LOVE IS HERE

 

「な〜〜んか雰囲気違う・・・・・・」

 翌日、部屋仁遊びに来ていた絵理子が、寛子の顔をじぃっと見つめながら呟いた。その言葉に寛子は、一瞬身を引く。

「な・・・・・・何が?」

「何がって言われると困るんだけど・・・・・・なんか違うの」

 さすが幼馴染み。そういう所は鋭い・・・・・・かもしれない。

「そ・・・・・・そうかな?」

 微妙に視線を逸らしながら、寛子は応える。絵理子は寛子の顔を両手で挟むと、強引に視線を戻した。

「ほら、直ぐ視線そらすし・・・・・・それに」

「それに?」

 絵理子はカーテンの向こうに視線を向けた。

「多香ちゃんも、何となく違うんだよね」

「そ・・・・・・そうかな?」

 寛子の態度に、絵理子はすかさず突っ込む。

「ほら、すぐドモる」

「ど・・・・・・どもってないってば」

「寛ちゃん・・・・・・」

 絵理子は寛子の肩にぽんと手を置くと、ずいっと顔を寄せた。寛子は思わず身を引く。

「あたし達、親友だよね?」

「うん」

「隠し事はなし、だよね?」

「何も隠してないってば!!!

 とうとう寛子は叫んだ。絵理子は、尚不満気な表情をしていたが、諦めたように肩を竦めた。

「・・・・・・そういうんだったら、いいけど。でも・・・・・・もし」

「ん?」

 寛子は小首を傾げた。絵理子は俯きながら、ぽつりと告げる。

「もし、多香ちゃんと寛ちゃんが仲良くなったんだったら、あたしは嬉しいんだけどな」

「絵理・・・・・・」

 自分と多香子が仲が悪いと知っている人間で、一番心を痛めていたのは、目の前に座る幼馴染みだと、いまさらながら寛子は気付く。

「ごめん・・・・・・絵理ちゃん」

 寛子は絵理子に抱きつくと、ぽそっと告げた。

「寛ちゃんは、大切な幼馴染みだし、多香ちゃんは大切なお姉ちゃんだもん。やっぱり、仲良くして欲しいもんね」

 寛子の言葉に、絵理子は殊更明るく答えた。その言葉に、寛子はじ〜〜〜んとくる。

「絵理ちゃん・・・・・・」

 そんな時、部屋のドアが軽くノックされ、開いた。その音に部屋の中の2人が、その姿勢————抱き合った姿勢である————のまま振り返る。

「あ・・・・・・」

「おかえり、多香ちゃん」

 寛子と目が合った瞬間、多香子は耳まで真っ赤になった。同時に寛子も。そんな2人の表情に、絵理子もつられて慌ててしまう。

「あ・・・・・・あの、えと・・・・・・おかえり」

「た・・・・・・ただいま・・・・・・」

 ぎこちないが、ちゃんと会話が成り立っている。

 一体、この2人に何があったんだろう?

 素朴な疑問が、絵理子の頭に浮かぶ。

「来てたんだ、絵理」

 寛子から顔をそむけながら、多香子は絵理子に声をかける。

「うん、お邪魔してます」

「え〜〜〜と、あたし、ちょっと出てくるや」

 寛子は慌てて立ち上がり、部屋を出てゆく。その背がドアの向こうに消えるのを見届けると、絵理子は多香子の部屋にほてほてと入っていった。

「た〜〜〜かちゃん」

「————なに?」

 背後から、多香子の肩に顎を乗せると、絵理子は耳元で囁いた。

「寛ちゃんと、何かあった?」

「な・・・・・・何もないよ!」

————怪しい。

 先程と同じように耳まで真っ赤になりながら、多香子は精一杯否定した。その態度に、ますます絵理子は疑惑を深める。

「あ〜〜〜〜、あ〜〜〜やしい〜〜〜〜」

「もー、やめてよね、絵理子!」

 珍しく感情を露にする多香子を見て、何となく昔に戻った気がした。絵理子は思わず顔がほころんでしまう。

「何よ?」

「大好きだよ、多香ちゃん」

 いきなり脈絡の無いことを告げながら、絵理子は多香子にきゅうっと抱きついた。

 

 

 

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