10月?日  限りなくローカル線





電車は好い。愛好家がいるのもわかる。
窓の景色が場所によって、時間によって、そして季節によって変わって行く様がなんとも趣ぶかい。
地下鉄は地下鉄でまたロマンがある。
なんといっても、我々は地下を難なく闊歩できるという恩恵をこうむっているのだ。

ところで拙者が好むのはバリバリのローカル線。
場所はどこでもいい。条件としては2、3両しかないこと。
出来れば単線が趣があって好い。座席は当然ボックスシート。

印象に残っているのは確か福知山から天橋立方面まで伸びている「北近畿タンゴ鉄道」。
モノレールさながら、山間を渡り歩くように走って行く。
拙者の記憶では殆ど高架を走っていたような気がする。
京都太秦から出かけて、その日のうちに戻ってくるには、朝6時前の山陰本線に駆け込まなければならない。
まだ暗い京の街を急ぎ足で通り過ぎて行った。

紅葉に覆い尽くされた山肌、冬に向けての菜っ葉類の栽培をしている畑
そして萱葺き屋根の平屋の軒先につるされた干し柿。
当時気に入っていた曲を聴きながら、天橋立にひとりで向かった。

何をしに行くわけでもない、そんなときに鉄道は何も言わず旅の友になってくれる。
そんな気がする。

さてさて、そのほかに乗ったローカル線といえば
会津鉄道、山梨県富士急行線、釧路湿原駅を通る線(名前は失念したが、夏の間だけこの駅に止まる)。
こういうローカル線では、車掌殿の横に居座って
大きなフロントガラスを適度なスピードで通りすぎて行く花や空、鳥たちを見るのが何よりの楽しみである。
また、切符を料金箱に入れて降りて行く、という昔ながらのスタイルがなつかしい。

おっと、「ローカル線」と言っても東京にだってある。
拙者が好きなのは東武亀戸線(東武曳舟⇔亀戸)と世田谷線(三軒茶屋⇔下高井戸?)、
それから東京ではないが秩父鉄道といったところか。
なかでも世田谷線のあの木の温かみと、沿線の静けさは本当にいとおしい。
拙者がまだ技術屋を営んでいた頃、その近辺を取材して歩いたが
近頃ではめっきり足が遠のいてしまった。

そういえば、ローカル線=ボックスシートと述べたが、さらに=角度90°と続く。
JR中央本線の緩行列車よ、あれはどうにかならぬものか?
腰の弱くなった拙者にはなかなかつらい。
他にも同じ思いを抱いている方が多いことだろう。





かといって中途半端なリクライニングも疲れる。
現在のところ、最も快適なリクライニングは東海道新幹線「のぞみ」のグリーン車についている・・・・
失礼、そのようなことは言うまでもなかった。

そういえば遠出する機会も減っているが、連れ合いにヒマができたら
北陸に冬景色を楽しみに行こうと考えている今日この頃である。

夢想に耽り、本日閉店。



兎耳堂