さて、YMOのファンに限らず、誰もが遭遇する場面として「自分の好きなモノの魅力を伝えたい」という場面はよくあります。 特に友人や恋人ができたとき、またはできそうな時など、他人に自分の嗜好を伝えることにより、 自分の趣味を理解してもらいたいし、趣味が合えばラッキー、などと思うものです。 私の場合は、それほど開けっぴろげに自分の嗜好については語りません。 今まで何度となく、それで嫌な目にも会ってきたし、そこまででなくとも、 自分のボキャブラリーのなさ故の、説明不足による消化不良の悔しさを味わってきました。 「なあ、お前はどんな音楽聞くのん?」 「ん?YMOなんか好きなんやけど」 「ワイエモ?なにそれ、知らんわ。外人?」 「いや、昔おった日本人のバンドやねん」 「しらんなぁ、マイナーなんちゃうん?売れてへんやろ?」 「いや、別に・・・」 そう、「素敵なもの」の魅力を伝える事は、非常に難しい事なのです。 「良いものは良い」としか説明できない自分に空しさを覚え、以来私は上記のような質問に対し、こう答える事に決めたのです。 「せやなぁ、俺は坂本龍一のファンやな」 となると、 「ああ、そうなん。渋い趣味やね」 とりあえず、嘘は言ってないし、何とかその場を取り繕う事はできる。 しかし、その後に残るなんとも寂しいこの空虚さよ。 本当なら、YMOの説明をする前に、その楽曲を聴かせてやりたいのに。 相手が「いい奴」なら、それで納得してもらえるはずだし、そういう相手であればお互いの趣味の話も楽しめそうだ。 しかし世の中には「ヤな奴」もいるから、またややこしい事になる。 ハカセぶりっ子の音楽オタクや、一定ミュージシャンの超盲信者的な人間なら、非常にタチの悪い事になる。 音楽の話に限らず、こういう人は困る。 人の話を聞かない上に、オタク的早口でまくしたててくる。 そういった人種に対しては、暴力をもって制裁するのが一番なのであるが、 こちらも一人の大人である以上は、百歩譲って我慢するしかない。 その他、合コン等での自己紹介や、カラオケでの「君に、胸キュン」熱唱時などなど、YMOに関するさぶい場面は山のようにあることでしょう。 そして、「俺はミスチルが好きだゼ!」「私はドリカムが好きヨ!」とアピールできる人々のなんと輝かしい事よ! 彼等は周囲から「俺も結構好きなんだよ!」「私アルバム持ってるよ!」等と言われ、微妙に盛り上がったりするのであります。 そこでオタク的にふて腐れたくない私は、やはりこう言う訳です「俺は坂本龍一が好きだゼ!」。 さらに追い討ちをかけるように「エナジーフロー最高〜!」と涙目で叫ぶ・・・ というのは嘘で、実際は地味にその場をしのぐ訳でありますが、そこで親切な人がまた私に迫るのです。 「戦場のメリークリスマス」はいいよね、と。 そして私は「戦メリ最高だゼ!あれを聴かなきゃ聖夜は祝えねぇゼ!」・・・ というのは嘘で、実際は「B-2 UNIT」や「未来派野郎」の教授がもっと好きなんです・・・ という心の叫びを押さえつつ、その場が過ぎ去るのをただただ祈るのです。 まあ、多少大げさではあるのですが、こういう場面はYMO好きの少年少女には苦しいものであります。 一人でも興味をもってくれれば、そこからYMOの世界に案内する事もできますが、 ザク並の大量生産式アイドル・ポップに浸かっている人も多い現代社会、 「好きなものを好きという事」にも躊躇してしまいます。 いずれにせよ結局、YMOの魅力を十分に伝える事はできないのです。 若きYMOファンなら、誰もが一度はそういう経験があるでしょう? YMOのファンサイトを持つという事。 人により目的は様々だと思いますが、私の場合は「新規YMOチルドレンの増殖」と「既存ファンの刺激」を第一に考えています。 まあ、非常に偉そうな目的ではありますが、微力ながらも、ある程度は効果が出ているように思います。 しかし、前述のような「YMOの名前すら知らない人」に対してどこまでアピールできているかというと、全く自信はありません。 それでも、「なんとかして広めたい!」という願望があり、YMOが正当に評価され、 テクノ界のビートルズが如く、聴き継がれていって欲しい。などと考えているのです。 YMOの魅力は「言葉」で簡単に言い尽くせるものではありません。 しかし、私個人としてできるのはやはり「言葉」を使うことなのです。 非力な私は「デカい文字」や「意味不明のテンション」で誤魔化すこともしばしばあるけれども、 それもYMOへの「愛」ゆえのことだと思っていただきたいのです(笑)。 |