■Your Name■
冷たい風が吹く。夜の繁華街はカップルや酔っ払いの大人達、時間を持て余した若者が多く徘徊していた。
コンビにに買い出しへ行った帰り道、後ろから「千秋」と呼ばれたような気がして後ろを振り返る。
「ちょっとぉ、遅かったじゃないっ。」
呼ばれたのは自分ではない別のちあきだった。恋人と待ち合わせでもしていたのだろうか。
ちあきと呼ばれた女性は駆け寄ってきた男性にふくれっつらをして怒っていた。
「ごめん。仕事終らなくて。飯おごるから。そんなに怒らないでくれよ。」
「まったくしょうがないなぁ。」
女性が「本当は怒ってないよ。」とキスをして二人の世界を作りながら腕を組んで歩き出した。
そんな二人のやり取りを見ていたが、二人が背を向けたので自分も歩き出した。
(そうだよな。俺じゃないんだ。)
一瞬間違えてしまった自分を叱咤して歩き始める。
千秋修平の体を失ってから数日間。まだ新しい憑坐に慣れていなかった。
別に体の具合が悪いとかではないけれど、なんとなく気分的にそんな感じがした。
自分は何にも執着心がないと思っていたがそれは表向きであって、千秋修平の体には密かに愛着がった。
それは・・・・・・・自分の事を千秋って呼ぶあの声が心地よかったから。
時々不器用な笑顔で自分の名前を呼んでくれる時だけはあいつの心の中に自分が居れた気がしたから。
いつもは本当の自分なんて見てくれないから。
あいつは本当の俺を知らない。俺の心の奥底に眠る感情を知らない。
でも、それは言ってはいけない事だから。
言ったら今の関係が壊れてしまうから、それだけは自分の心の中だけにしまっておくんだ。
あいつは今どこで何をしてるんだか。ま、無茶しなきゃいいけどな。
「でさーぁ、真美と雄輝がぁ。」
向こう側の通りから高校生の声が聞こえてきた。
夜も遅いというのにお構いなしに大きい声で話している。
何気なく視線を向けた。
そういえば、あいつと初めて会ったのは高校だったっけ。懐かしい記憶がふと甦る。
俺が生徒として潜入し、あいつ一人だけ「千秋なんて知らねぇ」って言い張ってたよな。
始めてあった時から・・・・。
今度会った時、あいつは俺の事なんて呼ぶんだろう。
答えは・・・・・・・・・
END
何も千秋の誕生日にUPしなくても・・・。と思ったのですが、あえてUPしちゃいました。(苦笑)
久しぶり?に千秋だけの短いお話です。これを書こうと思ったのは火輪の王国を読みなおししてた時だと思います。
千秋が千秋修平の身体を失った事。かなりの衝撃でしたからね…・。
あの事件?に関しては千秋だって好きで失ったわけじゃないと思うので。
色々な考えがあると思うのですが、何にも執着のない千秋だけど、千秋修平の体には愛着を持っていて欲しい
という願望?がこんな形になりました。千秋にはもっと自分を大切にしてほしいです。
(でも、この文章納得いってないので近いうちに書きなおすと思います。/爆)
2000.3.26 沙良