99年2月23日(火)朝日新聞夕刊(17面、第2版)の記事より引用しました。

朝比奈 隆 初録音は母校の「校歌」だった


 日本の現役最高齢の指揮者で大阪フィルハーモニー交響楽団音楽総監督、 朝比奈隆(90)の「最古」のレコーディングは、 朝比奈の母校・京大の学歌であることが、 大阪フィルの調べで分かった。
 1940年4月に録音された「京都帝国大学学歌」で、 これまで朝比奈の最も古い録音は43年の交響的映像「ジャワの唄声」 (深井史郎作曲)とされていた。 朝比奈は「どんなレコーディングだったか記憶が確かでないが、 私の歩んできた道に新たな1ページが加わることに感慨を覚えます」と話している。
 大阪フィルによると、先月上旬、京都市内のファンから 「祖父が大切にしていた朝比奈先生指揮の古いレコードがありますが、 先生に持っていただくのが一番いいので寄贈したい」と連絡があったという。
 「京都帝国大学学歌」は、青少年学徒に時局の自覚を呼びかけるため39年5月に発布された 「青少年学徒ニ賜ハリタル勅語」の趣旨にこたえるため、 同年9月、京都帝大が学生、職員、卒業生を対象に歌詞を募集した。 名誉教授で、国語辞典「広辞苑」の編集で知られる新村出さんらが審査。 「九重に 花ぞ匂へる 千年の 京(みやこ)に在りて……」 という歌詞で始まる卒業生の水梨弥久さんの作品が選ばれ、 東京音楽学校(現・東京芸術大学)助教授だった下総皖一さんが作曲した。
 レコードはテイチクレコードから出された。 A面がテノール歌手で岡山大学教育学部長などを務めた水野康孝さんの独唱、 B面が京大合唱団の男性コーラスで、それぞれ「学歌」を収録。 管弦楽は両面とも朝比奈指揮の京大オーケストラ。 ノイズの入った古めかしい音だが、リズミカルな曲ははっきり聞こえる。
 朝比奈は京大法学部と文学部を卒業。 「学歌」の録音に先立つ40年1月には新交響楽団(現・NHK交響楽団)を指揮し、 プロデビューしている。
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