大冒険
4


「全く!どこにいったんだか?」
 既にタカの魔力は尽きていた。それに代わってヒロが呪文を唱えているのだが、一向にエリは見つかる気配はない。
 そして、出たのが冒頭のヒトエの台詞である。それはまさしく、ここにいる全員の心の声だった。
「あとは………」
 リストを手に、ヒロは頭をかいた。そして、ペンを口に加えながらふむと頷く。
「さっき、ここ行ったでしょ………で、今はここだから………後は………」
 あたしの国と、エリちゃん達に出会った街しかないなぁ。
 そして、傍らにいるタカに、『どうしよう?』という視線を向ける。
『--------ヒロの国は………行きたくないよね』
「でも、いたとしたら………とっつかまってるだろうなぁ」
 ため息をつきながら、ヒロは答えた。その会話を聞いていたヒトエは、二人の間に割ってはいる。
「ま、行きたくないとこは、最後に回して………とりあえず、里帰りさせてよ」
 さりげなく気をつかう彼女に、ヒロはホッと息をついた。そして、軽く頷く。
「じゃ、行きますか!二人とも掴まっててね」
 そして、精神を集中すると、呪文を唱えたのだった。


「おお、ヒトエ………それに、ヒロさんにタカまで」
 エリ達が住んでいた教会。そこに飛び込んで来た3人に、神父は目を丸くしたが、すぐに微笑むと出迎えてくれた。
「神父様、エリ………エリ、来てない?」
 その言葉に、神父は苦笑すると、
「ああ………さっき、何かの呪文に飛ばされてここにきたが………」
 そして、二階を指さし、告げた。
「今、部屋にいるぞ」
「ありがと!」
 その言葉に、ヒトエはタカとヒロの手をひっつかむと、ばたばたとそちらの方へと駆けていたのだった。
「あ………じゃ、お邪魔します」
 ぺこり。
 引っ張られながらも、律儀に挨拶をするヒロに、神父はまたまた目を丸くしていたのだった。


「エリ!」
「エリちゃん!」
『大丈夫!』
 エリの元いた部屋に飛び込むと、3人はきょろきょろと辺りを見回した。3人の瞳に映ったのは、部屋の隅でいじいじと指で床にのの字を書いている賢者だった。
「何心配させてるのよっ!」
 思わずその背中に、蹴りが入る。それに、エリはくるぅ〜りと振り返ると、タカを見上げて訴えた。
「ひどいよ〜〜〜タカちゃ〜〜〜ん」
『--------ごめん』
「お前が悪いんだろがっ!!」
 ヒトエは雷を落とした。それに、『くぅ〜〜〜ん』とした表情でエリは拗ねてみせる。
「だって、だってさ………」
『これで賢者っていうんだから、お笑いさね』
 不意に届く言葉に、エリは視線を厳しくした。
「--------お前は黙ってろ!」
「………エリ、ちゃん?」
『怒ってる?』
 ヒロとタカはびくびくしながら問うた。それに、エリはハッと我に返る。
「ち………違うよ、ごめん」
「ほら、立って………心配かけたんだから、謝りなさい!」
『そーだそーだ』
 うううううう、エリは後者の声に臍をかむが、それ以上は何も言えない。
「--------ごめんなさい」
『ううん、こっちこそ、ごめんね』
 互いに謝り合うお馬鹿さん二人に、魔剣士と勇者はやれやれと肩を竦めたのだった。


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