稲葉小学校学校課題研究通信



 

2002. 2.18 発行
第 74号
文責 山中

 
 
研究発表会見聞録 6
 
 まず、おばあさん、おじいさん、桃の掲示物を黒板に貼って、それぞれの名
前を英語で言いながら紹介をした。次に、おばあさんと桃を動かして、桃太郎
の話を英語で進めた。この間、子どもたちは先生の話をよく聞いているかと言
うと、そうではない。よそ見をしている子もいれば、自分のしゃべりたいこと
をずっとしゃべっている子もいる。そういう子をなだめすかしながら授業を進
めているのだ。
 ここまで来て、先生が桃太郎の歌を歌った。先生自作の英語の歌である。桃
太郎が桃から生まれるところまでを歌った歌だった。歌が始まると子どもたち
は、自分の知っている歌だから一気に注目する。しかし、子どもたちが知って
いるのは最初の「もーもたろさん、ももたろさん」だけで、先生が歌っている
のは後は英語だからさっぱり分からないのである。この授業がすごいところは
、この歌を中心にした授業の最初の1時間だということである。つまり、掘り
起こしの最も大変な部分を公開している。子どもが歌を覚えて楽しく歌って紙
芝居でもできる状態になっているのなら、見せ場も容易に作れるだろう。しか
し、子どもたちは歌の一部分も知らず、今日初めて聞かされている。この後、
先生のいろんな教授技術が次々と
登場してくるのだが、英語活動を離れて、私はこの先生の授業のすごさに圧倒
されっぱなしだった。
 歌の1番をまず歌った。子どもたちも一緒に歌った。一部分しか歌えない。
それも一部の子しか歌わない。そのままで、先生は話を続けていった。分から
ないから子どもたちの集中力がとぎれそうになると、日本語の桃太郎を歌った
り、名前を呼んで注意を促したりしながら進めていった。
 大きな紙袋から、突然、桃太郎の人形が登場する。先生の知り合いの方に作
ってもらったという手作りの人形である。中に腕を入れて、人形の両手が動く
ようにできている。子どもたちは大喜びである。私も思わず笑ってしまった。
 この人形でひとしきり子どもたちと楽しくやりとりをしたあと、犬のお面を
取り出す。これを見ただけで、子ども達は何をするのかすぐに理解し、次々に
手を挙げる。犬を英語で何と言うか練習したあと、先生は一人の子を指名した
。そして、前に出させ桃太郎と会話をさせた。「一つください」という英語を
教えながらの会話である。
 同様に、キジと猿についても行い、犬、キジ、猿がそろったところで、歌の
2番が始まるのである。どのような英語の歌かよく分からなかったので、後で
指導案を見てもらうとして、歌の内容は、犬と猿とキジが桃太郎に「一つくだ
さい」と言うというところまでである。この歌を何度も歌いながら、桃太郎と
犬とキジと猿は子どもたちの回りをぐるっと一周する。先生は歌を何度も何度
も繰り返し歌いながら、子どもたちにも歌わせ、一緒に歩く。このころになる
と、英語版の桃太郎の歌も、少しずつ歌えるようになってくる。      
 こうなれば、次に何のお面が登場するかを子ども
たちは知っている。先生が
何も言わないうちから、挙手の嵐である。
 鬼のお面を取りだした先生は、お面同士で「つつく」「ひっかく」「かみつ
く」動作をさせながら、それぞれの英語表現を教えていった。子どもたちにも
言わせ、何回か練習したところで、お面をかぶる子どもを選ぶ。
 しかし、ここで先生が選んだ子は手を挙げている子ではなく、授業の最初か
ら自分の思ったことをずっと話し続けている女の子だった。先生の話をほとん
ど聞かずにずっとしゃべり続けている。配慮の必要な子であろう。その子を指
名し、子どもたちに「今日は○○ちゃんがとっても頑張っているから、今日は
○○ちゃんにやってもらおうね。みんなには後でやらせてあげるからね。」と
言って、その子をしっかりと抱きしめて鬼のお面をかぶらせた。そして、鬼の