こまいぬ号の社会復帰

現代クルマ社会に舞い下りた唐獅子
こまいぬ号が再び地を蹴る日を夢見て



こまいぬ号、つまりワタシの117は最初、不動状態であった。
これをバイト先の知り合いの人から現状渡しの車体10まんえーんで譲り受けたモノだ。
暗い倉庫の中でこの117を見つけた時、ワタシは旧車はおろか4輪に関して素人で117に関して何も知らなかった。でも、なんかそのデザインが気になって仕方なくなって旧車に関する本を見たりなんかしてちょっと勉強して。それでもってますますあの117が欲しくなってきたワタシはその持ち主の人に頼み込んで譲ってもらおうとした。
が、結果は「NO」だった。
動かないクルマだからってのが理由であったが、きっとそれだけでは無いはず。あれほどの年式の不動車を大事にしているからには余程の理由があるんだろう。
現役だったころの思い出とか。

で、ワタシは中古車で117を探そうと思ってたある日、事態は急展開を迎える。
何とあの117を売ってくれると持ち主の人から連絡があった。
バイトが終わってすぐに向かう。
「この117をもう一度動く様にすること」というのを条件に売ってもらった。
数日後、キャリアカーに乗って117が家にやって来た。
その日ワタシはずっと欲しかったオモチャを買ってもらった子供みたいに運転席に座って過ごしてた。




不動車を持って来てガレージに止めていることを家族に責められながらも、ワタシは嬉しかった。
とは言え、いつまでもこのままって訳にもいかない。
復活させなければ。

バイクに乗ってた時代の知識でもって武装して、とりあえずボンネットフードをあける。
「ぼん・・・」
旧車はボンネットが開きにくくなっているものも多いと聞くがこの117のフードはコックを引いただけで簡単にもちあがった。
フードにロックをかけた上で初めてセルをまわしてみる。
「ういん・・・ういん・・・」
なんとも弱々しいながらもセルは回ってる。バッテリーが劣化しているようで交換が必要なんだろ。
とりあえず、充電器でもってチャージしながらもう一度セルをまわす。

「ういんういんういん・・・」

前のオーナーが言ってた通りエンジンは掛からない。世の中甘くないようだ。
バイクには冷えたエンジンを起動するときはチョークなんてものがあったのだがそれが見当たらない。
シートに座っていろんなスイッチを睨み続けること30分。
ようやくサービスマニュアルの存在を思い出す。

これによるとアクセルを数回踏んだあとにイグニッションするといいようだ。
「すこすこすこ・・・」
「ういんういんういういういうい・・・」
やはり、世の中は甘くない。まーだエンジンはながーい眠りから覚めない。
こんな時はプラグだ。プラグを抜いて状態を確認するのだ。

プラグの状態は・・・・。
なんと真っ白に焼けてしまっているではないか!
あーっはっはっはっ!なんとこんな簡単なことでエンジンが掛かるならもうけものだ!
通常5番か6番のプラグで点火するものを4番が刺さっていたのだ。
早速オートバックスへ「どピーキーな足」の異名をもつNS−50Fで出発だ!


NS号が駐車場で他のお客さんや、店員さんを威嚇しているのをよそにワタシはプラグとバッテリーを購入。
急いで帰って交換だー!

ワタシの頭の中ではすでに117のエンジンはアイドリング中である。プラグをねじ込んでいる間ずーっとどきどきしてた。
で、いざイグニッション!
「きゅんきゅんきゅんきゅん!」
ニューバッテリーは好調で力強いセルの回転に期待がもてる。
「きゅんきゅんきゅんきゅん!」
?・・・・。
・・・・。

やはりそんなに甘くない。
うーん。なんで?
とりあえずは一つプラグをはずしてボディーアースしてみてセルモーターを・・・・・。

って誰がキーをひねってくれるんだよう。
仕方がないので電線でグランドさせて運転席から見えるとこに置いてと。
「きゅんきゅんきゅん!」
いまいちスパークが見えない。
良く見えるようにいろんな姿勢でまわしてみるけどやっぱり見えない。
今まで面倒くさがってテスターを取りに行かなかったのだがちゃんとした結果が知りたいのでテスターを取りに行く。
で、もう一度。
「きゅんきゅん!」 針が動かん!プラグにはニューバッテリーの豊富な電圧は供給されていないようだ。
「とほほ・・・」



「なんじゃこりゃー!」
ワタクシの友人が117をみて叫ぶ。
ワタシは何かとんでもないモノを購入してしまったようだ。そうかなー。単純にカッコイイと思って買ったんだけどなー。
「走るんけ?」
「エンジンかけてみてーや」
友人は今のワタシに一番言ってはイケナイ事をさくさくとしゃべりかける。
ワタシはココロのなかで「いつかコロス」とか思いながら「それが掛からへんのんやー」と一言。
「・・・・・・・。」
なんか変な間の後に「まさかこんなクルマ買うとはなー。予想もせんかった。」
「そーけ?」(意訳:そうですか?)
「スープラとかタイプM買うと思とったけどなー。」
「うーん。それもええけどなー。これ見た瞬間なんかスープラとかふっとんでいった。」
「・・・・・・でも、ええな。これ。なんでエンジンかかれへん?」
「バッテリー新品にしてセルもちゃんと回るけどプラグがスパークせーへんねん。」
「あー、こんだけ古かったら電気系どっかおかしいやろなー。」
「で、今日はキミにきてもらった訳や。」
友人の顔がちょっとひきつる。
「あとで吉牛(吉野屋の牛丼のコト。ヨシギューと発音。)おごったるから。それにボンネットの中スカスカやから楽やでー。」
その一言で迷いながらもテスターに手を伸ばすあたりはサスガ、ワタシのトモダチ!
さー、次回は電気系の一斉点検ですよー!



今回はここまで!



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