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│渡良瀬にこにこサークル通信          │2001. 6.21 発行  
│                       │                  
│                       │文責 山中伸之    
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文学作品の分かり難さについて考える①

 前回の例会時に、腕研で取り上げる作品についての議論が若干なされたが、
その折りに、
┌─────────────────────────────────┐
│作品の分かり難さ                         │
└─────────────────────────────────┘
ということが話題になった。
 そこで、作品が分かりにくいという印象はどこから生じてくるのかについて
考えてみたい。
 例会の場では、光村3年「きつつきの商売」の方が光村5年「新しい友達」
よりも分かり難いという意見が出された。
 しかし、これは不思議な話である。
 一般的に教育内容、学習内容は易から難へと系統的に配列されているもので
ある。だから、3年生よりは5年生の方が難しくなっているのが普通である。
ところが、3年生の教材の方が5年生の教材よりも難しいと言うのである。
 こういうことがどうして起こるのであろうか。
 二つの教材を簡単に比較してみよう。
┌─────┬─────────────┬─────────────┐
│     │きつつきの商売      │新しい友達        │
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│分量   │1907文字       │3185文字(約1.67倍)│
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│字の大きさ│大            │小            │
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│登場人物 │きつつき,野うさぎ,野ねずみ│小学5年生        │
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│場所   │森の中          │教室、家         │
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│時代   │とくに記述なし      │現代(に近い)      │
├─────┼─────────────┼─────────────┤
│視点   │三人称客観視点      │一人称視点        │
└─────┴─────────────┴─────────────┘
となる。
 このうち、「きつつきの商売」の方が「新しい友達」よりも難しいという印
象を持たせる項目はどれか。
 結論から言えば、ほとんどすべてである。
 まず分量である。分量が多いということは多くの内容を述べることができる
ということである。少ない情報で判断するよりも、多くの情報で判断した方が
一般的には分かり易い。分量が多ければそれだけ情報が多いわけであるから、
分かり難い部分が減ってくるはずである。だから「新しい友達」の方が分かり
易いと、単純に考えることはできる。もっとも、分量は伝達する内容との相関
関係で決まるものであるから、事はそれほど単純というわけではない。
 次に視点である。「新しい友達」の方は一人称視点であるから、主人公の心
理が直接描かれる。これに対して「きつつきの商売」の方は三人称客観視点で
あるから、登場人物の心理が直接描かれることはない。この点が分かり難さと
おおいに関係ありそうである。つまり「きつつきの商売」の方はポーカーフェ
イスであるのに対し、「新しい友達」の方は表情たっぷりである。どちらが分
かり難いという印象を与えるかは明白であろう。もっとも「心理が直接描かれ
る」=「分かり易い」というような単純な構図は成立しない。それは描かれて
いる心理によって左右される。また、その逆の「心理が直接描かれていない」
=「分かり難い」という構図も成立しない。心理が直接描かれることはむしろ
少ないし、心理は描写によって語られるのが一般的だからである。
 最後に、「時、所、人」の設定である。実は、「きつつきの商売」の方が分