ジェット機を掲げたポスター ブーツの踵が磨り減ったのを少し気にしながらそれを 見上げてる

立ち上がる煙 眠たげな目を擦り ベットの上で時計を横目に僕は横たわる

人込みを誰にも触れさせたくないから ここでこうして独りでいるのかもしれない

インディアンの羽が僕の宝物だとしたら 勇気なんて言葉は必要ないのに

それでもジェット機を掲げたポスターを見上げて 空へ行こうと心に舞い上がる

最近恋なんてしただろうか 心の衝動の弱さに自分の弱さも重ねてみた

街で一番大きな公園で 誰かがピストルで 誰かを落としたってさ その横で誰かが 泣いてたってさ

誰も想像しないような大きな音と共に 誰も想像しないような大きな恋が終わる

そしてその後の清閑さに人々は ただ黙って戸惑うだけ まるで初恋みたいに

でも僕がブーツを履かない空を飛ぶ生き物だったら 磨り減った踵に時間を割かれた りしない

それでも僕はポスターを見上げて 待ち受ける衝動に耳を傾ける

アンティークな黄色いひかり 立ち上がる煙に巻かれ 地下鉄への階段をコツコツと 音を立てて

そこから舞い上がる風 人々の匂い 内緒話に心を預ける少女たち 虚ろな目をした 少年たち

二脚で一組の椅子 二つでお揃いのグラス コルク栓が嫌われる ワインボトル

誰かが嫌った暮らし 若過ぎるだけで犯す過ち 表情の先走り 色を失いそうな時間 の群れ

最近恋なんてしただろうか 

誰かが重ねる理想 理想 両手でも足りないくらい零れ落ちる 感情

逃げ出した子猫 それほどまでに感情を凌駕して どこかでまだ泣いているのかい

ジェット機を掲げたポスター ブーツの踵が磨り減ったのを気にしながらそれを見上 げている

僕は夢の中へと 手で真似たピストルで 音も無くそれを打ち落とした


                    「ジェット機を掲げたポスター」              




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