ハダカノココロ
11
「あららら………」
笑い出した寛子を見た絵理子は『あちゃー』とした表情をした。そんな馬鹿笑いしている寛子を見るのは初めてな多香子は、思わず呆然としながらも、絵理子にすがるような視線を向ける。
実は先程、寛子が飲み干したのは、オレンジジュースではなくてオレンジジュースベースのカクテルである、スクリュードライバーだった………。
「気付けよ、寛子………」
呆れたように呟いた絵理子は、多香子の視線にやっとこ気付く。
「もしかして多香ちゃん………」
「うん?」
「————寛子のこんな姿見るの、初めて?」
無言でこくこく頷く多香子に、絵理子は小さく告げた。
「見ての通り………寛子って、酔うと————笑い上戸になるんだな、これが」
「そ〜〜ゆ、お前はキス魔になるじゃないか〜〜〜〜」
絵理子の首筋に腕を絡めると、寛子は座った瞳で絵理子に告げた。それに、絵理子は激しく動揺する。
「そ、そそそそれは!覚えてないんだもん………」
「————なのに、仁絵先輩にはキスできないんだよね〜〜」
けらけら笑いながら寛子は続ける。絵理子はその腕をひっぺがすと、寛子に向かって叫んだ。
「いいじゃん!仕方ないじゃん!それでも覚えてないんだからっ!!」
————人の事は言えないって気付いてないのか、こいつは。
絵理子は心でぶつぶつ呟く。多香子も同感なのだろう。唖然としている。
「それでさ、聴いてよ、多香」
多香子の方へと視線を向けると、寛子は笑顔全開で微笑む。
————うわぁ!
滅多に見れない笑顔なので、一瞬、多香子はときめいた。しかし、すぐに『こいつは酔っぱらいなんだ』と思い出す。
「でさでさ、里奈先輩ってどうなると思う、酔うと?」
絵理子を押しのけ、多香子の隣に陣取る。そして、その肩に腕を回すと、そっと抱き寄せた。
「えと………うんと、あんま想像できないなぁ」
というより、強そう。
その言葉に、寛子は『正解』と告げると、多香子の髪に唇を当てた。人前で大胆になるのも、酔っぱらいの特性である。
「ちょ………ちょっと、寛子」
「ん〜〜〜」
頬に唇を触れると、寛子は小首を傾げた。多香子の視線を追って、絵理子に視線を向ける。
「ああ、いいのいいの」
なんだと〜〜〜〜〜!!!
絵理子は切れかけるが、こんな時の寛子は無敵なのである。何を言っても、冷たい視線と鼻で笑われる。
『普段もこうだったら、だいぶ違うのになぁ〜〜〜』
里奈がおもしろそうに呟くのも、聴いたこともあるし。
ああ、もう!
そう心で叫びながら、絵理子はグラスに入った液体を一気に飲み干した。