【日程】 :2003年8月10日(日) 【天候】 :晴れ 【場所】 :S川 【同行者】 :おかさん、へっち(釣行後) 【備考】 :オレンジ色の台詞=おかさん、水色=タクです 「ヘラ鮒の夜釣りしてたらな、急に魚篭の中の鮒が怯えて暴れるんよ。」 「ふんふん」 「大概そんな時はビワコオオナマズが鮒に吊られて寄って来とるんですわ。」 「えっ、そんな近くにですか!」 「そやで、あいつら夜行性やし、結構大胆なんやで。ほんでな、活性高い日はな、魚篭ごと『ぐゎぼーん!』 って喰らいついてくるんよ、そりゃもうビックリもんやで!」 「はー…」 「そんななってしもたらもう、鮒釣りにはなれへんわね、もう竿たたんで帰るしかないよ。」 「はー…そうでしょうね」 「後ね、立ち込んで釣りしとったら、アユが気絶したみたいに痙攣しながら流れてくるんよ、ボク持って帰って食べましたわ、 美味しかったよ(笑)」 「なんでまた流れてくるんでしょ?」 「ビワコオオナマズに襲われたんやろね。中にはお腹を綺麗に抉り取られたやつも流れてくるもん」 「はー…」 この日は、S川にビワコオオナマズを釣りに来ていた。予めS川マスターのおかさんとアポが取れたので、 少し早めに釣りを始め、休憩時に色々とビワコオオナマズにまつわるエピソードを聞かせてもらっていた。 おかさんは、S川のビワコオオナマズに関しては日本で最も経験値、またレベルが高い方であると思っている。 なので、最初は緊張していたが、気さくな方なので、いつの間にやら気楽に釣りを楽しませていただいた。 しかし、おかさん曰く「まだ時合いでは無い」とのことなので、少しキャストしては 長い休憩を取っては、釣り談議を繰り返していた。 「時々釣れたヘラ鮒襲うこともあるんよ、途中から『ズシーン!』って重うなってな、 『なんじゃこりゃ〜』ってなるけんど、まあ、ヘラの道具では取れんわね。大概糸が切れるか、 竿折られるかですわ。」 「はーそうなんですか…ところで、この辺って琵琶湖の真下でしょ、バスとかは流れて来ないんでしょうかね?」 「流れてきても…ビワコオオナマズの餌になってしもてると思いますよ。40cmあっても50cmあっても、 ちょうど良いサイズの餌やもんね、オオナマズにしたら。」 「うへーもったいない。バスまで喰ってしまうんですか?」 「そやで、間違いなくこの辺の食物連鎖の頂点に立っとるからね。多分鳥とかも喰ってるんとちがうかな」 「とっ…鳥も食べますか!」(そういや、釣りキチ三平でもビワコオオナマズにアヒル(子供)が食べられてたな) おそらくこの時の私の顔は、ぽかーんと口を開けて、思考が半分停止状態であったことであろう。 日本の片隅でこんなワイルドな経験をしている方が居るとはまことにもって信じ難かった。しかも、 現に自分が立っている場所で、そのような事象が時折行われているとは…まさに大自然の脅威である。 とまあ、こんな感じで釣りに来てるのだか、くっちゃべりにきてるのだか分からない状態であった。 でも、今日は日頃のストレスから逃れたくて、こういう釣りを求めていたのだろう、楽しい時が過ぎていく。 「さて、そろそろ最初の時合いが来るころですわ。ほら、あの辺にベイトフィッシュが溜まってきたでしょ。 ボクらが丘に上がった途端に入ってきたみたいですな。」 「あれを喰いに来るんですか?」 「違う違う、あれを喰いにきたケタバスやらもっと大きいやつらを喰いに来るんですわ。」 しゃべりながら、再び立ち込んで行く。まだ見ぬビワコオオナマズを今日こそバッチリ釣ってやるんだ…と 意気込んでいたら、 「タクさん、この時間帯にルアーを正解のコースを通せたら、かなりの確立でベイトフィッシュがスレでかかってきますわ。 そんな時は何べんも同じとこ引くようにしたら、ガツンと来ますよ。」 と、アドバイスをいただいた。 日が傾き始めた頃、黙々とキャストを繰り返す。最初は早い流れに戸惑って、まともにプラグを操作できなかったが、 重めのバイブレーションや、リップが短めのフローティングミノーなら、なんとか狙ったコースを通せるようになって きた。とは言うものの、既に3〜4個のプラグをロストしていた…。 「ピチョッ!」流れの中からバイブレーションプラグがもんどりうつように飛び出してきた。 また草でもかけてバランスを崩したのであろうか。回収してみたら… 「お、おかさ〜ん、ベイトフィッシュがスレでかかりました〜!」と声をかける。 「どれどれ…うーん、小さいな。もうちょっと大きいヤツがかかってきたら間違いないんやけどね。」 「そうなんですか?」 「まあ、同じとこ、何回も攻めてみて。」 「は〜い!」 期待に胸を膨らませながら、キャストを繰り返す。と、またベイトフィッシュがスレでかかってきた。 と、まただ。かなり密集しているらしい。いよいよ緊張してくる。 そこから30分程の間、数投に一度の割合でベイトフィッシュがかかってきた。期待しながらもなかなか釣れて来ない状況に 少し緊張が解れてあくびも出始めた頃、明らかにスレとは異なる感触が! ロッドティップが一瞬だけ絞り込まれたのだが、次の瞬間バイブレーションプラグが勢い良く飛び出してきた。 フックアップし損ねてしまった…。 「おかさん今来てた、来てたよ!でも乗りませんでしたわ。くやしいい〜っ!」 「来ましたか、僕もさっき何やよう分からんのが一回来たけどすぐに外れてしもたんですわ。」 その後はついにアタリも無く、ベイトフィッシュの群れも忽然と姿を消し、納竿となった。 ネット上で長年の知り合いである「へっち」がこちらに向かっているとのことだからだ。 真っ暗になったS川を藪漕ぎし、車を停めている場所まで戻った。 「一人で藪漕ぎしてて不意に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト※』を思い出して 帰りたくなることがあるんですよ。タクさん、観ました?結構面白いですよ」 「ハアハア…観てないけど…ハアハア…観ないようにしておきます…怖くなったら釣りに行けんでしょ…ゼエゼエ…。」 「ハハハハ、それもそうやな、でも面白いで、アレ。怖いけど…。」 こっちは息は切れで汗だくなのに、おかさんはけろっとしている。あらためて日頃の運動不足を痛感させられる。 フラフラになりながら着替えを済ませ、ジュースを飲んで一息ついていたら、へっちが到着。 挨拶もそこそこに釣り談義へ…。 皆でマンズのワンマイナスの動きを絶賛し、ショックリーダーの組み合わせの話の後、へっちの使い古された…というか酷使され つくしたビッグバドを見せられ唖然となり、各々のロッドを手にBON用のロッド談義をした後、これまたへっちのローリング マークが溝状に彫られたオリザラを見せられ絶句させられる。さらにへっちの宝物であるハードワーム全種類収集に苦労した話…etcetc。 釣り談義はあさっての方向に飛んでは本題に戻り、再びあさっての方向にそれて行き、また戻る…といった感じで尽きることがない。 あっという間に2時間が経過し、ここで渋々解散となった。 時間が許せばもっと話ていたかったし、ウチのメンバーも交ぜてあげたかった。こんな極上の釣り談義、そうそうできるものでは ない。世の中には自分で体験しなければ分かり得ないこともあるし、語れないことがある。しかし、この日会った方々との会話は、 実際に体験こそできないものの、十分にその臨場感は伝わってきた。彼らの信念にも大いに共感でき、良い時間を共有させていただいたと 思っている。 また訪れて言葉を交えなければ…しみじみ思いながら、この日開通した京滋バイパス⇒名神高速をドライブし、快適な帰路を満喫した。
※ブレア・ウィッチ・プロジェクト…おっかない洋物映画で、画賛否両論が激しいようだ。
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