誰が最初にさよならをする時に 手を振ったんだろう
 
発車のベルが鳴り ドアは堅く閉じて行く
 
その一枚の壁は 声をさえぎり 別れの時を頑なにする
 
それでもまだ その時間を惜しむ様に
 
無言のまま 黙って手を振る それが最良だと思って
 
この列車が走り出したら もうあとは寝るだけだ
 
薄いブランケットを体に巻いて ただ眠るだけ
 
どんな夢を見るのだろう そこでもまた手を振るのかな
 
きっとこの旅の最後の最後には 友達が溺死していたりして
 
そこで手を振るだけで 無言のままなのかな
 
星群の中をゆっくりとしたスピードで ガラス窓に映った自分を眺める
 
振り終わった手をたっぷりとした力を抜いて その時でもう手紙を読み返す
 
遠く後ろの方に消えて行った あの夜の中の駅は
 
小さな小さな街の小さな小さな人の分岐点
 
次はあそこで誰が手を振るのだろう
 
負けずと決めてただ手を振るだけのその心理に
 
誰かが溺死でもしていたのかな その心の中で
 
それを掬い上げる 言葉が少し もう少し欲しかった



















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