Endless sorrow

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「………え………ええ?」
 一体、何を………?
 目をまん丸くさせているヒロに顔を近付けると、少女は悪戯っぽく微笑った。微笑うと、愛嬌のある顔になり、結構、彼女は年若いのかも、と思わせた。
「なんで、死んでるのに、姿が現す事が出来るのかって?」
 ヒロが聴きたい事を、先回りして問いかける。それにヒロはこくこくと頷いた。
「………あなたが、呼んだのよ」
 あなたのその『絶望』と言う名の想いが。
 その答えに、ヒロはきゅっと唇を引き締める。そして、視線を落とした。
「—————そんな表情、しないで」
 どこか悲しい響きで、少女は告げた。
「苦しめるために、来たんじゃないのだから」
 じゃあ………何のために?
 ヒロの視線が、そう訴えていた。それには、少女は悲しげに眉をひそめて。
「—————あなたを、楽にしてあげる」
 その為に、ここに来た。
 真っ直ぐな視線で、少女はそう囁いた。


「………その人は、大事な人なの?」
 不意の質問に、ヒロは一瞬、答えに詰まる。だけども、そっと頷いた。
 大切で大切で………いなくなったら死んでしまう程、大好きで。
 ヒロは胸を押さえて、ぎりっと唇を噛む。噛みしめたそこから、血が流れ落ちていくぐらい強く。
「でも、もう彼女は戻っては来ないわよ」
 『彼女』がそう言うのだから。間違いは、ない。
 どこか切ない瞳をしながら、少女は囁く。その言葉に、ヒロはますます強く唇を噛みしめるだけで。
「でも………それ、でも」
 あたしは、タカを取り戻したい。誰に反対をされても。世界中の誰が敵になっても。
 それでも、心はそんな自分に嫌悪を抱いていて。相反する心に、吐き気がする。
 自己嫌悪に陥ってるヒロに、柔らかな声が響く。
「—————大丈夫」
 誰が反対しようとも、『あたし』はあなたのやることを、非難しないわ。
 その言葉に、ヒロはじっと少女を見上げる。見つめるのみで、言葉が、出ない。
「大丈夫だから」
 だから、あなたの好きな様にしなさい。本当にやりたいことを。
 声すら、出せない。
 ヒロは、少女を見上げながら、ぼろぼろと泣いていた。泣いていることにすら気付かない程。
 求めていた、言葉。—————誰か1人でもいいから………そう、言って欲しくって。
 心がすぅっと軽くなっていった気がした。自分のやるべき道が見つかった、そんな気分。
 確かに彼女は自分を楽にしてくれた。その言葉には、嘘はなかった。
 はらはらと泣き続けるヒロを、どこか辛そうな表情で、少女は見つめ続けていた。