CHANGE

〜BATTLE 2-3〜


「ちょっと、あんた、何やったのよ?」
『いや………ちょっと剣に魔法を………』
 だしだしと足音高く戻ってきたヒトエは、何故だか大声で独り言を言っている。それを遠巻きで見ているヒロとタカは、
「ヒトエちゃん………」
『大丈夫かなぁ?』
 不安げにエリに視線を向けた。エリは、『あははは』と乾いた声で微笑う。理由を知ってるだけに、何とも言いようが、ない。
「それにしては何であたしの体力が消耗してないわけ?」
『だから、使った魔法が『体力吸収』だからだよ!』
「へ?」
 聞き覚えのない言葉に、ヒトエは目を丸くする。そして、小首を傾げた。
「何よ、それ?」
『聴いた通り………剣が触れた————まぁ、この場合は彼女を傷つけたってわけだけど————相手の体力を吸収するって魔法」
「————なんて質の悪い魔法なんだ………」
 思わずヒトエは頭を抱えた。だからか、彼女があれだけの傷で気絶してしまったのは。
「卑怯だよなぁ………」
『勝てばいいのよ、勝てば』
 反っくり返りながら答える先代魔剣士に、ヒトエは溜め息をつく。
「あのねぇ」
『でも、そうじゃなかったら、絶対に勝てなかったよ?負けても良かった?』
「う………………」
 それを言われると、辛い。
 黙り込んだヒトエの肩を、ぽんと誰かが叩いた。
「はい?………って、ああ!!」
 振り返ると、もうほとんどキスをするぐらいの至近距離で忍者の彼女がいた。先程とはうって変わってラフな服装。鼻ピアスも印象的だったが、へそにもピアスをしていた。ついでに髪型も………………立てロールになっていた。
「よっ!強いね、君」
「あ………はい、どうも」
 あっかるい忍者の言葉に、ヒトエはぺこりと頭を下げる。
「それにしても、あの魔法には参ったねぇ………さすが魔剣士」
 ふむふむと頷きながら、髪をかき上げる相手に、ヒトエはきょんとした瞳をした。
「あの〜〜〜」
 ところで、一体何をしに?
 その問いに、忍者ははははと微笑った。ヒトエの肩をばしばし叩く。
「いや、あの後不覚にも倒れちゃったから。ご挨拶をしに………旅してるんでしょ?」
「ええ………」
 叩かれた肩を押さえながら、ヒトエは頷く。その瞳を悪戯っこの様に覗き込むと、
「何が目的か解らないけど、あんた達なら、絶対に目的達成するよ。それ、言いたかったんだ」
 そうじゃなかったら、困るけど。なんせ、この『あたし』を負かした相手なんだから。
 どこか予言者めいた言い方に、不思議に思いながらも、素直に受け取ることにした。
「ありがとう、ございます」
「あたしはね、リツ。もし、何か困った事あったら、この街においで。出来る限り助けてあげる」
 右手をそっと差し出された。それを握り返しながら、ヒトエも答える。
「あたしは、ヒトエです」
 そう告げて、互いに微笑みあったのだった。


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