冬合宿


   2000年 MC 冬合宿

<山域>
   北アルプス 白馬岳〜唐松岳 縦走

<期間>
   1999年12月30日〜2000年1月4日(予備日含む)

<参加者>
   栄(ボス)、鈴木、野村、大野、東と門脇の男4、女2

<予定>
   12/30 栂池スキー場〜白馬大池
   12/31 白馬大池〜天狗平
    1/1  天狗平〜唐松岳頂上山荘
    1/2  唐松岳頂上山荘〜八方尾根
          門脇のみスノーボードで滑降予定
    1/3,4 予備日


<12/29>
大阪駅集合

鉾石さん、比嘉君が見送りに来てくれる。比嘉君はビーコン、ショベル、スノーシュー、
酒のあてをもって、鉾石さんも梅酒に栗羊羹のデカイやつを持ってきてくれていた。
いつも差し入れを戴き、ありがたい、ありがたい。しかし、鉾やんの差し入れはいつも
重たいものが多いような気がするのは俺だけか…。
まあ、鈴木のザックにでも忍ばせておこう!


<12/30>
栂池スキー場〜白馬大池 天気:はれ

スキーヤー、ボーダーが車の中でグースカしているのを横目にパッキング、おかげで
一番にゴンドラに乗る事ができる。白馬岳が朝日に染まり気分が盛り上がってきた。
(俺だけ)

ゴンドラを降り、ビーコンの準備をして、さあ出発というのにボスがいない?クソに行って
いるらしい。下でいっとけよ、と心で思いつつ、ボスまち。

スキー場から成城大ヒュッテまでは快適なハイクアップ。ヒュッテでワカンとスノーシューを
履き、天狗原に向かって歩き出す。俺は今回はじめてのスノーシュー、足も沈まへんし、
なかなかえぇ感じやんと思っていたら、他のひとのワカンもあまり沈んでない様子、雪が
締まっているせいか。スノーシュー効果なし、ちょっと残念。
ボスは比嘉君のスノーシューを履き、慣れなくて歩きにくいらしい。

春山状態の天狗原でちょっと一息。ボスが遅れ気味。スノーシューが慣れなくて…と言って
いたが、それより酒の飲みすぎで大きくなったお腹の子を引込めたほうが。

天狗原から安定した雪面を乗鞍岳へ、乗鞍岳から白馬大池間をスノーボードで滑ろうと
思っていたが、西面は風で雪が飛ばされ滑れない。少しだけ雪のある斜面があったので
滑ろうとしたが、ザックが重たくて滑れない、こけると起きるのも大変なので、あきらめて
トボトボと歩き出す。

時間は早いが予定どおり今日はここまでにして、早々テントを張る。

テントの中で水を作っているときに、東が用足しに行くと言う、ボスの前を通り難そうにして
いると、ボスの”飛べ!”という声に、ほんまに飛びやがった.コッヘルはひっくり返るは、
水はこぼれるは、何を考えとんのか…
東、おそるべし!


<12/31>
白馬大池〜白馬岳〜杓子沢のコル 天気:はれ、稜線若干風強し
6時起き、8時出発 ゆっくりめ

雷鳥坂に出るといきなりボードが風にあおられ、少しひるむ。
小蓮華山、三国境と歩を進める、雪倉岳、杓子岳、白馬岳とよく見える。

白馬岳で写真を撮り、白馬山荘の前で一服、歩くペースがちょっととろい。丸山をまわって
杓子岳をトラバース、雪面も全く問題無し。杓子沢コルに着いたころには、お姉様方もお疲れ
のご様子。しかも雪洞が!天狗平までの予定であるが、立派な雪洞が”いらっしゃい”と
言っているのでもぐり込むことにする。

雪洞の中で、東は紅白と2000年問題で自分の腕時計がちゃんと機能するのかどうか、
心配らしい。
東、オソルベシ!


<1/1>
杓子沢のコル〜天狗の頭 天気:くもり、めっちゃ強風
6時起き、8時出発 またもやゆっくりめ

ミレニアムな初日の出は拝めず、体を30度に傾け、歩き出す。背中のボードをほって行こうか
と思うほどの強風、しかもガスがでてルートがわかり難く、時間がかかる。きのうまで、まあまあ
調子よく歩いていた東がマンガン電池状態。悪天候で急にペースダウンしはじめた。

気が付けば、天狗ノ頭に来ていた。これから先に行くと今夜の宿が無くなるので天狗ノ頭の下、
まゆ毛のあたりに雪洞を掘ることにした。しかし、掘り出すとすぐに氷が出てきて、なかなか
掘れない、横に3つ穴をほり、これをつなげて横長の雪洞をなんとか完成?
水が滴り落ちないように天井を滑らかにする。ところが、大野と野村は天井をガタガタにしている。
俺は”雪洞はアートやァ”と訳のわからん事を言いながら天井を滑らかにするが、あまりに
ガタガタなんで途中であきらめる。

雪洞の中で、東は用足しが近いから出口で寝ると言っておきながら、端はさむい、マットが無い
からもっと詰めろと言いやがる。みんな折りたたみ傘状態なんじゃい!
東、恐るべし!


<1/2>
天狗の頭〜不帰I、II、III峰〜III峰と唐松岳間の稜線
天気:はれ、若干風強し6時起き、8時出発 やっぱりゆっくりめ

朝一番の仕事を済ますころ太陽が昇り始めた。剣、立山から槍ヶ岳までよく見える。大野に
”八つ峰はやっぱりかっこえーなァ”と言うと大野も”そうですね”という、その後”ところで
八つ峰ってどれですか?”うー…、今年もやっぱり大野は”あわせの大野”か!

天狗の大くだりを俺と大野は快適に下るが後がついてこない。雪の上を歩きなれていない
東がヘッピリ腰で苦労しながら降りてきている。

不帰II峰手前のピナクルをロープを出して登っている先行パーティーが見える。最低鞍部
でロープの用意をし、I峰を登り、II峰へ着くがまだ先行パーティーがいる。かなり苦労して
いる。先行4人パーティーは2組に別れて登っている。それぞれのセカンドを見送った後、
俺が登りだすと先行はルートを二つに分かれて登っていた。一組はピナクルの左側をトラ
バースしているが、足元の雪面と壁の間で、なななんと幅50cm、長さ2.5mぐらいのきき!
亀裂が入っている、先行のセカンドはこの亀裂部分でもたもたしていた。もう一方は亀裂の
手前で雪壁を直上しているが、この5mほどの雪壁の上には1mぐらいのせせ!雪庇が張
りだし、これを右上して雪庇をくずし抜けている。こちらのセカンドの方が早くぬけれそうなの
で、俺も直上するが結構悪い。雪庇を越えるとピナクルに残置シュリンゲがあり、補強をして
ロープをフィックス。

続いて大野が登ってくる、東が登って…登って来れない。東がもたついている間に、野村、ボス
が登ってくる。雪壁を登った事のない東はプルージックにつかまり、雪をかき落とし、もがいて
いるらしい。それを見たボスは半分切れながら、”そんなもん雪落としたら登れるか!降りて来い”
と言い、自分が登ろうとするがやっぱり雪がないので登れない。ここでボスは75%キレル!

野村に鈴木をビレイさせ、そのまま鈴木がリード、亀裂を飛び越えトラバースし、次のビレイ
ポイントでロープをフィックス。

続いて東がトラバースするが、亀裂を飛び越える事ができずもたもたしていた。ボスが”なに
しとんねん!はよとばんか!”と言っている。ボス90%キレル!テントの中では”飛べ!”と言われ、
思いっきり飛べたが、今は飛べないらしい。そうこうしている内に東が亀裂の中へ、あーアー…、
仕方がないのでボスが東を引き上げに行くが、ボスも引き込まれ、危うく亀裂の中にはまりそうに
なったが、なんとか亀裂の反対側に行くことができた。
がしかし、ボスとうとう爆発!!

東を引き上げた後、次の野村は亀裂の手前からトラバースさせる事にしたが、この部分の雪質が
不安定で、野村、雪地獄の刑。悪戦苦闘の後、全員無事に終了点へ。

その後も東、野村のことを考え、数ピッチ、ロープをフィックスし、Ⅱ峰へ
(アイゼンでⅣ級が登れれば、ロープはいらないでしょう)

15年ほど前にここを登った元MC現YCC(元に戻った)中村さん談ではこの部分に”きのこ雪”
が付き、かなり苦労したそうである。

III峰を回り込み、唐松岳頂上山荘が見えているが、東がかなり疲れていることと、明日は下山
のみということで、ここに宿を設営。雪洞を掘るほどの雪がない為テントにする。

テントの中で、きょう何事もなかった様に、飯を食い、茶を飲み、下に降りたら名木山ヒュッテのパン?
を買いに行く話しをしている。
ひぃひがし・・・


<1/3>
III峰と唐松岳間の稜線〜唐松岳〜八方尾根スキー場 天気:ガス、半端じゃない強風
テントを押し潰そうとする雪の重みで目がさめる 8時出発

テントを掘りだし、まさに厳冬期という天候のなか、出発。天気が良ければ全く問題ないであろう
唐松岳の登り下りを、ルートが見えない最悪の天候のなか、瞼に氷を付けガスの切れ目にルート
を確認しつつ進む。

唐松岳頂上山荘へつき、冬期小屋があれば避難しようと思っていたが無い様なので、早々に出発。

先の見えないまま、八方尾根への下り口と思われる所に足を踏み入れるとボスボスとはまるので、
慌てて戻る。”オーオーこんな危なそうなところルートちゃうで”と思い、他にルートを探すが見つか
らない。小屋の裏手に回り、冬期小屋を探すがやっぱりない!鈴木が先ほどのところを再度見に
行くとルートが見えるというので上のほうから見に行くと、下に残置のロープが見える。ロープを直
まきにしてフカフカ雪に入るとすぐに雪は安定しており、下り口の尾根に取りつけた。

八方尾根においてもガスと強風に悩まされながら降りていく。天気が良ければ、スノーボードで滑る
はずが、今は立ち止まり、目をこらし、ピッケルで雪面を確認し、じりじりと歩く。
丸山の手前あたりでアイゼンからスノーシューに履き変えた。斜面に対してまっすぐ歩くとスノーシュー
が滑るので、結構おもろい!皆の心配をよそに、一人はしゃいで降りる。

下ノ樺手前でガスのためルートがわからず、地図と磁石でなんとなくあたりを付けながら進む。
徐々に雪が深くなり股までくるのでワカンを履いた大野にトップを行ってもらうが、ワカンだと雪が
腰までくるので、大野はごそごそもがくだけ。スノーシュー効果、絶大!しかし、俺がラッセル…クッソー。

ひたすら歩く。
目印を見つけるとダダダアーと歩き次の目印をじいーっと探す。次の目印を探すが見つからないので、
またジリジリあるく。目印を見つけるとウリャーーと歩き次の目印を…。 この繰り返し。振り返ると後ろ
には大野、少し間をおいて鈴木、野村がくるが、東とボスが来ない。しばらくすると、闇の中からウァオーッ!
ゾンビ!と思いきや、マンガン電池からゾンビに変身した東の姿が見えた。ゾンビはボスに任して、先に
進む。しばらくすると、闇の中からウァオーッ!スキー場の音が聞こえる。いつもなら、”もう降りるんか”と
思うが、今回は”やっと降りれた”と思っていた。

八方の小屋に野村の知り合いが居ると言うので、小屋によって飯を食う事にする。小屋に着いたのが
確か3時ごろだったと思うが、もう飯は出せないと言われる。朝からなにも食っていない浪花のイエティ
は”野村”という奥の手を出すのであった。そう、野村の知り合いにお願いをすると、その方は機嫌良く
引き受けて下さり、更に頼んだカレーは大盛り!イヤッホー!、ルーはおかわりOK!イエ イ!
更にさらに、コーヒーまでもご馳走になり、ほんまにおおきに!

涙なくては話せないこの出来事で2000年のMC冬合宿は幕を閉じた。

小屋をあとに、みんなはリフト、俺はボード、ザックはボスへ。
”おもいっきりすべったる”と思っていたが、結構、体にガタがきていて、思うように滑れない、しかも
スキー場もガスっている。滑ってんのか?転がってんのか?ようわからん間に、下についてしまう。


天候、雪質が安定していれば全く問題がないコースであるが、一度、荒れると結構キツイものがある
(特にスノーボードを担ぐと)、やはり冬山、悪天の中での行動力、ルートファインディングがものをいう。
今回、雪質はあまり問題にはならなかったが1/1、3と天候が荒れたため、皆それなりの手応え、
充実感を持つ事ができたように思う。


おまけ
ケンタッキーの中で、車を取りに行ったボス、鈴木を待っていた。ふと気づくと東がいない。
しばらくして、パン?の入った袋を手にして帰ってきた。こここいつ。
東の”たくましさ”を確認させられた山行やったかも…。

おまけのおわび
東が手にしていた物はパンではなかったらしい。東さんごめんなさい。
おこられてしまいました。
東はやっぱり”たくましい”ということを認識しました…。