目をこすりながら話しかける。
「車で食ってきた。」
「風呂は?」
「疲れたから今夜は入らない。」
「そう・・・か。」
何かいいたげな高耶だが、中々言わない。
「何か言いたい事でもあんのか?」
高耶は千秋を見つめているが、口を開こうとしない。それを見かねた千秋は高耶の傍に戻った。
「どうした?」
高耶の顔をのぞき込むと、高耶はそっぽを向いてしまう。
「なんだよ。はっきり言えって。言わないなら寝るぞ。」
というと、また高耶が千秋を見上げた。実は千秋は高耶が何を待っているのか分かっている。
「ったくもー。おまえは甘えん坊だねぇ。」
そう言うと千秋は高耶にそっと口付ける。はじめは軽く、そして次は深く。
高耶の首に自分の腕を回して更に深く口付ける。
「して欲しいんだろ?」
唇を離して千秋が高耶に尋ねる。高耶は
「ば、ばか。そんなわけねーだろ。」
真っ赤になって否定しているが手は千秋の服を握っていて離そうとしない。
「じゃこれは何?」
そう言って高耶の握っている服を指差すと、高耶はパッと手を離した。
(しばらく会わないとこんなにかわいくなるものかね。)
「あーもー、今日は疲れてるからしてやれない。だけど一緒に寝てやるよ。」
そう言って高耶のベッドにもぐり込み高耶の腕をつかむと自分の方に引き寄せて抱きしめる。
「これでいいか?」
自分の胸に顔をうずめている高耶に尋ねると、コクッとうなずく。
「よし、んじゃおやすみ。」
————数秒もたたないうちに高耶の寝息が聞こえてきた。
(ったく、疲れてるってのに甘えん坊だね。こいつは。)
指でおでこをパチンとはじく。しかし高耶は起きそうにも無い。
(俺も寝るかな。)
千秋はもう一度高耶にキスをして眠りについた。
END
久しぶりのちーたか。これは甘々だけを目的(オイ!)で書いたのであんまりストーリー性がないです。(爆)
千秋と高耶が一緒に寝てるってあんまり想像できないですよね?
それでちょっと書いてみたいなと思ったのでこんな感じにしあがりました。
あ、このマンションと「力の差〜」に出てきたマンションは別ものです。(笑)
19990530 沙良