さぐりあい 2

ヴィクトールがドアノブを思いきり引くと、、、燃え盛る赤い炎が勢いよく彼に襲いかかってきた! 「きゃあっ!ヴィクトール様、危ないっっ!!」 ティムカは煙を吸いこまないように口元をシーツで覆いながらヴィクトールの側へ近寄る。 ヴィクトールはすぐさまシーツでティムカをくるんで、ドアと反対側に位置する窓へティムカ を抱きかかえ、窓を開け放ちティムカを外へ放り投げた。 ティムカは声を上げる暇もなく植え込みの中へと小枝を体で折りながら落ちて行く。 落ちる瞬間ぎゅっとつぶった瞳をゆっくりと開けると、ヴィクトールが窓の桟に足をかけ 今にも、外へと飛び降りようとしていた。 その時!! ヴィクトールの腰の両側を白い小さな手が掴んで、そのまま彼を炎の海と化した部屋の中 へと引きこみ、、、そしてヴィクトールの体は後へと、、、倒れて行った、、、。 「いやああああっ!!ヴィクトールーーーっ!」 ティムカは落ちた瞬間両足を捻ったらしく、体を起すことができなかった。 聖地にサイレンのけたたましい音が鋭く鳴り響き渡る、、、。 「おいっ!ティムカ?ティムカじゃないかっ!?大丈夫なのかっ?!」 オスカーは植え込みの中、泣き叫ぶティムカを見つけ抱き上げた。 「ヴィ、ヴィクトール様が、、、まだ中に、、、。」 オスカーの腕の中でティムカは意識を失った。 その大男はいつもティムカの護衛をしていた。ティムカが城下町へと出歩く時も 城内を散歩する時も、王子の側を片時も離れなかった。 幼いティムカは、その男をずっと兄だとさえ思っていたほどである。 後ろを振り返るとその男は優しく微笑んでくれる。 いつだったか、王族の結婚式で退屈なあまり男を何度も何度も振り返って、男が微笑んでくれ るのを面白がっていると急に目の前が真っ暗になった。 周りから悲鳴や、泣き叫ぶ高い声が聞こえる。ティムカは目を何かに覆われているようで 何も見えなかった。 きつく体を抱き上げられ、冷たいものが頬に当たる、、、。 「怖いっ!誰か助けてっ!お兄ちゃーーーーーんっ!!」と護衛の男を呼ぶと口を大きな手で 塞がれた。何が起きているのかティムカにはわからなかったが、すぐにその闇から 解放され誰かがティムカの体を横からタックルするように奪った。 ティムカが目を開けると、そこには護衛していた男が息を切らしながら、ティムカに 「申し訳ありません。」と目の上を縦に切られた傷から血を流し謝った、、、。 護衛の男は、ティムカに微笑むのに夢中になってしまい周りの護衛をすっかり 怠ってしまったのだ。そこを野盗が狙って、幼い王子を人質にして牢に入っている 仲間の解放を要求しようとしたのだ。 王子が無事であったことと、すぐに野盗を捕らえ、何よりも王子自身のたっての願いで そのまま王城には仕えるものの、以後王族の護衛の仕事は解かれた。 城の中を捜しても、ティムカは彼を見つけだすことはできなかった。 それでもずっとティムカは弟が生まれても彼を探していた、、、。 黒い髪を後ろへなびかせた精悍な顔つき、褐色の固い筋肉の盛り上がったしなやかな体。 1度も言葉を交わしたことはなかったが、いつも父のような愛情溢れる視線で見守っていて くれた。 逢えなくなってからティムカの胸は時々、しめつけられるような痛みに悩まされた。 ある日、突然に護衛していた男と逢える日がやってきた! ”聖地”より使者がやってきて宇宙の女王候補試験の教官として、任命され祖国を 出発する前夜、ティムカの寝室に忍んでやってきたのだ。 「誰?、、、あっ、あなたは、、、。」 月明かりの中現れた男の目の上には縦に傷があった、、、。 あの時とあまり変わらない男の姿に、ティムカはなぜかほっとした。 「、、、覚えていてくださったのですか?光栄です、ティムカ王子。」 男はそう言って片膝をつき、お辞儀をした。 「はい。あれから、、、あの事件からずっとあなたを探していました。」 ティムカは嬉しさのあまり涙がでてきそうになった。 「ありがたきお言葉、、、、うっ。」 男は静かに泣き出した。 「さあ、立って下さい。あなたは僕の命の恩人なのですから、、、。」 ティムカは自分よりも大きな男の肩を抱くようにして立たせようとしたその時! 男はティムカに抱きついた。 ティムカは何が起こったのか分からなかったが、そのまま男を抱き返す。 「お元気で、、、どうか、体にだけはお気をつけて。」 耳元で囁くと、寝室のテラスへと走り去ろうとした。 「待って!お名前を、名前を教えてくださいっ!!」 男はティムカを振り返ると左右に首を振って、テラスから消えた。 翌日、聖地へ向かうシャトルの船着場に男は現れなかった、、、。 男の琥珀色した鋭い瞳をティムカは思いだしながら、祖国の星を飛び立った、、、。 聖地に着くと、護衛の男によく似た男、、、ヴィクトールに出会ってしまった、、、。 「ティムカ?目が覚めましたか?」 ロザリアは顔をしかめながら低くうめくティムカに声かけた。 「ここは、一体、、、。」 ティムカはずきずきと痛む頭を左右に振って意識を呼び起こそうとした。 「ああ、無理はするな。お前は丸3日間眠り続けていたんだ。」 枕元に立っていたオスカーが優しくティムカの頭を枕に戻した。 「よかったわ、目が覚めて。安心しました。今日はゆっくりと体を休ませて、、、 お話は明日詳しくしましょうね?」 ロザリアは優しく微笑むと、部屋を出ようとした。 「待って!待って下さい、ロザリア様。あの、、、ヴィクトール様は? ヴィクトール様はご無事なのでしょうか?」 オスカーとロザリアはすばやく目を合わせると伏せた。 「、、、ええ、ご無事ですよ。でも、、、。」 ロザリアは口ごもって、下を向いてしまう。 「ロザリア様、俺の方から話しときますから、どうぞ、お仕事に戻られて下さい。」 オスカーはそう言ってロザリアに頷いてみせた。 「では、、、オスカー、頼みましたよ。」 ロザリアは部屋を後にした。 「ティムカ、ヴィクトールは命は助かったのだが、、、煙を、、、火事の時煙を吸いすぎて 脳に障害を起したらしくて、、、。まだ、意識が戻らないんだ。お前と同じで眠り続けている。」 「おお、、、なんてこと、、、。」 ティムカは両手で目を抑えた。 「その、、、ヴィクトールの部屋でヴィクトールとアンジェリークが生まれたままの姿で 見つかってな。まあ、どうも、その、愛し合っている最中に不審火が発生したらしい。」 オスカーは少し言いにくそうに言う。 「えっ?」 ティムカはまだはっきりとしない頭でオスカーの言葉を聞き返した。 「それで、アンジェがひどく責任を感じていてな。女王試験を辞退して、ヴィクトールの 故郷へ一緒に行くと言っているんだ。彼の看病を一生したいと、、、。」 「アンジェリークが?どうして?あの、、、。」 ティムカは痛む頭をなんとかオスカーの話しに集中させようとしていた。 「あの火事の現場に居たのは、アンジェリークとヴィクトールと、、、お前だ。」 オスカーのアイスブルーの瞳が更に冷たくティムカに注ぐ。 「あの二人は何をしていたのか想像がつくんだが、、、お前は一体、何をしてた? あんな所で、、、しかも裸のままで。」 「ちがうっ!僕は、僕は、、、!」 「他の皆には、学芸館の廊下に倒れていたと言ってある。心配するな。 だが、不審火は誰がやったのか、、、という噂でもちきりだ。」 「オ、オスカー様?」 「ふふ、いつかのお礼、、、てやつかな?」 オスカーは、ニヤリと笑うと 「良い夢を、、、。」そう言って部屋を出て行った。 アンジェリークの罠にまんまとはめられた、、、ティムカの意識が遠のいていく。 ヴィクトールは健やかな寝息をたてて、ベットの上に横たわっている。 その傍らでアンジェが愛しい人の髪をかきあげ撫でている。 「もうすぐレイチェルの戴冠式が始まるわ。それが終わったら、ふたりであなたの星へ 行きましょうね。もう、誰にも邪魔はされないわ。だってこれが自然な形だもの。 ねっ?」 もうすぐ新しい宇宙が生まれようとしていた、、、。 be continue
さあ、どうする王子っ!どうなる王子っ!? 王子の復讐劇が始まるのか?それともこのまま、、、 次回へたぶん、続きます! また、よかったら遊びに来てね〜♪(><) 戻る


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