「裸足」
 
出会いは地下鉄だった ホームには誰もいなくて 
彼女と僕と二人がそこに立っていた
彼女は何故か裸足で 洋服もボロボロだった
青いのは目だけじゃなくて 彼女の色もそうだった
彼女は涙を流して 白線の中へ飛び込んでいったんだ
 
僕は彼女の手を掴んだ 遅刻寸前ってとこだ
彼女は僕に抱きつき 大声で泣き出した
僕はこの国に来て まだ三ヶ月だった
上手には話せなかったけど 挨拶くらいは出来た
名も知らぬ自殺志願者の少女へ あなたのお家は何処ですか
 
何も話してくれないから 僕は彼女にこう言った
ポリスに行こうって そうしたら彼女が口をきいた
そこには連れてかないで 人が来たら大声を出すわ
一緒に連れて行って 私の命を助けた罪よ
罪だ何て言われて怒る気も悪い気もしなかった でもほっとけないさ
 
そして次の日の朝 クラスメートから電話があった
悪いけど今日はいいや 一人客がいるから
彼女はまだ寝てる 僕のベットを一人占めして
あれだけ言った後で まだ何も話してない
昨日の事がまるで嘘の様に 彼女はやさしい顔で眠っている
 
隣の部屋のピアノの音で 彼女は目を覚ました
名前を言った後で また無口になった
軽い朝食を終えて 僕はギターを弾き始めた
このためにこの国に来た 彼女は何故か笑った
意味も無く本当に何の意味も無く’an old fashion love song’を歌った
 
少しづつだったけど 話をするようになった
彼女は一つ年下で 両親はいないらしい
狭い施設に閉じ込められ 学校へも行ってなかった
足長おじさんにはなれないけれど 一緒に暮らすことくらいはできるって思った
迷惑だからと帰ろうとしたのに 僕は何故か引きとめてしまった
 
普通の暮らしがあった 別に大した事なく
変わった事と言えば あの日から彼女がいることだ
僕は彼女に惹かれていった 当然のことのように 
映画みたいな話しだなって 時々ふと思うけど
だけど初めて会った日のことを考えると 今更ながら罪だって思った
 
この国ではよくあることだった 彼女もそうだった
あの日の事は聞けない そうに違いない
彼女も僕に惹かれていった だから愛を求めた
彼女はひどく泣き出した そして部屋を飛び出した
出会いは地下鉄だった 彼女は何故か裸足で
気が付いていたはずなのに わかっていた筈なのに
青いのは目だけじゃなくて 彼女そのものだった
今度は遅刻らしい 今度は遅刻らしい
花束は僕が思っているより 鮮やかな色をしてたんだ
 




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