深夜の悩み相談室

    

      「あっちぃー」

      連日の熱帯夜。あまりの暑さに耐え切れずに目が覚める。
      短パンにランニング姿で寝ているのに異常に暑い。
      薄暗い中で時計を見る。枕もとに置いてあるデジタルの目覚し時計は午前3:12分と表示していた。
      今日は飲んで帰ってきたのが1時頃でそのまま寝てしまったので2時間しか過ぎてない事になる。
      千秋はいつも寝るときに置いてある枕もとの棚からクーラーのリモコンを取り出すとスイッチを押した。
      ところがピッと音はするがクーラー自体が反応しない。

      (ん?)

      もう一度押してみるが全く動かない。電池はこの間交換したのでリモコンの電池切れではなさそうだ。

      (ってことはつまり…壊れたって事か?)

      「そんなんアリかよ〜」

      千秋は力なく床に座り込む。連日連夜の熱帯夜に冷房無しじゃとても過ごせない。
      最近拾ってきた真っ白い子猫も暑いのかフローリングにベタっと張り付いていた。

      「これじゃ寝れねーよな…」

      千秋はジーンズに履き替え椅子に掛けてあった白地に青の細かい水玉模様のシャツを羽織ると
      子猫をひょいと抱き上げて車のキーを握り家を出た。外に出ても熱い空気が身体にまとう。

      (どーしてこう日本はこんなに暑くなっちゃったのかねぇ。)

      駐車場までエレベータで降りる。
      地下駐車場は熱がこもるのか地上よりも暑い。車に乗り込みエンジンをかける。
      車内も熱気で熱かった。千秋は子猫をとりあえず助手席に乗っけると車の冷房を付ける。
      さわやかで心地いい風邪が車内を冷やしはじめた。子猫は風を浴びながら気持ち良さそうに目を閉じる。
      そんな子猫の頭を撫でて千秋は夜の街を走り出した。   

 

      かれこれ30分くらい走ってあまり人通りの多くない住宅街へと入る。
      角にある7階建てマンションの一室に今は高耶が住んでいる。元々は直江親類の持ち物らしい。
      近くに車を止めると千秋は高耶のマンションに向かって歩いた。高耶が住んでいるのは最上階の7階だ。
      エレベータで7階まで上がると701号室のインターフォンを押す。

      (この時間じゃ寝てるかな?てか…直江が居たらまずいよなー。)

      何も考えなしで来たてしまった事を少し後悔する。

      (ま、お取り込み中だったら出てこないか。)

      インターフォンは一度しか押してないのにすぐに「誰?」と答えが返ってきた。

      「俺様。ちょーっとうちの冷房が壊れちゃってさ、悪いんだけど今日泊めてくんない?
      こいつもつれてきてるんだけど…」

      インターフォンごしのカメラに向かって白い子猫を見せた。

      「ちょっと待ってろ」

      思いっきり不機嫌な声で返事が返ってきた。しばらくしてガチャリと音がして扉が開く。
      高耶はカーキ色のパンツに白いTシャツを着て風呂上りな格好だった。

      「ん?お前酒飲んでるのか?酒臭いぞ?」

      「るせー飲んじゃいけねえのかよ。」

      半分ろれつの回ってない話し方。多分相当飲んでるのだろう。

      「入るのか?入らないのか?」

      ドアを片手で押さえながら高耶が不機嫌な声で尋ねる。

      「入らせていただきます。」

      千秋は先に子猫を高耶に持たせて中へ入った。
      入ってすぐのリビングには空になったビールの空き缶が4、5本散乱している。

      「珍しいな。お前がこんなに飲むの。」

      千秋は床に転がっている空き缶を拾ってテーブルの上にのせた。
      自分で作ったであろうつまみの食べ残しも乗っかっている。

      「どうした?何かあったのか?」

      千秋は高耶の座ってるソファーの隣に腰を下ろした。高耶は完全に目の覚めてしまった子猫と遊んでいる。
      その片手にはまたビール。

      「おまえも飲みたきゃ冷蔵庫に入ってるぜ。」

      高耶はそう言ってまたビールを口へと運んだ。ゴクリと飲み込んでからしかめっ面をする。
      多分あまり美味しいと感じてないのだろう。

      千秋はそんな高耶を横目に冷蔵庫からビールを1本取り出してプルトップを勢いよく開けた。
      プシュっと小さく音がする。そのまま千秋は琥珀色の冷たい飲み物を喉に流す。
      暑い所からやってきただけあってギンギンに冷えてるビールは美味しい。

      「なぁ、泊めてもらうお礼に悩み相談してやろっか?」

      千秋がビールを持って高耶の近くへと移動する。
      テレビからは深夜特有のテレフォンショッピングが流れていた。

      「別に悩みなんてねーよ。」

      高耶は更にビールを口へと運ぶ。とその手を千秋に止められた。

      「美味しくないお酒は身体に毒よ?」

      と言ってウインクしてみせる。
      高耶は離せと千秋の手を振り解こうとした時に持っていたビールを床に落としてしまった。
      暖かくなってしまったビールが床へと流れ出す。高耶はそんなビールを拭こうともせず見つめている。
      千秋は「はぁ」とため息をつくと一度高耶から離れて洗面所からタオルを2、3枚持ってきて床を拭いた。

      「そんなに言いたくないんだったら言いか。飲みたいなら飲め。」

      そう言って千秋は自分の飲みかけのビールを高耶に渡すと自分は新しいビールを冷蔵庫から出してきた。
      二人並んで無言のままビールを飲む。テレビからは相変わらず誰が買うのであろうという疑問の残る海外の
      テレフォンショッピングが流れていた。かれこれそんな時間が30分くらいだろうか続いた。
      高耶は缶が空いたのかゴミ箱に向かって空き缶を投げたが外れてカランと音をたてて床に缶が転げ落ちる。
      高耶はそれを拾おうと立ち上がったとたんに飲みすぎなのか床に崩れ落ちた。

      「おいおい。」

      千秋が立ち上がって高耶を抱え起こす。

      「おーい景虎。そろそろ吐いたらどぉ?楽になれるかもよ?」

      高耶の脇に腕をまわして支えた状態で高耶の顔を覗き込む。
      高耶はふてくされた顔をして千秋から目をそむける。自分では立っていられない為何だか情けない。
      するといきなり千秋が高耶を持ち上げるとお姫様だっこをする。
      さすがに高耶も驚いて「わっ!」と声を上げた。

      「言いたくないならいいよ。悩み相談をするに一番手っ取り早い方法思いついたからさ♪」

      千秋はもう一度ウインクしてみせるとさきほどまで座っていたソファーにゆっくりと高耶を座らせ
      自分は床に座って高耶の目を手のひらでふさぐと優しくキスをした。不思議と高耶は抵抗しない。
      やがて千秋が舌を絡ませると高耶はもっととせがむように自分から千秋に腕を回してくる。
      千秋はそれに答えてやってからそっと唇を離すと同時に高耶の目をふさいでいた手のひらも外す。
      高耶はちょっと不安そうな瞳で千秋を見ている。

      「悩み相談するのに手っ取り早い方法、要するに悩めない状況に持ち込めばいいって事だぁね。
      ま、その場しのぎにしかならないかもだけどそれでも楽になる事ってのもあるもんよ。」

      と言ってニコっと笑った。

      「酒の勢いってやつにしとけばいいんじゃん?」

      千秋は高耶をソファーに優しく寝かすとまたそっとキスをした。

      千秋の悩み相談はこれからが本番である。

END

 


      4月以降初UP。しかも製作時間3時間弱。やればできるんじゃん!(爆死)
      しかも今回は千秋中心に書けたので私的には満足♪

      今年うちも冷房壊れて「あ〜あの時暑かったよなぁ〜」とか思ってたらできた話が今回のこのちーたかです。 
      しかし自分で書いてて大爆笑。題名がちょっとえっちっぽい割に中身は普通っていう(私的には)
      ギャップがおかしいです。

      モチロン文中で高耶さんが不機嫌なのは直江が帰ってこないからです。
      だから深夜まで起きていたのでした。(笑)
      千秋の悩み相談はどうなったのか、書く気が出て時間があればそのうち・・・・と思ってますが
      昔のWAVEもそう言ってメチャメチャ後になってから書いたから期待
      (そんなん始めからしてないって?/苦笑)しないで下さい。(笑)

      それと今回UPの方法をちょっと変えてみました。
      いつもは普通に1行空きで表示するんだけど今回は文章がまとまってるトコは改行しなかったんですけど
      これってどっちが読みやすいのでしょう?
      私はやっぱりいつも通改行してある方が読みやすいかなって思うんですけど・・・・・
      よかったらご意見聞かせて下さい。

 

2001.8.19  貴月ゆあ