■夢のまたユメ■
「高耶、今日英語当たるよ。予習してきた?」
昼休み終了5分前のことである。窓際で陽にあたってうとうとしている高耶に譲が声をかけた。
「あ?んなもんしてねーに決まってんだろ。」
高耶は眠そうに目を擦りながら大きく伸びをする。
「やっぱり。」
譲は聞いた自分がバカだった・・・と肩を落とした。
「やっぱりってなんだよ。」
「高耶はこの間の英語サボったから知らないだろうけど英語担当の先生ケガで臨時の先生が来てるじゃん?
はじめからそれじゃヤバくない?」
譲が心配そうに言うが高耶はあまり真面目に受け取っていない。
「ああ、女子がカッコイイとか言ってたな。」
「知らないよ?」
「んなもん大丈夫だって。」
ポンと心配そうな譲の肩に手を置くと高耶は真反対の廊下側の自分の席へと戻っていった。
始業のチャイムが鳴るのと同時に教室に長身の男性が入ってくる。
日直が起立、礼、着席とお決まりの合図をし座ったところで高耶は教卓に立った男に釘付けになった。
なぜなら教卓に立った男が直江だったからだ。そんな高耶に横の席の森野沙織が子声で話かける。
「仰木君この間英語サボってたもんね。臨時の先生で橘先生。あたしの成田君にはかなわないけど大人って感じよね。」
しかし高耶に沙織の話は届いていなく「なんで直江がこんなところに?」が頭の中をぐるぐるとかけまわっていたが高耶だけ置いていかれたように授業は進む。
「それでは授業を始めます。まずは出席ですね。」
教卓に立った男が慣れた様子で出席を取りはじめた。「仰木高耶さん」呼ばれたので軽く手だけあげる。
「なんでこんなところに居るんだ?」と顔に出してみたが気が付かないのか普通に話しかけてきた。
「前回はお休みでしたね。今日は問題に答えてもらいますので授業しっかり聞いて下さいね。」
かるく微笑みだけかえして次の生徒の名前を何もなかったかのように呼び続ける。高耶にはなにがなんだか状態だ。
全員の名を呼び終えると直江は普通に授業を進めはじめる。黒板へ書いたり教科書を読んだりいかにも「先生」だった。
高耶はそんな直江の授業など全く聞いておらず「どういうことだ?」と思念波で呼びかけたが全く返事が返ってこない。
授業の中盤へ差し掛かったところで高耶が呼ばれた。
「それでは仰木高耶さん。教科書20ページ、問1の問題を読んで答えて下さい。」
直江が教科書を持ちながら廊下側一番後ろの高耶の席まで歩いてやってきた。
「予習してないのでわかりません。」
高耶が立ち上がる。
「それは困りましたね。今の授業を聞いていれば分かるはずなのですが・・・・・
きちんと聞いていない生徒にはおしおきが必要ですね。」
いきなり直江が教科書をポンと投げ、高耶にいきなりキスをする。
突然の出来事に一瞬なすがままだったが我に返った高耶は直江を突き放した。
「何しやがる!」
「高耶さん?」
机で寝ている高耶に毛布をかけてやろうとした直江の手が高耶の叫び声で止まった。
高耶の視界が学校から見慣れた直江の家のリビングへと移るまでには数秒、勢いよく立ち上がったままぼうっとしている。
微動だにもしない高耶に直江が声をかけた。
「どうしました?」
振り向くと直江が毛布を持って驚いた顔をしていた。
「へ?」
高耶がポカンと口をあける。
「夢でも見ていましたか?」
「夢・・・・・・・・?」
「寝ていたので毛布をかけようとしたら・・・寝ている高耶さんに怒られてしまいました。」
直江が笑いながら広げた毛布をたたむ。
「夢かよ・・・ったく酷い夢だ。」
高耶は夢だとわかると安心してか椅子に座りなおす。
「どんな夢だったんですか?」
「うるせー。」
授業中直江にキスされた夢だなんて口が裂けても言えない。
「早く宿題終らせてくださいね。今度はきちんと授業を聞くように。」
直江はそう言うと寝室に毛布を置きにいってしまった。
その言葉に寝室に消えた直江を振り返りどっちが夢だかわからなくなてしまった高耶である。
「おいおい、夢だろ?」
オワリ
2005年1作目は直高になりました。落ちナシな感じのギャグっぽいお話です。(どんなだよ)
話の柱はかなり昔から考えていたのですがようやく形になりました。
こういう軽いお話を今年はもう少し書けるといいなと思います。次はちーたかを!
2005年3月12日 高月ゆあ