目が覚めると闇だった。なんだかそれに飲み込まれそうで、思わず隣に眠る身体にしがみつく。
覚醒する気配。伸ばされる腕。撫でられる髪。
「………どうしたの?」
優しい、声。それだけで………ただ、それだけで安心する。
「………寒く、ない?」
あれから再び多香子のベッドに戻り、肩にすり寄りながらその声を聴く。多香子はそれにくすりと微笑った。
「なんか、おかしいこと言った?」
きょとんとした表情をした寛子の頬に、身を起こした多香子は軽く口づける。
「なんだよ〜〜〜」
むうっとした表情で、むくれる寛子に、多香子はくすくす笑いながら答える。
「それ、さっきも言った」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「そっか」
くすくす笑い合い、額をこつんとくっつけた。そのまま、じっと瞳を見つめあう。引き寄せられる様に唇を近づける。吐息が混ざるくらいまで近づくと、一瞬戸惑うように止まった。しかし、そのまま唇を押しつける。。
「………………」
唇が離れて、しばらく見つめ合う。
「………好きだよ」
甘い、囁き。どうにかなりそうなくらい。
指が頬に触れる。そっとなぞられる。ぞわぞわと背筋に何かが走る。--------でも、それはイヤな何かじゃなくって。
「寛子………」
指を伸ばして、その柔らかい頬に触れた。出会った時より、幾分幼さが抜けた頬。柔らかく細められた瞳。こんな表情、いつの間にするようになったのだろう?
こちらを見上げる瞳に、寛子はどうにかなりそうになる。………自分の心まで見透かされているような気がしてならない。
判ってる、お互いに。何を求めてるのか、何を欲しているのか。
「多香、ちゃん」
そんな目で、誘わないでよ。
「止まらなく、なるよ」
熱い吐息とともに、囁いた。--------お願いだから、拒んで欲しい。
だけど、それは出来なかった。--------怖いけど、だけど、寛子にだったら、構わない。
「寛子………」
多香子は甘く囁くと、寛子の細い首筋に腕を回した。そして、やんわりと引き寄せる。
「多香………ちゃん」
『いいの?』なんて野暮なことは訊かなかった。ただ、引き寄せられるまま、多香子の首筋に顔を埋める。
「………大好きだよ」
その言葉が、合図だった。