亜矢ワンマンライヴ in club asia
アーティスト 亜矢 PM6:30
いままで女性ロックアーティストに興味すらなかった俺が一発で惚れた女性ロッカー「亜矢」。
そんな俺の中でclub asiaで行われた初のワンマンライヴは最高でした。
個性派、女性シンガーそんなくくりなど最初から蹴散らし、最初にして最強のパフォーマンス
を俺はその日彼女に魅せつけられたのである。
PEARL JAMの「RELEASE」のライヴ音源を入場テーマに、バンドのメンバーが
待つステージへ"NIRVANA"と書かれた黒いノースリーブ姿で登場する亜矢。
無機質でありながらも悲しみに満ちた緩やかなギター・アルペジオ。
このライヴは亜矢にとって一年ぶりのライヴになるらしい！そのオープニングに用意したのは、リリースされたばかりの
7 ROCKS ALBUM『禁じられた歌』の収録曲「絆」であった。
亜矢が、マイクスタンドを握る。感情をぶつけていく亜矢のライヴパフォーマンス。
長い髪を風になびかせながら、曲を「SHELTER」へと移行する。
動かぬ者はその攻撃的な空気のうねりに飲み込まれ、感情を爆発させなくてはこの空間に存在できないことを知る。
サイレンのようなギターと共に幕を開ける3曲目「SADISM」でも
この時点で、会場中のほとんどの人がその汗をかき、明らかに開演前とは違う表情にしていた。
「こんばんわ。（オーディエンスによる凄まじい亜矢コール）
今日は私のワンマンに来て下さってありがとうございます。最後まで楽しんでいってください。
私も今日は最後までじっくり楽しみたいと思います」
その時ファンから渡されたされたぬいぐるみ
を受け取りながら笑顔で語り、そのぬいぐるみを彼女に渡す亜矢。
熱気に包まれた会場に"幸福感"が生まれる。
しかし、次の瞬間には、「HANDS」の演奏と共に会場中の至る所で感情が爆発していき、
再び誰もが戦いモードに切り替わる。今夜のライヴは凄まじい勢いで疾走していく。
共にシャウトする亜矢とオーディエンス、他ではなかなかお目にかかれない魅力的なコール＆レスポンスの形である。
序盤から疾走し続けた今夜のライヴは、5曲目に披露された「ANGERICA」
盛り上がれば良いんじゃない？そんな言葉は彼女の音楽は存在しない。
こうして皆に想いを届ける意味、心を裸にする以外にリアルな感情は表現できないと信じている。
中途半端ではいけない、音楽によって沸き上がるその感情を共に爆発させるためには互いの心を裸にするしかないのである。
それを可能にするのが亜矢のライヴの特徴であり、魅力と言える。
そんな魅力を存分に感じさせる「ANGERICA」によって、痛みをも伴う共感が生まれると、曲は
「メーデー」へと流れていく。眩く地上を照らす光を、オーディエンスと共に全身で受け止めて
歌い叫ぶ亜矢。鬼気迫る彼女の表情と歌声は圧倒を通り越し、美しさすら感じる。
オーディエンスのモノマネをして「Ah！」と可愛らしくシャウトした後、笑顔を零す亜矢。
その表情は「アルク＊ベイビーズ」のイントロが聞こえると共に重苦しいものに
変わったのだが、それは攻撃的＆破滅的といった要素はまるでなく、彼女の歌声から
やすらぎを感じた。
安易だとは思うが、亜矢のアコースティック・ギターと叫びのうねりの中に絶対的な
やすらぎを感じたのは確かだ。
続いても新作から「CHAINS」を披露。心を縛り付ける日常という名の鎖をここぞとばかりに
破壊していくオーディエンス。
魂の解放と呼ぶには大袈裟すぎるだろうか？とにかく、この曲に込められた想いを耳ではなく
全身で理解し、オーディエンスは自由に感情を大爆発させていた。
この曲を歌い終えた後に亜矢が言った「今日のビールは絶対に美味い」という言葉に
裏打ちされた凄まじい光景がステージ上にも客席にも広がっていた。
そんなハイテンションな空気を更に煽るように、新作のタイトルトラック「禁じられた歌」
が披露される。足元から放たれる光を浴びながら妖艶に映る亜矢の表情が、「GO!!!!!!」
というデスボイスと共に言葉では表しがたい狂気的な表情に変わり、次々と爆発していく
感情の炎が会場を埋め尽くしていく。
一度燃え始めた感情の赤い炎がそう簡単に消えるわけもなく、続いて披露された
「HONEY BEE」、ベリコースのカヴァー「CANDLE STICK」によって
何もかもが燃やし尽くされるまで、オーディエンスは暴れ続けた。
「時に私は落ち込むんですけど自分の理想が高くて追いつけなくって悩んだり
でも成長していく喜びがある限り、私は音楽を続けていきたいと思います。」
今の自分の素直な音楽に対する気持ちを語ると彼女はゆっくりと「選択の朝」
を歌い始めた。もはや彼女の音楽スタイルを確立した一曲と呼んで
良いこのナンバーは常に誰かに向けて歌い放たれてきたが今夜はパッと見開いた哀愁に満ちた
瞳で何を見つめ歌っていたのだろうか。この上ない悲しみの歌をどんな心情で歌っているのだろうか。
なぜか今夜の「選択の朝」はいつも以上にリアルな歌として僕の心に響いた。
続いてはかなりの頻度で披露されているシングルナンバー「CRAZY
MERMAID」。
この曲は心地良い疾走感とヘヴィな気怠さが同居したナンバーだが、ライヴ映えする
そのサウンドの中に包まれた悲しみがオーディエンスの心を激しく捕らえていた。
なぜならギターをガムシャラに掻き鳴らす亜矢の姿が勇ましくもあり、悲しくもあったからだ。
彼女はプロの表現者だからステージ上で歌いながら泣くことはない。
それ故にライヴパフォーマンスを通して伝わる悲しみや涙はリアルに聴き手の心へ伝わる。
そんな「CRAZY MERMAID」の披露の後に、間髪入れず流れてきたのは、元NIRVANAの
クリス・ノヴォセリックがレコーディングに参加したことでもお馴染みの「KING
OF PAIN」
のイントロ！堪えきれず客席からステージにダイブしてマイクスタンドを倒すオーディエンス。
そんなオーディエンスのテンションを、そのまま自身のテンションにも吸収していく
亜矢と各ミュージシャン。誰もが充実感に満ち溢れていく。
温かいオーディエンスの声と拍手に包まれたメンバー紹介が終わると、ライヴは本編の
ラストナンバー「性〜さが〜」へ。声なき声で歌う全ての念（おも）い込めて
彼女そのものを言葉で表現したような印象深いフレーズを、そのフレーズ通りのスタイルであ
りったけの想いを爆発させながら歌い叫ぶ亜矢。この瞬間、亜矢と、彼女の歌声を求めて止まない人々の
心は一体化ひとつとなり、何物にも変えられない生きることの尊さを、痛感、共感し合う。
なんて素晴らしいライヴだろう今夜最も感動的な光景がそこに。
心の中で激しく鼓動する亜矢の言葉、その言葉に込められた想いが、オーディエンスの魂を完全に解放していた。
シャウト気味に「亜矢!!!」と何度も叫ぶ声が会場に響き渡る。ステージに呼び戻される亜矢とバンドメンバーたち。
「今日のアンコールは特別です」そんな言葉の後に披露された一曲は、彼女のコアファンなら喜ばずにいられない
「FUKAI AI」（デビューアルバム「戦場の華」のラストに収録され、過去１度しか演奏していない曲らしい）。
再び彼女の創り上げる悲しみと優しさに満ちた世界に身と心を投じる僕ら。
体を上下左右に優しく揺らしながら彼女の歌声と交わりそして、包まれながら溶けていく感覚。
尋常じゃない目つきの彼女はNIRVANAの「SCHOOL」で圧倒的なシャウトを披露。
そして、ノンストップで流れ始めたハイテンションな新曲「BETTY」で会場中の人々の
理性は壊され本能に従順な野獣化し暴れ回る。
「これからもライヴやって成長していこうと思うんで皆さん末永く見守ってて下さい。」
そんな素直なMCの後、彼女はオールラストソングとして、ベット・ミドラーの「THE
ROSE」
を目を閉じマイクを握りしめゆっくりと歌い始める。
決して激しいアレンジは加えず、あくまで原曲に近いブルージー
な形で、涙を誘う演奏と歌声を聴かせる。
数多くの女性アーティストがこの曲を作品やライヴでカバーしてきたが、同タイトル
の映画のラストシーンばりに感動的な「THE ROSE」を国内で歌えるのは彼女くらいだろう。
素晴らしいラストソングであった。
今夜僕らの心に響いた感情は、自然体であった故に、よりリアルに響いた。
間違いなく亜矢という名のアーティストと、亜矢という名の人間の距離がより縮まったことは確かだ。
自身の人生で身に降りかかる全ての体験が曲になり、歌になりそして時として決して生やさしくない。
生きるという意味を持つLIVEは、彼女のためにあるような言葉であり、場所であると、思った。
2003/05/23 jetta
SET LIST
01.絆
02.SHELTER
03.SADISM
04.HANDS
05.ANGERICA
06.メーデー
07.アルク＊ベイビーズ
08.CHAINS
09.禁じられた歌
10.HONEY BEE
11.CANDLE STICK
12.選択の朝
13.CRAZY MERMAID
14.KING OF PAIN
15.性〜さが〜
EN-1 FUKAI AI
EN-2 SCHOOL
EN-3 BETTY
EN-4 THE ROSE