僕が君より先に風を切ってこの海岸を歩いたのは
 
君にきれいな石をあげるため 波打ち際のそのきれいな石を
 
この風に小刻みに体を振るえあがらせて 歌を口ずさむ
 
それでも風にかき消されるから・・・・ 君は遠くを見ていて
 
僕が拾い上げたその石はきれいで 空は少し曇っている
 
夕日は沈みかけているけれど その色は水平線まで届きそうにない
 
それでも君は惜しみなくその色を追いかけて 遠くを見ている
 
君が突然振り向かせて撮ったポラロイドの光が眩しくて
 
僕はその色に 惜しみなく目を細める
 
風は強さを増して 体温は少なからず奪われる
 
高速道路の上で 音楽が鳴っているのを 僕は聞いていた
 
家路をたどり終わると ポケットの中から 石が出てきた
 
それはきれいでも何でもなくて ただの黒い石だった
 
それでも僕は惜しみなく その石を君に手渡した










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