月と太陽

 

「昨日も思ったんだけど・・・・・・」

 明るい日の下、町の中央広場に辿り着いた3人は、小休止を取る。近くの露店で売られていた飲み物を片手に、ベンチに腰掛けたヒトエはぽつりと呟いた。

「ん?」

『何?』

 ヒロとタカが————ちなみにタカは中央に座っている。そうしtないと会話が不便なのだ————ヒトエの方を向く。ヒトエはコップに口をつけると、

「あの像って何なの?」

 ヒトエの言葉に、2人は視線を広場の中央にある少女の銅像に視線を向けた。確かに、そこにはけして小さくはない、だけどかなり古い印象を受ける銅像があった。戦いの最中なのか、その瞳は真っ直ぐ前を見据えている。きりりとした勁い瞳。整った顔立ち。————素人目にも、生命力を感じさせる像であった。

「・・・・・・う〜〜ん。あんま見たことないけど・・・・・・有名人なのかなぁ?」

 ヒロの言葉に、タカは不意にポンと手を打った。

「どしたの?」

『あれって勇者の像じゃないの?』

「えーーー?」

 残りの2人は同時に声を上げた。そして、ベンチから立ち上がり、その場へと向かった。まじまじと像を見上げる。

「う〜〜〜ん」

 ヒロは腕組みをしながら唸る。その隣で、タカも同じように銅像を見上げた。

『違うかなぁ?』

「————違うと思う」

 ぼそっとヒトエは告げた。妙に確信ある声に、ヒロとタカは同時に振り向く。

「どして?」

『何で?』

 ヒトエは像を指差した。それにつられて、2人も視線を戻す。

「剣が違う。ヒロちゃんの剣は『勇者の剣』でしょ?それとは全く違うもん」

「あ・・・・・・」

『言われて見れば』

 しかし、疑問が解決された訳ではない。結局、元の木阿弥である。

「う————ん」

 3人は頭を抱えた。そんな時、不意に背後から声がかかる。

「旅の方ですかの?」

「え・・・・・・?」

 振り返る3人の瞳に映ったのは、随分と小柄な老婆だった。にこにこと微笑んでいる。

「————その像の由来が気になるみたいですな?」

「・・・・・・ええ」

 素直にヒロは頷いた。老婆はくしゃりと微笑うと、

「知りたいなら、教えてさしあげましょう。————ちょっと長くなりますが、お時間はよろしいですかな?」

 ヒロとヒトエはその言葉にちらりと視線を交わす。

 こんな風に下らなく思える情報でも、知っておいたほうが良い。————今までの経験から得た知識である。

「ええ、構いません」

 ヒロの答えに、老婆は先程座っていたベンチを指差し、

「それでは、あそこに座るとしましょう」

 そう告げた。

 

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