■Sweet Time■

 

     高層ビルから見える夜景はとても綺麗だ。下は高速道路なのか車がスピードを上げて走っている。
     少しアルコールの入った高耶はその景色を見ているのかいないのか虚ろな目をしていた。

     「高耶さん。大丈夫ですか??」

     直江が心配そうに顔を覗きこむ。高耶は直江の声にクルっと顔を向けるとニコッと笑った。
     自分に向かって笑いかける高耶を見て直江は不思議そうに少し首をかしげながら微笑した。

     「なんだ、直江。俺が笑ったら変なのかよ」

     どうやら微笑が高耶の機嫌をそこねてしまったらしい。

     「いえ、そんな事ありません。嬉しいですよ」

     今度は笑ってやると、高耶は気を良くしたのかうんうん頷いた。

     (これは完全に酔ってますね)

     時間をかけて飲んでいた為にそんなに飲んでいないと思っていたが、
     体にはアルコールが回りはじめていた。ふと高耶が直江に言う。

     「なあ、ケーキ食いたい。あのまま、切らないで持ってきて」

     ケーキというのは高耶のバースデイケーキである。
     高耶のために直江が有名な店からわざわざ買ってきたものだった。

     「ちょっと待っててください」

     直江は台所に行くと、備え付けの冷蔵庫の中から綺麗に包装されたケーキを持って戻ってきた。
     白い包装紙がきらきらと輝いて、七色に見える。
     高耶は「開けて」といって直江にケーキの包みを開けさせた。
     包みの中からはチョコレートケーキだろうか、クリームのたっぷりぬったおいしそうなケーキが出て来た。
     そのケーキの上には「お誕生日おめでとう」 と書かれたお菓子でできたプレートがのっかっている。

     「開きましたよ、高耶さん。本当にそのまま食べるんですか?」

     一応台所に行った時にお皿とフォークを持ってきたので一緒に机の上に置いた。

     「うん。そのまま食う。丸いケーキにかぶりついてみたいって思ったことなかった?おまえ」

     高耶は時々こうやって本当に子供っぽい事を言う。
     そんな高耶を見れるのは自分だけだとおもうと悪い気はしない。それよりもむしろ嬉しい。
     普段は戦いの中に身を置き必要のない敵を作り何でも背負い込んでしまう。
     そんな高耶の笑っている顔を見れるのは高耶がリラックスしている証拠でもあるからだ。

     高耶はいただきます。とは言ったものの、どうやって食べようか悩み始めた。

     「なあ、これこのままってどうやって食ったらいいんだろうな」

     試行錯誤して高耶はケーキにかぶりつく。一口食べて

     「お、うまい!!」

     高耶は口の周りにクリームを付けたまままた一口、二口とケーキをぱくぱく食べる。
     口に合うのか高耶は一生懸命ケーキを食べた。
     直江はそんな高耶をまじまじと見ていたらなんだかおかしくなってきた。
     こらえきれずに笑うと高耶は驚いた顔をする。

     「どうした?おまえが笑うなんて珍しいな」

     「高耶さん。顔にクリーム付いてますよ」

     直江は手を伸ばしてクリームを拭ってやった。くすぐったそうな顔をする。
     そのしぐさがたまらなくかわいい。

     「あ、おまえも食う?」

     高耶がケーキを差し出す。
     ケーキ皿の上には半分上崩れたケーキが乗っている。 直江はケーキを見てから

     「私はどちらかというとケーキより高耶さんの方がいいんですけどね」

     じっと高耶の瞳を見つめて言う。
     一瞬その言葉の意味がつかめなかったが…

     「な・・おまえっ」

     ケーキを口に入れつつうろたえる。直江はくすりと笑って

     「ケーキに食べ飽きたら今度は私があなたを食べてあげます。今夜はとびきり優しく・・・ね」

     直江の誇らしげな目がなんだか気に入らなくて

     「なんてこと言ってんだよ!!」

     そう叫んではみたものの、最終的に直江に落ちると頭のなかで直感的に思っている。

     「HAPPY BIRTHRAY。高耶さん」

     直江の甘い声が自分の中のスイッチを押す。誕生日だからいいか、と高耶は直江に落ちる事にした。

 

     今夜、あなたの生まれた日に至福の喜びを…………

 

END


   誕生日小説第1段!!

   夜中にふとケーキ!と思ってたら出来たお話。お話はどこから出来るものだか分からない・・・・・・
   でも、ケーキネタ(?)って結構あるのでは??とちょっと不安だったりもします。(^^ゞ
   誕生日って言ったらプレゼントとケーキは付き物ですからね。プレゼント編も書きたかったなぁ。

   ちょっと酔ってる高耶はこの後どうなるのか。この後の話も書きたいかも……。
   
直江に「私があなたを食べてあげます」なんて言われたらどおしよう。(笑) 
   
(そんな事言われないから大丈夫/爆)

                                                        19990707 沙良