Solitude


「結構、賑やかな街だね」
 検問を通り、一歩街へ踏み入れると、大通りはたくさんの人と道なりのたくさんの屋台。それらの光景が目に飛び込んで来て、思わずヒロは呟く。
「そだね〜〜〜〜」
 昔取った杵柄で、右手がうずうずするのか、口元に浮かぶ笑みを隠しながら、ヒトエは答えた。それをじろりと睨み付けると、
「ヒトエちゃん」
「————判ってるって」
 くすくす笑いながら、隣にいるタカに『ねー』と声をかける。
『うん』
 だけども、心配性な勇者は腕組みをする。
「————この分だと、宿、混んでるかなぁ」
「う〜〜〜〜〜ん」
 同じように腕組みをしながら、賢者も唸る。
「………………とりあえず、行ってみなきゃ始まらないでしょ?」
 心配性のA型と、変なところで神経質なO型の肩をぽん、と叩くとAB型の魔剣士はニッと微笑った。


「………あいすいません、何故、今週から街のフェスタが始まってますので」
「あ〜〜〜、いえ。すみませんでした」
 ぺこりと頭を下げると、ヒロはくるりと振り返ると、待っている仲間達に『ひょい』と肩を竦めてみせた。
「やっぱ、ダメか〜〜〜」
 短くなった前髪をがしがしとかき上げながら、エリは呟いた。それに、楽観的だったヒトエもため息をつく。
「これで、5件目だもんね」
 宿屋から出ると、とりあえず人通りが少ない路地に身を寄せ、ため息をつく。
 だからといって、野宿は避けたい。疲れ切った身体が、悲鳴をあげている。やっぱり、目の前に泊まれる所があるのに、天幕を張るというのは………ちょっと寂しい。
「う〜〜〜〜ん」
 前髪をくしゃくしゃとかき乱すと、ヒロは唇を尖らす。そして、視線を2人に向けた。
 ここまで来たら………、そーゆー宿屋、入っちゃう?
 ヒトエとエリに視線で問う。一瞬にして意味を悟った2人は、それには、流石に『うっ』と身を引いた。
 しばらく黙り込んでいた3人だが、一斉に大きなため息をついた。
「しゃあないよね」
「しゃあないね」
「そうだね」
 こくこくと頷き合っている3人を、タカだけがきょとんとした表情で見つめていたのだった。

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