promise



「………タカ」
 荒い呼吸を繰り返すタカの表情を覗き込むと、不安げな声で大切な人の名を呼ぶ。
「————大丈夫?」
『………うん』
 未だぼんやりとした表情をしているタカの汗ばむ額にかかる前髪を、そっとかきあげると、柔らかく口づける。
————無意識だからこそ、無茶苦茶色っぽい。
 そんな不埒な事を思いながら。
『………ヒロ』
「ん?」
 ヒロの首筋にしがみつきながら、タカは呟く。
『————疲れた』
「うん」
 タカをきゅっと抱きしめると、そのまま身体を反転させる。二人で枕にぽすっと頭を埋めた。
『ねぇ………』
「ん?」
 ヒロの首筋にすり寄りながら、タカは甘い声で囁く。
『さっき………何て言ったの?』
「え?」
 空いた方の手で、毛布を肩まで引き上げると、ヒロはきょん、とした表情でタカを見た。ヒロの腕を枕にしながら、タカはじっとこちらを見つめている。
『だから………最後に』
 照れたように呟くタカに、ヒロは耳まで真っ赤になった。
「いいいいいいいい、言える訳ないじゃん!」
 あれは、その場の雰囲気というか、流れというか………何て言うか、ええぃ、あんな照れくさいこと、素面で言えるか!!
 ぷいっとそっぽを向いてしまったヒロに、タカは『むーーーー』っとした表情をする。ごそごそとヒロの腕から逃れると、その身体に乗っかる。
「た………タカ!!」
『もっかい、言って』
 じぃっとこちらを見つめられ、くらくら来る。ただでさえ、素肌と素肌が触れ合って、収まりかけた何とも言えない気持ちが再燃してしまう気がしてならなかった。
『ヒロ?』
「………言わない」
 アヒルの様に口を尖らせながら、ヒロは応えた。タカは、更にむっとした表情をしながらも、その唇に自らの唇を重ねる。
「タカ………」
『もっかい、聴かせて』
 ねだるような、その声に。弱いのだ、自分は。
 ヒロはまいったなぁ、という表情をした。前髪をがしがしかき上げると、柔らかい頬を両手で包み、じっと瞳を見つめた。
「————愛してるよ」
『………うん』
 タカは儚い華の様に微笑むと、小さく頷く。
「ずっと、側にいるから」
『うん………』
「約束、する」
『約束、だよ?』
 ずっとずっと、あなたの側に、いる。
 互いの想いは、同じなのだ、結局。
 満足げな微笑みで、柔らかいキスを交わす。
 だけど、後に二人は知るのだ。『破られない、約束は、ない』と。




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