あひる物語



  「まったく陛下はどういうおつもりなのだろうか?こんな所に呼び出して。」
  光の守護聖ジュリアスは、意外な場所に呼び出されてご機嫌が悪い。
  まあ単にお嫌いな方と一緒だからかもしれませんが〜?
  
  「まあまあ、何か深いお考えあってのことでしょう。もう少しお待ちしましょう。」
  地の守護聖ルヴァはなだめるようにジュリアスに言った。
  
  クラ:「、、、日差しが眩しすぎる、、、リュミエール。」
  
  リュミ:「はい?何でしょうか?クラヴィス様。」
  
  クラ:「陛下の用事はお前が聞いておいてくれ。私は部屋へ戻る。」
  
  ジュリ:「なっ、何をっっ!!(ぶちぶちっ←神経2本損傷)陛下の命令なのだぞっ!
  私達に湖に来るよう言われたのはっっ、それをお前は無視するのかっ!?」
  
  クラ:「いや、、、聞かなかったことにする。」
  
  ジュリ:「!!!!????」
  
  「ほほほほっ、クラヴィス様そうはいきませんわ。陛下のおな〜りぃ〜ですわ。」
  白い大き目のレースがついた日傘をアンジェリーク女王陛下にさしかけ、
  高々と結い上げたラベンダー色の髪を揺らしながらロザリア補佐官登場。
  
  「ごきげんよう!みなさま、今日はこんな所に呼び出してしまってごめんなさいね。
  実は、ずーっと前から欲しかった物 、、、じゃなくて、聖地の備品がやっと届きまし
  たの。それをみなさんにも見て頂きたくてここに、お呼びしましたの。」
  金の髪の女王は昔と変わらぬ無邪気な笑顔を見せそう言うと、湖に向かって
  ひとつ手をうった。
  
  すると、「キィ〜コォ〜、キィ〜コォ〜。」と何か金属の触れ合う音と共に
  波しぶきをあげながら白く丸みの帯びたボディ〜と黄色いくちばしのあひるの足こぎボートを
  漕ぎながら商人のチャーリーが現れた!、
  
  「まいど〜、お買い上げありがとうございます〜。これ、探すのほんま苦労しました
  んやで〜っ!でも、あきんどは信頼が一番ですからなあ〜、もうむちゃくちゃきばって、
  探し回りましたんやでっ。」商人はす〜っと岸にあひるボートをつけると左右に揺れ
  ながら、「ほいっと!」とボートから岸にあがって集まっている守護聖たちに近寄った。
  
  「あ〜、あのう。これはどう見てもあひる型足漕ぎボートにしか見えないのですが〜?
  これが何か珍しいのですか〜??」ルヴァさまはこけそうになりながら、金の髪の女王に聞いた。
  
  「だってえ、この池。ただ広いだけでしょう?何かあった方が、面白いし、デートも盛り上がるんじゃ  あないかなあ〜て思って、、、。あ、いらないものならば、引き取ってもらいますけどぉ?」
   金の髪は流し目で4人のオトコ衆を見回す。
    ”デートを盛り上げる”という言葉にオトコ衆は敏感に反応した。
    そうして栗色の髪の女王候補とボートに乗る妄想の世界へ飛び立っていた。
    
   「ちっちっちっ!ルヴァさま、この宇宙一の商人チャーリー・ウォンをなめてもらっちゃあ困り
   まっせ。このあひるさんボートは、そんじょそこいらのあひるさんボートとはちがいます〜。
   このあひるさんはですなぁ〜、、、特別なんですわ。」商人さん、人差し指をオトコ衆の目の前で左  右に振ります。
   
   「特別?」生唾をのみこみながら、ジュリアスは半身前へ乗り出してしまいました。
   
   「ええ。実は、このあひるさんボートにカップルで乗ると、、、なんとっ!そのふたりは恋愛成就し  てラブラブ〜になり、永遠に結ばれるっちゅう百年の歴史をもつあひるさんボートなんですわぁ〜   っ!」
   あ〜あ、商人さん興奮して口の端から液体を飛ばしてます。
   
   「、、、ふっ。」リュミエール様は笑いをこらえて、口元を片手で抑えます。
   
   「、、、。」クラヴィス様は、くるりと背を向けるとずるずるとロープをひきずりながら退場。
   
   「あ〜、そうなんですかぁ。」全く言葉に感情が入っていないルヴァ様。
   
   「馬鹿々しいっ!」ジュリアスはぷいっと横を向きました。
   
   「あ〜ら、みなさん信じていらっしやらないのねぇ。そう、、、もしも、お疑いならば
   お試しになりませんこと?丁度、女王候補もいることだし?」
   
   オトコ衆の動きが凍りつくように一瞬止まった。時間よ〜 とまぁれぇ〜♪byえいちゃん。
   
   それぞれの脳をドーパミンががががーーーっとかけめぐります。
   「女王候補と、、、らぶらぶ〜、、、。」ルヴァ様はめまいを起こして、その場に倒れました。
   何想像したんでしょうねえ〜??
   
   「ああ、ルヴァ様しっかり!」リュミエールがかがみこみ、ルヴァを抱き起こします。
   うっすらと瞳を開けたルヴァは、リュミエールの顔を見上げ、
   「リ、リュミエール、、、鼻から血が、、、。」
   
   「ええっ!?」リュミエールが手で自分の鼻を抑えると、ルヴァの頭を支えていた手が離れ
   ルヴァの頭は地面へ。 ごんっ、きゅーっと気を失うルヴァ様。
   
   「お、お前達は何をしておるのだっ?!ルヴァ、しっかりしろ!
   オスカー、オスカーはおらぬかっ!?」
   
   ジュリアス様が金の髪を振り乱して叫ぶと、側にある木の幹がぺろ〜んとはがれ、
   「はい、お側に。」とオスカーがそこから出てきました。
   
   「なっ!なんという所にお前はいるのだっ?どうしてこんな所に、、、。」
   
   「呼ばれてとびでてじゃじゃじゃ〜ん♪なんつって!」
   
   「オ、オスカー!陛下の御前だぞっ?ふ、ふざけおって!お前は守護聖という重要な任務をわかって  おるのかっ!?」
   
   「え〜っ、わたし、わっかんなぁ〜い☆」
   
   「な、なんだぁ?その言葉遣いはっ!?まるで、、、んんっ?」
   
   「あはっ、わ・た・しよぉ〜!美貌の守護聖、オリヴィエ参上〜。」
    そう言いながらオリヴィエ様はぺりぺりとマスクをお顔からはがします。
   
    「なっ?なっんだーーーっ?!」ジュリアス様はどうやら驚いて腰がぬけたようです。
   
    「だぁってぇ〜、いっつもなんか陛下に呼ばれるのあんたたちばっかりじゃな〜い?
     だ・か・ら、びっくりさせようと思ってぇ〜、ここで張ってたの。うふっ☆」
      
     「まあっ!オリヴィエ様ったら、東洋の忍者みた〜い♪」女王陛下は、はしゃいで
      叫びます。
 
   「うふふ〜NINJIYAっていうよりも〜、くのいち、って言って欲しいわ。」
	
     「あーっ!オリヴィエ様ぁ〜、お会いしたかったぁ!ずーっと陛下のご注文の品を
     探し回ってたさかい、なかなか戻ってこられへんで、、、お元気そうですなぁ〜。」
     
     「あ〜ら、このわたしに会いたかったのぉ〜?感激だわぁ〜。」
     商人はオリヴィエ様にどさくさにまぎれて、抱きつきます。
     
     「お、お前達はっ!?#$%&*+@▲p・・・・!!」←ジュリアス様、
     怒りで声にならない。
   
     「わ、私はこれで失礼致します。」リュミエール様はそそくさとその場から逃げ去りました。
     
     商人さんとオリヴィエ様は久しぶりの再会を喜び合い、ジュリアス様はその二人に何か怒鳴る
     三人を優しく見守る金の髪の女王と補佐官。足元では、ルヴァ様が倒れています。
     
     「なんちゅう所や、、、。」湖面でゆらゆらと揺れるあひるボートは、呆れていました、、、。
     
     
      
      それから数時間後・・・
      
      「ええっ!?恋愛成就?」大きなエメラルドグリーンの瞳をさらに大きくして、
      女王候補のアンジェリークはレイチェルに言いました。
      
      「そーなんですって!そのあひるさんボートにカップルで乗るとね、永遠に二人は
      結ばれるんだって〜。ま、本当かどうかわかんないけどさ。」
      綺麗にお手入れされた指先を見つめながら、レイチェルが答えました。
      
      「そ、そうね。本当にそうなるのかどうか分からないもの、、、ね。」
      そう言いながらもアンジェは胸のどきどきが止まりませんでした。
      頭の中は「あの方ともしも、あひるさんボートに乗れたなら、、、。」と
      いうことでいっぱいになります。
      
      ぴんぽ〜ん♪誰かがアンジェのお部屋にやってきました。
      
      「きゃっ!大変、レイチェル早く隠れてっ!」
      「んもぅ〜、どーしてこんな所に隠れないといけないのよ〜!?」
      ぶつくさ言いつつも、レイチェルはテーブルの下へ隠れます。
      
      「いよっ、おじょうちゃん。よかったら、俺と一緒に森の湖へ行かないか?
      珍しいものをおじょうしゃんに見せてあげるよ。」
      オスカー様は、ウィンクしてアンジェの肩に手を置き、さりげなくけん制〜。
      断れない状況をつくります。
      
      「は、はい。お供します。」アンジェはちらりとテーブルを見て、オスカー様に背中を
      押されながら、
      「そうか!よかった、おじょうちゃんと素敵な時間が過ごせるなんてラッキーだぜ。」
      と、お部屋を出て行きました。
      
      森を抜けると、湖面に噂のあひるさんボートがぷかぷかと浮かんでおりました。
      「さあっ!おじょうちゃん、一緒に愛の海原へ出かけよう!」オスカー様は
      片足をあひるさんボートに乗せ、アンジェの手を引きふたりで乗り込みました。
      
      ふたりはゆっくりとあひるさんボートのペダルを漕ぎ始めました。
      「お嬢ちゃん、、、アンジェリーク、怖くないか?」
      「はい、大丈夫です。」
      「そうか、よかった。」
      
      オスカー様は、ふいにペダルを漕ぐのをやめアンジェリークの横顔を見つめました。
      アンジェはその視線に気がつき、顔を赤くしてうつむきます。
      
      「オスカー様、、、そんなに見ないでください。恥ずかしいです。」
      アンジェは小さな声でつぶやく。
      
      「いや、こうしてふたりきりになるのは、初めてだしこんな近くで君を
      見ていることが夢のようだから、つい、、、ね。」
      オスカー様の大きな掌が少女の頬に触れる。
      
      「あっ、、、。」思わず、アンジェが声を洩らしたその時!!
      
      「あー、あー、ただいまマイクのテスト中。こっほん、大丈夫のようだな。
      おいっ!そこいくあひるボートのふたりっ、止まれ。」
      
      「はあっ?」オスカー様が後ろを振り返るとそこには、聖地の巡視艇が
      ブンブンなにやらアンテナみたいなものをくるくる回しながらあひるさんボートに
      近づいてきます。
      その船先には拡声器を持ったジュリアスとその後ろには、見えないように小さく
      白い綿を両鼻の穴につめたリュミエールが立っています。
      
      「ジ、ジュリアスさま?!」
      オスカー様とアンジェはふたりしてぽか〜んと口を開け、ふたりに驚きました。
      なんのつもりかジュリアスは変なマドロスのような帽子までかぶっています。
      
      「速やかにあひるボートから投降するように!私の命令だっ!」
      ジュリアスは、眉間にしわ寄せ怒鳴ってます。
      
      「は、は〜ん、、、あの方も、おじょうちゃんとこのあひるさんボートに
      乗りたいんだな?、、、そうはいくかっ!!」
      オスカー様のアイスブルーな瞳に火がついたっ。オスカー様は、全速力であひるさんボートの
      ペダルを漕ぎ出しましたっ!
      
      「きゃーっ、揺れるー!オ、オスカー様止まらなくていいんですか?ジュリアス様が、、、。」
      
      「待てっ!オスカーっ!アンジェを降ろせっ、お前は私に逆らうのかーっ!?」
      拡声器が奇妙なピィーという雑音をたてます。
      
      「ふっ、お嬢ちゃん。しっかりつかまってるんだぜっ!」
      しゅばばばっばばば!!すごい水しぶきをあげてあひるさんボートが湖を横切ります。
      「きゃーっ、いやぁーっ!」
      アンジェはハンドルにしがみつくのがやっとです。
      
      ジャーン ジャーン ジャーンっ、、、どこからともなくドラの音が聞こえてきました。
      「ちっ、今度はなんだ?」
      オスカー様は速度を落とさず漕ぎながら右前方を見ると、ドラゴンの頭をくっつけた手漕ぎ
      ボートが近づいてきます。おおっ!これは長崎名物*「ペーロン」です。
      
      「オスカー様っ!独り占めはよくないぞーっ!」メガホンで叫ぶのは、、、ヴィクトール様です。
      
      「あっ!ヴィクトール様ですよ。」アンジェはご親切にもオスカー様に教えてあげます。
      「ちっ、ここにもライバルが、、、。」
      オスカー様は、舌打ちしてさらに漕ぐスピードをあげました。
      さすが軍人さんのヴィストール様、しゅばばばっと両手で櫂を回しまくってあひるさんボート
      の横にあっという間に並びました。
       「アンジェリーク、今すぐそのボートから降りるんだ!こっちへ飛び移れっ!」
       一緒に乗っていたティムカが、板をあひるさんボートのアンジェ側に渡そうとしました。
       
      「ふっ、さすがはヴィクトール。よく俺のあひるさんボートに追いついたな。
      しかし、これはどうかな?」
      オスカー様は さらにスピードをア〜ップ!!
      
      「な、なにをっ!こしゃくなっ!」
      ヴィクトール様もほとんど水しぶきにずぶ濡れ状態で漕ぎまくります。
      前方には、赤いリボンがぴーんと張ってあります。あそこがゴールですっ!?
      ティムカは、早鐘のようにドラをやかましい音を立てて「ジャーンジャーンジャーン」
      と鳴らしました。(ペーロン大会ではゴールに近づくと、ドラを早く鳴らします。)
      「ヴィクトール様、頑張って!もうすぐゴールですよっ。」
      ティムカが声を張り上げます。
      「ぬおおおおおおおっ!!」ヴィクトール様の全身の筋肉が盛り上がり、着ていたタンクトップが
      ちりじりに破けました。(あ〜ん、素敵!)
      あと5m、、、1m、、、ゴ〜ルっ!
      「おめでとうございますっ!一番ですよ〜♪」ゴールテープを持っていた、商人と
      オリヴィエ様が叫びました。
     「やったー!1位ですよー、優勝だっ!!」
     
      一体なにやってんでしょうか??
      
     
      「、、、なんだ?ありゃ、、、まあ、いいか。」
      見事、ヴィクトール様を振り切ったオスカー様は後ろを振り返りつぶやきました。
      しかし、とりあえずこれで邪魔者はいなくなったのです。
      湖面にもやっと静けさが戻ってきました。
      
      アンジェは、かわいそうに白目むいて気絶してます。
      「おい、アンジェ、アンジェリークしっかりしろっ!」
      オスカー様がゆさゆさと少女の細い両肩をゆさぶると、やっとアンジェは
      気が付きました。
      「はっ!?ここは、、、。」
      「よかった、おじょうちゃんお目覚めは如何かな?」
      オスカー様は、少女の瞳をのぞきこむように顔を近づけるとそっと唇を
      寄せ、、、。
      
      ぴかっ!ごろごろごろ、、、、。突然、青い空に雷鳴が響きあっという間に黒い雲が
      空を覆いました。
      
      「な、なんだ?今度は??」オスカー様はあひるさんボートから半身外へだして空を
      仰ぐと、、、
      
      「はーっはっはっはっ!我は宇宙に君臨する王なりっ、アンジェリークは誰にも渡さんっ!
      アンジェリークを我に渡せっ!!」
      黒いマントを翻し、ぷかぷかと天空に浮かぶアリオスがそこに現れました。
      
      「何勝手なことを言っている!アンジェは俺とあひるさんボートに乗るんだっ!」
      オスカー様が空に浮かぶアリオスに向かって叫ぶと、後方から
      ♪やぎりぃのぉ〜 わぁたあしぃ〜♪という歌声とともに、屋形舟がスーッとあひるさん
      ボートに横付けされました。
      
      「なっ?なんだあ?!この船はっ!?」
      オスカー様の声に答えるように、屋形舟の閉まっていた障子がススと開くと
      「あ〜、オスカー。あなたもどうですか?ほうら、今揚げたばかりのキスの天ぷら
      ですよ〜。あ、このきすはわたしが釣ったんですよ〜。いやぁ〜、やっぱり屋形舟と
      いえば、天ぷらですからねえ〜。どうですか、アンジェもこちらに来て一緒に食べ
      ませんか〜?」
      とルヴァ様がでてきました。
      
      「ル、ルヴァ、、、お前まで。」オスカー様、脱力。
      「あ〜、オスカー。ひとりじめはいけませんねえ〜。はふはふ。」
      ルヴァ様は揚げたきすの天ぷらを食べてます。
      
      「ふっ、今だーーーーっ!!」
      とアリオスがあひるさんボートに向かって、雷を落とそうと右腕を振り上げたとき、
      しゅるしゅるしゅるるんっ!と白いリボンが腕に巻きつきました。
      
      「むっ?!誰だっ?」
      すると、屋形舟の先端にリボンの片方を持ったセイランが現れました。
      
      「ふふふ、こうやっているとまるで君はスカイカイトのようだね。
      ほうら、こっちへリボンを引っ張ると、、、あははっ、面白いな。」
      セイランがリボンを右へ引っ張ると、それに合わせて腕をリボンにとられている
      アリオスの体も右へ。
      
      「何をするんだっ!?離しやがれっ!」
      
      「ふっ、誰であろうと僕の芸術品を壊そうとする者は許さないのさ。
      、、、アリオス、いや、レヴィアス、、、覚悟っ!!」
      というわけで、セイランvsレヴィアスの闘いが始まりました。
      
      「よし、今のうちに逃げよう!行くぞ、アンジェ。しっかりつかまっているんだぞっ?!」
      また、オスカー様はしゅばばばばーんっと水しぶきをあげペダルを漕ぎました。
      
      もうアンジェは返事をしません。だってまた先ほどから気を失っているのですもの。
      
      ずばっズババババババーン!!すごいエンジン音を立てて、今度は水中バイクでゼフェルと
      ランディが追いかけてきました。
      
      「おいっ!オスカー、お前きったねぇぞ!みんなに睡眠薬入りのお茶飲ませやがって!
      マルはずっと昼寝から目が覚めないんだぞっ!
      
      「ちっ。みんな気がついていたのか、あのお茶に入っていたことを。道理でみんな
      追いかけくるわけだ。もっと量をたくさん入れておくべきだったな。ふっ。」
      オスカー様は唇の端で微笑います。
      
      「おいっ!アンジエリークっ、起きろっ!!おいっ!」
      ゼフェル様がオスカー様の隣でぐったりとうなだれているアンジェに叫びます。
      
      「、、、あっ!ゼフェル様っ?ここは、、、いやーっ、まだ水の上に居るのーっ!?」
      アンジェはすっかり気が動転してしまい泣き叫びます。
      
      「ああ、アンジぇ。泣かないでくれよ、、、ほうら、面白いもの見せるからっ!」
      ランディ様はそう言うと水上バイクを運転するゼフェル様の両肩にひらりと股がり、
      「ほうらっ!アンジェ、すごいだろ〜っ!?はははーーーっ!」
      「なっ、何がははっだっ!笑ってる場合じゃねーだろうっ?早く降り、、、うわーっ!」
      両肩にランディ様を乗せたゼフェル様の運転する水上バイクは大きく左へカーブして、撃沈。
      
      「きゃーっ!?オスカー様、お二人が湖へっ!沈んでしまいますーーーっ!」
      アンジェが、思わず立ち上がるとあひるさんボートはゆらりと大きく左右に揺れた。
      「おいっ!アンジェあぶなーーーいっ!」オスカー様が手を差し伸べますが、そのまま
      アンジェは後ろへゆっくりと、、、ばっちゃーーーん、、、。
      
      ブクブクブク・・・アンジェは湖へ落ちてしまいました。
      薄れ行く意識の中で、目を開けるとそこには竜宮城と乙姫さまの恰好をしたオリヴィエ様と
      カメの着ぐるみを着た商人さんが笑ってアンジェに向かって、手を振っていました、、、。
      
      
      
      「ひぇーっ!た、助けてぇ〜っ!」
      「おい、どうした?大丈夫か?」
      アンジェは驚いてこわごわ、声のする方へ顔を向けるとそこにはクラヴィス様が心配そうに
      彼女のベットに座り、アンジェの顔をのぞきこんでいました。
      「あ、ク、クラヴィス様?そうしてここに?あの、ここは、、、。」
      「ふっ、変なことを言う奴だな。ここはお前の部屋ではないか?」
      「あ、そう言えば、、、。」
      アンジェは部屋を見回すと、ほっと胸を撫で下ろしました。
      「お前、、、アンジェ、本当に大丈夫か?」
      再度、クラヴィス様はアンジェの顔に近づきご自分の額をつけました。
      
      「んっ?少し熱があるようだな。、、、今夜は、ゆっくり休んだ方がいいだろうな。
      それでは、わたしはこれで、、、。」
      
      「あ、あのっ。大丈夫ですっ!ところでクラヴィス様、何かご用があったんじゃあないですか?」
      アンジェは真っ赤な顔をしながら、クラヴィス様を引き止めるようについ大声で言いました。
      
      「、、、いや、お前と夜の湖を散歩できたら、、、と誘いに来たのだ。」
      アンジェは「湖」という言葉に反応して顔から血の気が引いていく〜。
      
      「湖にあるあひるさんボートに乗ると、ふたりは永遠に、、、結ばれるという
      酔狂ないわれがあるらしい。それで、、、お前となら試してみようかと思ったのだ。
      、、、ふっ、わたしらしくないな。忘れてくれ、、、。」
      月明かりに照らされたクラヴィス様の顔が少し照れたように微笑みます。
      
      「わっ、私でよければ、ぜひご一緒させてくださいっ!!」
      アンジェを少し驚いたような顔をしてクラヴィス様は見つめながら、やがて優しく瞳を
      細めると「行こうか?」とつぶやきました。
      
      
      昼間の喧騒とはかけ離れた静かな静かな湖面の上を月の光が遊んでいるかのように、
      キラキラと輝いています。
      その湖面には、ぼんやりと白く光るあひるさんボートが夜風に揺られてゆ〜らゆ〜ら。
      
      「さあ、足元に気をつけて。」
      クラヴィス様はアンジェの手をとると、隣へ座らせました。
      二人がアヒルさんボートの座席に座ると、音もなくスーッとあひるさんボートは湖面を
      滑るように動き出しました。
      
      「きゃっ!?これは?」
      
      「落ち着けアンジェリーク、このあひるさんボートは真夜中に乗らないと、意味がないのだ。
      ふっ、最後まで話を聞かぬ奴らに振り回されたようだな。」
      
      アンジェは昼間のことをクラヴィス様に見られていたのかと思うと、すごく恥ずかしく
      なってうつむいてしまいました。
      
      「アンジェ、、、私と一緒に、私についてきてくれるか?」
      クラヴィス様の瞳が、どこか懇願するような憂いを帯びてアンジェを見つめます。
      
      「はい。私はクラヴィス様のお側にずっと居たいです!」
       アンジェの返事にクラヴィス様は満足気に微笑むと
       アンジェの頬を両手で優しく包みゆっくりと唇を近づけました、、、。
       
       
       ふたりを乗せたあひるさんボートは、暗闇の中へ溶けるようにその姿を湖面から
       消しました。そう、誰にも邪魔されない永遠に結ばれる黄泉の国へと、、、。
       
       
      END
      

クラヴィス様ファン以外の方、ごめんなさい。(><) 戻る。


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