えと、これASKさんの作品!
拍手喝采おねがいね〜。
題名は
「紙ひこうき」
ASKさんの世界をお楽しみください。
では、どうぞ、ASKさん


「紙ひこうき」
        作 ASK

序章

病院のロビー。

青年と幼児が、ただ黙って座り込んでいる。

青年の手には、汗が溜まっている。

 「佐藤さん・・こちらに来て下さい。」

青年の背後から、ドクターが青年に話しかける。

青年は椅子から立ち上がり、ドクターの方を向き、コクリと頷いた。

 「青葉、大人しくここにいてね。」

青年は、幼児の頭をなで、ドクターと共に、その場を立ち去った。

幼児はキョトンと、その光景をただ見るばかりだった。

 「先生・・、由美子の様子は?赤ちゃんは順調に生まれるのですか?」

 「・・・いいえ・・、だからあなたと奥さんに相談が・・。」

 「え・・?」

 「とにかく来て下さい。」

ドクターは、ある部屋の扉を開ける。

そこには、顔を赤くして、苦しくうなってる妊婦、
それを見守って励ましている看護婦の姿があった。

 「由美子・・。」

 「奥さん、あなたの状態から、冷静に聞けないと思いますが
    ・・・いえ、お父様の方も冷静に聞き入れないと・・。」

 「先生・・?」

ドクターは、目をそむけながら、重い口を動かした。

 「赤ちゃんを産んだら・・奥さんの命が大変危険なんです。
   赤ちゃんと奥さんの命・・どちらを優先するか、考えてください。」

 「そんな・・!両方は無理なのですか!!?」

 「・・・・。」

 「そんな事言われたって・・俺は・・。」

 「雫・・。」

妊婦は、息を切らせながら、青年に話しかける。

 「私は・・・−−−−」 



第一章 かいもの
ーーーあれから三年。
六畳の畳の部屋。
 「おじいさんはシバカリに、おばあさんはセンタクしにいきました!」
五歳児の少年が三歳の幼女に、本を読んでいる。
その声は、部屋全体に響く。
その声に負けるかと言わんばかり、セミの鳴き声も、響き渡る。
 「あああ〜〜〜!!」
さっきまで、少年とセミの声と鳴き声で響き渡ってた部屋が、一瞬にして、青年の声で消される。
 「と・・、とうちゃん!?どうしたの!!オオきなコエをだして!」
 「だしちぇ!」
少年と幼女が、声をハモらせ、父の居るキッチンへ走って向かう。
 「ああ・・」
父、手で頭を抱え、へたり込んでいる。
 「今晩カレー作る予定だったのに・・カレー粉と肉買い忘れた・・。
  カレー粉なかったら、どうやってカレーを作るちゅうねん。」
少年と幼女は、その光景を見て、ため息をついた。
 「そんなことでオオきなコエださないでください〜。」
 「しゃい〜。」
 「ああ・・ごめんごめん。」
父は、ははっと笑って、二人の頭をなでた。
 「でもこれから家事しなきゃいけないし・・。どうしよう・・カレー中止かな・・。」
 「・・・・。」
少年、困った父の顔を見て、ポンッと手を叩く。
 「そうだ!僕らがお買い物父ちゃんの代わりにするの〜!」
 「え・・いいの!?」
父は満面の笑みで、2人に抱きつく。
 「うう・・ありがとよ〜。父ちゃんの代わりに行ってくれるなんて〜。」
 「父ちゃん暑いの〜。」
 「・・そうだね。」
父は、2人パッと、体を離す。
 「じゃあ、カレー粉と肉とガムテープを買ってきてね。」
 「はい!って・・なんかふえてない?」
ちょっと不思議そうに父を見る、少年。
 「そんな事ないよ。」
明るく笑顔でそれを返す父。
 「・・そうですね!」
父はタンスから、赤い財布を出し、それに二千円お金を入れる。
 「お金は青葉に持ってね。」
 「はい!」
青葉と呼ばれた少年は、元気に返事を返す。
 「菫は、お兄ちゃんの言う事聞くんだよ?」
 「あい〜!」
まだ、完璧な発音が出来てない返事で、菫と呼ばれる幼女は、返事を返した。
青葉は走って、玄関へ向かう。
それを必死に追う菫。
 「いってきます〜。」
青葉と菫は、アパートの階段を、勢いよく駆け下りた。
 「ニイたんまって〜。」
やや、2人の距離に差が出来ている。
 「あ・・。」
菫が急に声を上げた。
 「どうしたの?」
 「しんごう・・。」
菫は、スッと、信号の方を指差した。
 「しんごうのワタりカタ・・アカでわたるの?アオでわたる?」
 「え・・。」
青葉が、固まった。
 「えっと・・ん・・っと。」
青葉は頭をかく。
 「わかんないのですか・・?」
菫は、下向きになってる青葉の顔を、覗き込む。
 「あ!そうだ!いいコトおもいついた!」
青葉は、菫の肩をポンっと叩き、偉そうに、話し出してきた。
 「あのね、こうゆうときは、ヒトとあわせるの!
  もしも、ほかのヒトがアカわたったらアカすすむ!
  アオわったたら、アオすすむ!」
 「おお〜!あたまいいでしゅ〜。」
青葉と菫は、黙って人が通るのを待ち続ける。

青葉の家にて。
父は、六畳の畳の部屋を、掃除機をかけている。
ふと、目を時計にやる。 
 「青葉達が出て三十分か・・。」
父はハッと、顔を驚かせる。
 「ああ・・何肉買わせるのか言ってない!!」
自転車の鍵を、タンスから出し、家を急に飛び出す父。
 「今頃2人・・困ってるだろうな〜・・。」
アパートの階段を駆け下り、自転車置き場で、自分の自転車の鍵を外し、急いで自転車をこぐ。
 「でも、なんで俺、こんなおちょちょこいなんだろ・・。」
自分にため息をつく父。
 「ん。」
父の目に、ふと、見覚えのある、小さい子供2人が目に浮ぶ。
 「あれって・・。」
自転車から降り、ゆっくりと2人に近づく。
 「・・青葉・・菫・・。」
父の顔が、ポカンとあく。
 「あ!とうちゃん!」
 「ねえ・・家出て、結構時間たつけど・・ずっとここに居たの・・?」
 「うん!信号の渡り方解らなくて。ね〜。」
 「ね〜。」
声をハモらす、青葉と菫。
それを見て、唖然とする父。
 「・・青の時、信号を渡るんだよ・・。」
 「おお〜!」
目を大きくし、父を見る、青葉と菫。
 「そういえば、なんでとうちゃん、ココにきたの〜?」
 「ああ・・そうだ!えっと、お肉の買う種類だけど・・豚さんのお肉ね。」
 「そんなコトわかってるよ〜。いつもカレーに入ってるのブタさんだもん。」
 「買う肉の種類が解ってて信号解らないって・・。」
 「?」
父の言葉に青葉は、あまり意味が通じてない様子だった。
 「にいたん〜。あお〜。」
菫、青になった信号を指差す。
 「青葉・・菫・・父ちゃんと一緒に買い物行こうか。」
 「ええ〜、ボクとスミレで、カイモノするってきめたの〜。」
青葉と菫、走って歩道を渡る。
 「とうちゃん、イエでアンシンしてシゴトするの〜。」
大声で叫び、走り去る。
 「・・・。」
父の胸に、不安が走る。


帰り道。
夏空の中、自転車をこぐ父。
 「まさか・・あの信号で、二十分待ってるとは・・。」
自転車を、元の場所へ戻し、アパートの階段を上る。
 「忍耐ずよいって言うか・・何と言うか・・。」
独り言を、ぶつぶつ言いながら、104号室の扉を開ける。
 「不安だな〜・・。俺に似ちゃったかな?」
部屋に入り、へたりこむ父。
 「あ〜あ・・。本当に心配だ・・。でも、初めてのお買い物だもんな〜2人。
やる気満々だし。俺がきたら、ムードぶち壊しだもんな〜・・。」
父、いきなりムクッと、体を起こす。
 「そうだ!変装して、2人の様子を見れば!」
父は、押入れから、長袖のコートとマスクと帽子を取り出し、装着する。
 「うん!これならバレないな。」
父はふたたび自転車の鍵を持ち、家の鍵をかける。
それと同時に、お隣さんの家の扉が開き、中から20代の女性が出てきた。
 「あ!こんにちわ〜。」
 「こ・・こんにちわ・・。」
父のあいさつに、戸惑うお隣さん。
アパートの階段を駆け下りる父。
 「・・今・・夏なのに・・。」

客と店の人で、活気の溢れた声が商店街に響いている。
 「おにく〜ブタさん〜!」
青葉と菫は、仲良く手をつなぎながら、商店街をぐんぐん進む。
 「ふう・・追い付いた。」
数m離れた所で、2人の後ろを見守る父。
その光景は、父の格好が季節外れのせいか、とても目立ち、お客とお店の人の
目線が父の方にあびてる。
だが、青葉と菫、父の家族共々、それに全く気付かないようだ。
 「おばちゃん〜!おにくください〜!」
 「あら、青葉君、菫ちゃんいらっしゃい!今日はお父さんいないの?
2人だけで買い物?偉いわね〜。」
肉屋のおばさんの言葉に、照れる青葉。
それを真似する菫。
 「何肉買うのかな?」
 「あのね〜、ブタニク!!」
 「ぶーぶーのおにく〜!!」
肉屋のおばさんが、「ああ、いつもの豚ロースね。」と言いながら、
カウンターのガラスケースに手を突っ込み、豚肉を掴む。
 「どれ位の重さが欲しいのかな?」
 「あのね・・え・・。」
青葉と菫の顔が、キョトンとする。
 「ああ!何g買うのか言ってなかった!!」
そう言い、自分の頭を叩く父。
 「えっと・・。」
戸惑う、青葉と菫。
 「あ・・あのね、これくらいなの〜!」
そう言って、ばっと手を広げる菫。
 「えっと・・えっと・・39cmなの!」
おろおろしながら、答える青葉。
 「さ・・39cm?」
青葉の返答に戸惑う肉屋のおばさん。
 「へえ・・青葉cm解るようになったんだ〜。信号解んなかったのに〜・・
って、子供の成長を噛み締めてる所じゃないか・・ど・・どうしよう・・。」
焦る父。
 「えっと・・お父さんこのお肉使って何作るって言ってたかな?」
 「あのね〜カレー!!」
 「そっか〜、カレーか!」
肉屋のおばさんは、手に持ってる肉の重さを量る。
 「はい、君のお父さんカレーの時、いつも200g買うから・・。」
 「グラム〜?」
 「ははっ!青葉君と菫ちゃんには難しいか!」
青葉は、肉屋のおばさんに、千円札を渡す。
そして、640円とお肉が渡される。
 「君のお父さんドジだね〜。お肉の重さ言わないなんて・・。」
肉屋のおばさんは、大きな声で笑う。
 「その前に何肉買うのか言い忘れたなんていったら・・ますます笑いの渦だろうな〜・・。」
父は顔を赤らませながらぼそっと言う。
 「それじゃあ、2人共気おつけて〜。」
 「はい〜!」
2人は手を振り、走って、肉屋を去る。
 「ほう・・なんとかなった・・。こういう時こそ、おとくいさんっていいもんなんだな〜・・。」
そんな事を、ボソッと言った後である。
 「ちょっといいですか?」
父の肩を誰かが叩く。
父はふと、後ろを向く。
 「すみません・・警察ですが・・署まで同行出来ますか?」
 「え・・」

商店街のスーパー。
菫が、カゴを持ち出す。
 「えっとカレーコと・・ガムとテープ。」
ガムテープとガムとテープを間違えてる青葉。
 「に〜たん!カレーコあった!」
 「おお〜でかしたよ〜!スミレ〜!」
青葉は、カレー粉を、カゴに入れる。
 「ガムはたしか・・おかしのところ・・あったあった!」
青葉はお菓子コーナーの所に行き、ガムを手に取り、走って菫の所に戻る。
そして、ガムをカゴの中に、放り投げる。
 「後・・テープ・・。」
 「あれ・・青葉じゃん。」
青葉の後ろから、男の子の声がする。
青葉は、後ろを振り返る。
すると、青葉より少し身長の高い、日英のハーフの男の子が居る。
 「あ、セシルくん!」
 「だれ〜?にいたん〜?」
 「あのね、ようちえんのおなじくみでね、おトモダチなの〜。」
 「それ、妹?あまり似てないな・・。」
 「あのね、ボクとうちゃんににてて、スミレかあちゃんににてるの〜。」
 「へ〜。」
セシルは頭をかきながら、菫の顔を見る。
 「そういえば、セシルくんなにしてんの?」
 「なにって・・スーパーに居ると言ったら、買い物しかないだろ?」
 「え・・ひとりで?」
 「うんう。母さんと。はぐれた。」
 「え?じゃあ、セシルくんマイゴ?」
 「うるさいな〜。お前らだって迷子だろ?」
青葉、ふんっと、鼻息をして、得意げに青葉が言う。
 「あのね、ボクたちふたりだけで、カイモノしてんの!」
 「ふ〜ん、俺とっくのとうにやったな。昔。」
そっけなく言葉を返すセシル。
 「セシル〜!!」
ふと前に、女の人が、走って三人に近づく。
 「あ・・、母さん。」
ちょっと、セシルの声が明るくなる。
 「よかった〜、ここに居たんだ・・。あれ?その子達・・セシルのお友達?」
 「うん、幼稚園のダチと、その妹。」
 「あら、2人で買い物なの?偉いわね〜。セシルをこれからもヨロシクね。」
 「んじゃあ、俺母さん見つかったし、そろそろ行くね。」
セシルとその母が、手を振り、その場を去る。
 「・・・・・。」
黙ってそれを見送る青葉と菫。

「・・・・・・・・あ、あとテープかうの!」
青葉は菫を引きつれ、文房具コーナーで、テープをカゴにいれ、レジへ向かい、会計をする。
 「680円になります。」
レジの人の言葉に、青葉がコクリ頷き、千円を出す。
 「320円のお返しです。ありがとうございました!」
青葉は、レジで貰った袋に、買った物を全ていれる。
 「スミレ〜!カイモノおわったね!」
 「・・・・・。」
青葉の言葉に、菫の返事がない。
 「スミレ・・?」
青葉と菫は黙ってスーパーを出る。
 「どーしたの?」
青葉は、菫の手を握る。
菫は、青葉の顔を見る。
 「にーたん、なんでスミレにはおかあさんいないの?」
 「え・・」
 「スミレのおともだち、みんなおかあさんいるの〜。なんでスミレにはおかあたんいないの〜?」
 「とうちゃんいるでしょ?とうちゃんいるからさみしくないでしょ?」
 「うん・・でも〜。」
 「ぼくらには・・とうちゃんいるんだから・・。」
菫の握ってる手を、さっきより、力が少し強くなる。
 「あのね、でも、おかあたんにあいたいの〜。」
 「・・・・。」
 「にいたん?」
 「スミレ・・せい・・?」
 「え・・?」
 「スミレのせいなの!!かあちゃんいないのスミレのセイなのに、
かあちゃんにあいたいっていうなよ!!バカ!!!」
青葉は、泣きながら、菫を置いて、その場を走り去る。

商店街の近くの交番。
 「幼稚園児の後を追うとは・・あんたロリコン?」
 「あの・・」
 「てかさ、いかにも怪しげだよ・・あんた。年齢は・・二十前半ぐらいだね?名前は?職業は?」
若い男警察官に、問い詰められる父。
 「あの・・俺・・あの子達の父親なんですが・・」
 「だ〜〜!アンタいつまでそんな事言ってるんだ!自分の子供なら、
なんであんなヒソヒソしてるんですか!!」
 「買い物をちゃんと出来てるか・・心配で様子を・・」
 「様子って・・なんでわざわざあんな長袖で!?おかしいだろ!
あんたは、ロリコン罪及び、変態罪ですよ!」
 「ろ・・ろりこん・・?へんたい罪?」
 「とにかく、僕の質問答えてください!」
そう、若い警察官が怒鳴った瞬間、急に、交番の扉が動く。
 「ただいま・・。」
 「あ、先輩!」
中年の警察官が入ってきた。

ふう・・疲れた・・。」
 「パトロールお疲れ様です!」
中年の警察官は、近くにある椅子へ座り込む。
ふと、チロッと、父の顔を見る。
 「あれ・・。」
 「あ、この人、ロリコン・変態罪で・・。」
 「ああ!雫さん!こんにちわー。」
 「あ・・早乙女さん!」
 「え・・。」
若い男警察官が、驚いた顔をした。
 「あの・・この人の知り合いですか?」
おどおどして、聞く若い男警察官。
 「彼は、私の近所に住んでる人でね。妻に良くして貰ってるんだよ。」
 「ええ・・!!この・・ロリコン青年が・・先輩の妻に!?」
 「だから、誤解ですって。」
父は、ムッとして、若い警察官を睨み付ける。
 「ロリコン・・?」
早乙女と呼ばれた中年警察官は、首をかしげた。 
 「この人コートを着て、小さい子供の後を、付いて行ってたんですよ!」
 「その子供は、3歳と5歳児の男の子と女の子だろ?」
 「あ・・はい・・。」
 「それは、雫さんの子供だよ。」
若い警察官は、ポカーンっと、口を空ける。
そして、父の顔を見る。
 「え・・本当にそうだったんですか・・。」
 「そうですよ・・。」
早乙女は、鼻息をふーんっとはいて、ははっと笑い出す。
 「相変わらずの天然ぷりですね!どうせ、初めての子供のおつかいに心配で、
変装して、子供の後をついて行ったんでしょ?」
 「おお!早乙女さん!な・・何で解ったのですか!?え・・エスパーですか!?」
早乙女の笑いが、さらに激しくなる。
 「ぶはははっ!こりゃ妻に言ったら、爆笑だな!!」
 「・・・・。」
父は、ほっぺを赤くする。
 「そう言えば、さっき、スーパーの前を通ったら、菫ちゃんと青葉君コンビを見かけましたよ。
コートは後で、私が家へ届けるから、すぐスーパーに言ったらどうです?みうしなりますよ?」
 「あ・・はい!そうさせて貰います!お願いします。」
父は走って交番を出る。
 「はははっ!忙しい人だな〜。」
若い男警察官は、ポカンとした顔で、椅子にへたり込んでいる。
 「・・あ・・あんな大きい子供いるんだ・・。僕と同い年ぐらいなのに・・。」
 「彼はね、19の若さで父親になったんだ。」
 「え・・!じゅ・・十九!?」
早乙女は、ポケットからタバコを出し、一服する。
 「初め彼にあった瞬間驚いたよ。あんな若さで父になったんだ。
それもアレを見て解るように・・おちょこちょいで、ボケてる所あるから、心配でね。
また、奥さんも変わった人だったよ。」
 「だった・・?」
 「あの女の子、菫ちゃんを産んだ瞬間、ポックリと逝ってしまたんだよ。」
 「・・そうなんですか・・。」
若い男警察官の顔が、しょぼんっと、しぼれてる。
 「なんか・・悪い事言っちゃたな・・。
ちゃんと事情聴取しなくて、勝手に変態扱いしてしまって・・。」
 「大丈夫だよ。あの人をネチネチしてないし、根に持たない人だ。君を許してくれてるよ。」
 「でも・・片親か・・大変そうだな・・。」

川の土手の上。
青葉は息を切らせ、地面へ座る。
 「はあ・・はあ・・。」
青葉の脳裏に、ある記憶がよぎる。
 
 「ねえ、かあたんねてるの?」
 「うん、そうだよ。菫を産んで、疲れちゃたんだ。」
青葉は、父の背にのって、母の顔を覗き込む。
母の顔は微笑で、とても白く、周りに花に囲まれている。
 「かあたんカオイロわるいのー。」
 「あのね、母さんはね、遠くに行っちゃたんだ・・」
 「?かあたん・・ここにいるよ?」
 「・・・・。」
父の顔が赤らめて、涙が零れ落ちる。
 「青葉・・菫のせいじゃないんだ・・これは誰のせいでもないんだ・・。
これは神様の定めでね・・、母さんが望んだ事なんだ・・。」
 
青葉、ふうっと、ため息をつき、背中までも、地面につかせ、ねっころんだ。
幼い青葉は、まだ死と言うものが、イマイチ解っていないようだが、
母が二度と帰ってない事は理解しているようだった。
青葉は、自分の胸を押さえる。
「菫のせいじゃない・・誰のせいでもない。」
その父の言葉を思い出すと、青葉の心は、ズキッと痛む。
 「ううっ・・かあちゃん・・。」
青葉の目から、今まで溜まってた、涙が零れ落ちる。

自転車で、丘を登る父。
その後ろには、菫がガシッと、父の背中にしがみ付いている。
 「おとーたん・・スミレ、にいたんにごめんなたい・・しゅる?」
 「うんう、しなくていいんだよ。」
丘を登り終わると、目の前に川が見える。
 「にーたん、ここにいるの?」
 「青葉が一回家出した時、ここに居たからね・・多分ここだよ。」
父は自転車を置き、土手を下る。
すると、青葉はねっころびながら、泣き続けている。
 「やっぱここか・・。」
父は菫と手をつなぎ、青葉に近づき、隣に座る。
 「とおちゃん・・。」
 「青葉と母さんが喧嘩して家出した時、ここにいたよね。」
父はニッコリと笑う。
 「青葉もワンパターンだな。俺と似て。」
 「・・怒ってないの?」
 「青葉、菫をせめたから、そんな自分に腹立てて泣いてるんだろ?
俺が怒る事なんて、何一つ無いよ。」
菫を見る父。
 「菫、もう気にしてないよな〜。」
 「あい!」
元気に返事をする菫。
 「・・母さん居ないの・・辛いよね・・。俺も大人なのに、由美子が恋しくてさ・・。」
 「ねえ・・母さん帰ってこないんでしょ?そんなの・・ひっく・・うっ・・。」
父は黙り込む。
その光景に、菫、ポカーンっと口を開けながら見ている。
 「帰ろう。2人共お腹すいたでしょ?」
父は2人の頭をなでる。

アパートの階段を駆け上り、自分達の部屋へ入る三人。
 「・・・・。」
いつもにはあまり無い、静かな空気が流れる。
父は、辺りをキョロキョロする。
どうやら、落ち着きかない様子である。
 「えっと・・、お・・お買い物ありがとう!!わ〜!ぶ・・豚肉200g買ってある!」
 「・・・・・。」
青葉は、父の言葉に反応がない。
父は、ことばをつまらせながら、スーパーの袋を覗く。
 「カレー粉とガムテープもちゃんて買ってきて・・って・・あれ?
ガムとテープ?しゃ・・しゃれかい?青葉?ははっ!俺そんな面白いギャグ作れないよ!」
 「・・ギャグじゃないもん。」
また、無言の空気が流れた。
 「えっと・・天然だな〜!青葉は!俺も良くあるよ!」
青葉ため息をつく。
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
三人黙り込む。
 「えっと、ゆ・・夕飯作、キッチンへ向かう。
しばらくして、青葉はテーブルの上にある、母の写真をとる。
 「これ、かあしゃん〜?」
 「・・・・・。」
青葉黙って、頷く。
その光景を、カレーを作りながら、見る父。
 「・・後、煮込むだけか・・。よし!」
父は、中火で煮込み、カレー粉を入れる。
 「青葉、菫!お母さんに手紙書こうか!」
父は、台所に置いてある紙とペンをとって、青葉達の所へ向かう。
 「・・手紙?」

青葉と菫は、一生懸命手紙を書く。
それを暖かい目で、見守る父。
 「菫、母さんになんて書いてるんだ?」
 「あのね〜、おかあさんゲンキですか?わたしはナカヨクみんなとくらしてます!
ってかいてんの〜。」
 「そっか!上手だね〜!」
父の言葉に、照れる菫。
 「青葉は?」
 「あのね・・ひみつ!あとね、かあちゃんのにがおえかいてんの!」
 「スミレもかく〜!!」
 「あーーー!!まねっこ!!」
父は、2人の会話を聞き、クスクス笑う。
 「まるかいて・・てんてん・・できた!!!」
 「スミレもーー!!」
 「おお!そっか!じゃあこの後少し細工をして・・。」
父は、菫の手紙を折り、紙ひこうきを作る。
 「あ〜!ひこうきだ〜!」
 「青葉は一人で作れるよね?」
 「うん!」
青葉は、父の見真似で、紙ひこうきを作る。
 「とうちゃん!てがみって、フウトウにいれるんじゃないの?」
 「母さんの手紙の場合は、紙ひこうきを使うんだ。」
父はそういって、ベランダへ向かう。
2人もその後に着いて行く。
 「母さんはね、あそこに居るんだ。」
父は空を指差す。
 「そら〜?」
 「うん。だから、紙ひこうきで、空まで飛ばすんだ。」
 「おお〜!」
2人共、父に拍手をする。
 「ひこうきなら、そらにとどくもんね!」
 「2人共、高く飛ばすんだよ。」
 「ハイ!!」
2人は勢いよく、紙ひこうきを飛ばす。
紙ひこうきは、力強く、夜空へ消えてった。
 「かあちゃんとどいてるかな?」
 「届いてるよ。」
父は、青葉の問いに、笑顔で答える。
 「ねえ、とおたん〜。」
 「?どうした、菫?」
 「こげくさいの〜。」
 「え・・?」
父、顔が青くなる。
 「・・本当だ・・。」
父は走って、キッチンへ向かう。
鍋から黒い湯気がでている。
 「うわわっ!」
父は急いで、火を止める。
三人は、おそるおそる鍋を覗く。
 「あ〜、またこがしてるの・・」
 「・・・。」
 「でも、まんなかダイジョウブなの!!」
 「ごめんね・・料理下手で・・。」
 「おなかはいれば、なにもいっしょなの!」
青葉と菫は、走ってお皿を取りにいく。
 「おなかへった!はやくたべよう〜!」



『かあちゃんへ。
かあちゃん、ゲンキですか?
ぼくもとうちゃんとすみれはゲンキです!
とうちゃんが、しっかりしてないから、かあちゃんもさぞかしシンパイしてるでしょう?ダイジョウブです。
ぼくがしっかりしてるから、あんしんしてください!
スミレのめんどうもちゃんとみてます!』

その青葉の思いをのせた紙ひこうきは、どこまでも高く、飛んで行く。

          −−−第一章完ーーーーー


第一章あとがき
第一章やっと終わりました〜(^−^)
まだまだこのストーリー書き続けるつもりです!
てか、すみません!こんな小説で、掲示板の場所をとってしまって(ー、ー;)
いきなりですが・・暑いですね〜(ホントいきなりだ〜w)
今年、ってか、農高はいってから、凄く焼けて、皮もべろべろに抜けました〜!すごいのが、学校の社会の授業のとき、皮を軽くむいてたら(おい)約5cmぐらい、皮がむけました!(長ッ)
友人に見せようと思いましたが・・きっと引かれるだろうな〜っと思ってやめましたw
きっと、ここを読んだ人、私の事ひいたな〜!あははっ〜です!


管理人の戯言

ASKさんの小説でした。
う〜む、いいよねぇ・・・ふんわりとした文章って。
僕が同じ人物を使ったとしても・・・
こういうふうにはなるまいw
僕が書いちゃうと・・・・
さておき
ASKさんには感謝です。
ありがとうなのです。