青年期におけるニキビについて
—中高校生の実態と意識—
加納 利哉
1 はじめに
ニキビとは、皮脂が何らかの原因で詰まってしまい、その詰まっ
た脂をえさにする、ニキビ桿菌をはじめとした、さまざまな細菌が
悪さをはじめて、肌に炎症を起こす一連の過程のことである。
ニキビは、いくつかの段階を経て、じわじわと進行していくもの
である。通常、肌に小さなニキビのもとがポツンとできてから本
格的にニキビがひどくなるまでに約3ヶ月かかる。よって、早期
に治療を行えば、痕も残らず、きれいに治せるはずである。
そのためには、中高校生の意識と実態を把握した上で、悪い
ところを改善し、予防法によって再度ニキビができないようにす
ることが大切である。
そこでニキビについての調査を行い、実態と予防法について
いくつかの所見が得られたので報告する。
2 研究方法
1)
調査方法
質問紙による実態と意識調査
2) 調査対象
中等部3年生84名、高等部1年生93名、2年生91名
3)
実施年月日
平成12年7月19日〜22日
4)
調査内容の概要
・ニキビ発生の実態について
・ニキビの原因について
・ニキビのできやすい場所
・ニキビの予防法について
・洗顔との関連について
・ニキビに対する意識とイメージについて
5)
回収率
100%
3 結果と考察
1)
ニキビ発生の実態について
ニキビができたことがあるかに対して、学年によってほとんど差
が無く、94%の者が「できたことがある」とし、「できたことがな
い」という者は6%にすぎなかった。
できたことのない者はその理由として「遺伝や体質的にできない」
「洗顔を徹底している」「アトピー性皮膚炎により顔に脂が少ない」
などがあげられた。
つまり、中高校生のほとんどがニキビの発生を経験していること
により、この時期においてニキビの予防と対策は重要な課題の一
つであり、その原因と正しい予防法を理解し、実践することは意義
の大きいことと考えられる。
2)
ニキビの原因について
ニキビのできる原因としては、「不規則な生活(37%)」、「食
事(34%)」、「思春期だから(33%)」、「洗顔の不徹底(33%)」、
「体質(29%)」、「睡眠不足(26%)」の順にあげられた。
ニキビの原因は、皮脂が何らかの原因で詰まってしまい、その詰
まった脂にニキビ桿菌をはじめとした、さまざまな菌が繁殖し、肌
に炎症を起こすこととされ、何らかの原因こそが、不規則な生活、
食事、洗顔の不徹底などである。また、ニキビは12〜20歳の青少年
期に多く発生するという特徴があり、新陳代謝の旺盛なこの時期に
集中するわけである。
3)
ニキビの発生場所について
ニキビができた場所については、「おでこ(59%)」、「頬(39%)」、
「鼻(24%)」の順であった。
おでこについては、髪の毛がその原因となる場合が多い。シャンプ
ーやリンスの残液が影響したり、髪がかぶさり洗顔が不十分になった
りするためではないかと思われる。また、発汗が激しい頭部に近いた
め不潔になりやすい場所でもあることがその原因と考えられる。
頬や鼻はよく手で触る部分であり、手についた汚れや細菌が付着し
やすいため、洗顔とともに手を清潔に保つことも必要と思われる。
その他、頭皮、背中、首などにも発生する例もあげられ、上半身す
べてに発生する可能性があることがわかった。
4)ニキビに対する意識とイメージについて
ニキビができたことのある者に、発生時にどのように思ったかを
たずねたところ、「困ってしまった」が36%で、「別に気にならな
かった」(30%)、「悲しかった」(29%)の順であった。
日常においてニキビの予防策をとっている、いないにかかわらず、
はじめてのニキビ発生時には、困惑することがあり、事前のニキビ
に対する知識を得ておく必要も大切であろう。たかがニキビと思わ
れるが、発生がストレスとなってイライラしたり腹が立ったりする
と答えたものもあり、学校でのニキビ指導の時間を設定することも
一案であろう。
次にニキビに対するイメージとして「脂性」が最も多く、「不潔」、
「青春の象徴」の順であった。「不潔」については学年が下がるに
つれて、多い傾向にあり,中3と高2では26%と13%と倍の値を示
した。これはニキビに慣れているかいないかの差ではないかと思わ
れる。ニキビの発生が中2頃からということで初期においては、ニ
キビに対する不潔感を拭い去ることができないが、高2頃になると、
ニキビは、単に不潔にしているから発生するというメカニズムでは
ないことが理解され、ある意味での開き直りともとれる、青春の象
徴とか、若者の特権、ナイスガイなどのイメージが出てくると考え
られる。
4 結論
思春期におけるニキビの発生状況とニキビに対する予防法を明ら
かにするために中・高校生を対象にニキビについての意識と実態を
調査したところ、以下のようないくつかの所見が得られた。
1)
ニキビ発生の実態として学年によってほとんど差が無く、94%
の者が「できたことがある」とし、「できたことがない」という者
は6%にすぎなかった。できたことのない者はその理由として「遺伝
や体質的にできない」「洗顔を徹底している」「アトピー性皮膚炎
により顔に脂が少ない」などがあげられた。
2) ニキビの原因としては、「不規則な生活(37%)」、「食事
(34%)」、「思春期だから(33%)」、「洗顔の不徹底(33%)」、
「体質(29%)」、「睡眠不足(26%)」の順にあげられた。
3)
ニキビの発生場所は、「おでこ(59%)」、「頬(39%)」、
「鼻(24%)」の順であった。おでこは、髪の毛が触れる部分であ
り、洗顔の不十分さやシャンプー・リンスの影響も考えられる。ま
た、頬や鼻はよく手で触る部分であり、手についた汚れや細菌が付
着しやすいため、洗顔とともに手を清潔に保つことも必要と思われ
る。
4)
ニキビの予防法としては、洗顔が圧倒的に多かった。市販の
洗顔剤や治療薬を使用しており効果や副作用など今後の研究が期待
される。
5)
ニキビと食事の関連性については、34%がその相関関係を認
めており、いわゆる「脂っこい食品」が敬遠されているようである。
豆製品、緑黄色野菜など一般的に健康によいとされる食材が、ニキ
ビ予防にも効果があるようだ。
6)
ニキビに対する意識とイメージは、はじめて発生したときに
「困ってしまった」としたものが最も多く、事前のニキビに対する
知識を得ておく必要も大切であろう。たかがニキビと思われるが、
発生がストレスとなってイライラしたり腹が立ったりすると答えた
ものもあり、学校でのニキビ指導の時間を設定することも一案であ
ろう。また、ニキビの対するイメージとして「脂性」が最も多く、
「不潔」、「青春の象徴」の順であった。「不潔」については学年
が下がるにつれて、多い傾向にあり、これはニキビに慣れているか
いないかの差ではないかと思われる。
ニキビの発生が初期においては、ニキビに対する不潔感を拭い去
ることができないが、高2頃になると、ニキビは、単に不潔にして
いるから発生するというメカニズムではないことが理解され、ある
意味での開き直りともとれる、青春の象徴とか、若者の特権、ナイ
スガイなどのイメージも出てくると考えられる。
5 おわりに
ニキビは、青年期に多く発生しやすい特性のある、皮膚病の一種
であり、予防と治療が必要である。誤った治療を行わない限り、痕
も残らずに加齢により治癒するものであるが、できなければ、それ
にこしたことはないのでニキビの原因や発生のメカニズムを知識と
して獲得し、予防と早期治療に努める必要があると考えられる。