check my heart
〜空が壊れないように〜
5
「う………ん」
不意にヒトエは目覚めた。そして、今いる自分の状況を掴めずに、一瞬困惑する。
————どうして、宿に帰ってきて………ベッドに寝てるんだろ?確か………あの時………。
「そうだっ!」
がバリと起きあがると、周囲を見回した。そこには、何故かぶすっとしてるエリが目に入る。
「————エリ?」
腕組みをして、ふてくされた表情のエリは、ヒトエが目覚めた事に気付き、とてててと近寄ってくる。
「大丈夫、どっか、痛くない?一応、回復はかけたんだけど」
「あ………そういわれて見れば」
首筋を手刀でしたたかに叩かれたはずなのに、痛みが全くない。
「それなら大丈夫だね………」
それより、どうしてあたし、ここにいるの?
ヒトエの問いに、エリは困った表情をした。そして、ヒトエにまっすぐ視線を向けると、キツイ口調で告げる。
「あんたが説明しなさいよっ!」
「————エリ?」
いきなりの言葉に、ヒトエは目を丸くする。しかし、そう思うまもなく、聞き覚えのある声が頭に響く。
『うるさいなぁ』
えっえっえっえ?
驚くヒトエに、更に声が響く。
『久しぶりだね、ヒトエ。でもさぁ、普通の喧嘩でこの剣使っちゃダメだよ』
————この声は。
『思い出してくれた?』
「………名前、なんだっけ?」
ヒトエの言葉に、ずっこける反応が届いた。ああ、何だか自分の身体に別人がいる感覚————いや、その通りなんだけど。
『そっか、言ってなかったっけ』
立ち直りが早いヤツである………。
『あたしは、リナ。享年17歳。これから、よろしく』
「————享年ってよろしくって………成仏したんじゃなかった?」
それに、こんな軽く話す人だったんだ。
「————したの!したはずなの!」
黙り込んでいたエリが不意に口を開いた。その瞳には、リナは映っているらしい。
「そうじゃなかったら………あたしが気付かないわけ、ない」
『随分と自信満々だね』
「————うるさい!!」
吠えるエリに、リナは肩を竦める。————それは、ヒトエの瞳には映ってないのだが、感覚を同じとしているから、克明に判った。
「まっ、色々とあるわけよ、死んでからも」