The air

 

「な、最後にあれ乗ったら帰ろう。」

そういって高耶が指差した先にあったのは観覧車だった。

「けっ、おまえねーなんで野郎同士で観覧車になんか乗らなきゃならんわけ?やなこった。」

「んな事言うなって大丈夫だよ。もう時間も遅いしあんまり人いないから。」

そういうと高耶は強引に千秋の腕を引っ張って観覧車乗り場へと連れて行く。
千秋も逃れられないのが分かったのか抵抗せずに高耶にされるがままだった。

たまには遊びに行きたい。との高耶の希望で来た遊園地。
朝から来てるというのに高耶はずっとテンションの高いままである。
そんな高耶に一日付き合っている千秋はそろそろ疲れが出始めていた。

(それに野郎二人で遊園地ってメッチャ危ないってこいつ分かってるのかね)

自分の腕をしっかり掴んで歩いていく高耶を見て千秋は一人ごちる。

(ま、そういうところがコイツって感じもするがな)

高耶に無理やり連れてこられた観覧車乗り場だったが人はほとんど居ない。
アルバイト風の女子店員が二人のチケットを確認すると乗り場まで案内してくれた。

「いってらっしゃーい。」

と言って観覧車の扉が閉じる。ふぅ、と千秋は観覧車に腰を下ろした。

「疲れた?」

高耶が向かいの席に座って千秋の顔を覗きこんだ。

「さすがに疲れた。おまえは疲れないのか?」

千秋は覗きこんできた高耶の頬を手のひらでパチっとはさむ。高耶はそれから逃れると

「普段こんなに遊ばないからな。しかも千秋と遊ぶって事したのはじめてじゃん?
楽しいけど…千秋は楽しくなかった?」

急に不安になったような表情に高耶がなったもんで千秋はなんだか虐めている気分になってしまう。

「そんな事ないよ。遊園地なんてところに来たのは何十年振りだなって思ってぇね。」

千秋は観覧車から見える景色に目をおきつつ、胸元からタバコを出して火を付け様とした。

「ちょいまった、こんな狭いところでタバコ吸うなって。ここ禁煙って書いてあるだろ。
それになーそんなに吸ってたら体に悪いぞ。少しは体の心配もしろって!」

高耶は千秋の手からタバコを取り上げる。千秋は

「返せよ。」

と高耶に向かって手を出したが、高耶は返す気がないらしい

「降りるまで返してやんない。」

というと自分の上着のポケットにタバコをしまった。
するといきなり千秋が立ち上がって高耶側の席に移動しようとする。
バランスが取れなくなってぐらり、と観覧車が大きく揺れた。

「うわっ、動くなって」

千秋はそんなのおかまいなしにちゃっかり高耶の隣に座ると

「はい、返してね」

と高耶のポケットに手を入れた。そのままがざごそと手を動かす。

「ちょっ、何してんだよ。くすぐったいって!」

高耶がポケットから千秋の手をと取り出す。

「だったら素直に返して?」

千秋が両手を差し出したが高耶は「嫌」と言ってタバコを渡さない。千秋は小さくため息をつく。

「タバコがないと口淋しいんだよね…」

とつぶやいたかと思うといきなりキスされた。

「んっ…!」

突然の出来事に高耶はよけることも逃げる事もできない。

一応抵抗はしてみるが千秋は高耶の両肩を押さえ込んで離さない。そのまま深く口付けされる。

「何すんだ!!」

やっとのことで千秋から開放されると高耶は千秋に向かって怒鳴りつけた。

「いいじゃん。もうすぐ俺誕生日だしぃ。プレゼント。安いもんだろ?」

と言って千秋は更に唇を重ねてきた。
今度は触れるか触れないかの優しいキス。そのまま高耶の首に腕をまわすと、

「大丈夫。人から見える位置に来たら離してやるから。」

とウインクして性懲りも無く唇を重ねた。

全国でも1、2位を争うここの観覧車。地上に着くのはまだまだ先である。(笑)

 

END


ちょっとギャグ?っぽくなってしまいましたが…どうでしょう?

千秋の誕生日〜と思って書いてたのですが千秋の誕生日だから特別に…ってのが浮かんでこなくて
こんな感じになりました。

他にもネタはあったんだけど長くなりそうなのでまたの機会にでも書けたらいいなぁと思います。
私も先日観覧車に乗ってきたのですが…強風だったのでメッチャ怖かった。もう乗るまい!(笑) 

2000.3.26   沙良