一途な恋
1
「————何だか懐かしいなぁ」
とりあえず近くまで来たついでだから、と言って今回はヒトエとエリの住んでいた街へと帰ってきた。ヒロが旅を出てから半年・・・・・・ということは、タカと出逢ってから半年と言う事になる。
「そっか・・・・・・」
なんだか、ずっと昔のことのようだ。
そんな事を考えるヒロに、タカはひょいと顔を覗き込む。
『どしたの?』
「うん・・・・・・時間経つのは早いなぁって思ってただけ」
『そうだね』
きゅっと握られる小さな手。その手を放す事なんて、出来やしない。
いつのまにか、こんなにも大切な存在になっていた。
「タカちゃん・・・・・・」
『ん?』
「何でもないよ」
微笑しながら告げるヒロに、タカはむーっとした顔をする。
『何よ〜〜』
「何でもない〜〜〜」
そんな風にいちゃつく2人を、エリはやれやれと呆れた視線で見つめる。
「いいよなぁ・・・・・・」
呟きながら、ちらりとヒトエを盗み見た。まぁ、ヒトエがこんな風になってしまっても困るけれども。
でも、矛盾してしまう想い。そう言いながらも、ちょっとはそんな事をしたい、と言う気持ちがあるのは否定できない。
「何?」
視線を感じたのか、ヒトエが不意にこちらを向いた。その何もかも見透かしたような視線に、エリはドキリとする。
————やっぱなぁ、まだ、慣れないや。
一応、両想いなのに、この冷たさったら。いいんだけどさ、別に。
「エリ?」
「————なんでも、ないよ」
ヒトエの頭をぽすっと叩くと、その脇をするりと通り過ぎた。そして、目的地に向かいゆっくりと歩み出す。
「・・・・・・何よ」
叩かれた頭を押さえながら、ヒトエは小さく呟く。そして、その手の感触を味わうように瞳を閉じた。
エリを拾ってからはや5年。純粋な程の眼差しも、綺麗な心も、甘えん坊なところも、変わってないのに……どうして、こんなにも惹かれてしまうのだろうか?
あの日————初めてエリに抱かれた日————から何度も何度もキスをすた。それなのに、いつだってエリは辛そうな表情をする。・・・・・・泣きたいのは、こっちなのに。
ヒトエは先を歩くエリの背に視線を向け、こっそりと溜息をついた。
「おお・・・・・・エリに、ヒトエ。良く帰ってきてくれたな」
2人が世話になっていた街の外れの小さな教会を訪れると、既に4人とは顔見知りの神父が両手を広げ、出迎えてくれた。
「おひさしぶりです、神父様」
礼儀正しく一礼するエリに無言に頭を下げるヒトエ。それに、神父はゆっくりと首を振る。
「そんな他人行儀な挨拶はしなくていいから。まぁ、中に入って休みなさい————あなた達も」
ヒロと視線を合わせると、神父は笑った。何もかもを知っていても普段と変わらない。その応対が居心地良かった。
「お久しぶりです・・・・・・あの、覚えておられですか?」
「覚えていますとも————大分、成長なされたようですな」
そして、4人の顔に視線をめぐらした。それぞれが以前とは比べ物にならないほどの、『勁い意志』が滲み出ていた。それに伴い身に纏う『霊気』も以前とは全く違う。
「とりあえず長旅で疲れたことでしょう————何も無い所だけど、ゆっくりと休んでいって下され」
神父の優しい言葉に、ヒロ達は微笑みながら頷いた。