days
3
「どうしようかなぁ・・・・・・」
放課後、寮の自室へと戻った寛子は、ベッドに寝転がりながら思う。
何がこんなに寛子を悩ませてるのかといえば・・・・・・。
「やっぱ無難に映画かなぁ・・・・・・」
そう、初デートの段取りなのだった。
今週の土曜か日曜、多香子を初のデートに誘うつもりの寛子なのである。なんといっても初デート。悩んでしまうのも無理は無い。
「とりあえず多香ちゃんの予定を確認しないと!」
起き上がると拳を握り締め、寛子は宙を睨みつける。————そんなに力を入れないでもいいと思うのだが。
「でもなぁ・・・・・・買い物って手もあるし・・・・・・」
決心したわりには、くよくよ悩む寛子である。
「ただいま〜〜〜〜」
そんな時に、多香子が帰って来た。それに『ぱぁ』っと顔を輝かせた寛子だが、其の後ろに絵理子がついてきたのを見て、露骨にがっくりとする。
「・・・・・・何よ、その表情は」
あからさまな寛子の態度に、絵理子は寛子のベッドにつかつかと歩み寄った。それに慌てて両手を振る。
「何でもないってば————、ごめんごめん————」
うりゃうりゃと寛子を小突く絵理子は、ふと気付いたように、寛子と多香子を交互に見る。
「何?」
着替えながら、多香子は素っ気なく問う。それに、呆然としながら絵理子は誰ともなしに呟いた。
「カーテン・・・・・・閉まって、ない」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
途端に寛子と多香子の動きが止まった。そして、お互いを見やる。
『話してなかったの・・・・・・?』
『そっちこそ!』
口パクで会話する2人を見て、絵理子は眼をぱちくりさせる。
「・・・・・・あの〜〜」
「何でしょうか?」
丁寧語で答える寛子。その寛子の肩を、絵理子はがっしと掴んだ。
「仲良くなったの?!」
「え・・・・・・えと」
「ね?仲良くなったの?」
揺さぶられながらも、寛子はちゃんと答えた。
「うん」
その答えに、絵理子はますます瞳を輝かせる。そのまま、多香子に向き直った。
「うん・・・・・・心配かけて、ごめんね、絵理」
「わ〜〜〜いぃ」
絵理子は多香子に抱きつくと、嬉しそうに微笑った。そして、矢継ぎ早に問う。
「ね、いつ?どうやって?何で何で?」
よっぽど嬉しいのだろう。しっぽがパタパタ振られてる。
それに、多香子はやんわりと微笑むと————その笑顔にときめいてしまう自分が情けない寛子だった————唇に人差し指を当て答えた。
「内緒」
「ええええ〜〜〜〜。ずるいよ〜〜〜、多香ちゃ〜〜〜ん」
絵理子の絶叫と共に『ぼす』という音が多香子の耳に届く。
「?」
何、寛ちゃんベッドに倒れてるんだろ?
不思議に思う多香子をよそに、寛子は天井を見上げながら思った。
————多香ちゃんって・・・・・・可愛過ぎ。ああ、この先あたし、心臓もつんだろうか?
ばくばく鳴る心臓を押さえながら、寛子は耳まで真っ赤になっていたのだった。