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岩波書店、1800円+税、グーテンベルクの森シリーズ。
グーテンベルク森シリーズとは、「書物の森からお届けする、書き下ろし読書エッセイ」と説明書きがある。
要するに、さまざまな分野を代表する森の案内人が、自らの人生と重ね合わせて、書物との関わりとその魅力を語るシリーズものであるらしい。
本書も、埼玉大学名誉教授でもあり、生活経済学者でもある著者が、ふとしたきっかけで出版した絵本『サンタクロースってほんとにいるの?』を起点に語るエッセイ集である。
12月になると、日本は言うに及ばず世界中で、サンタクロースがあふれかえるようになる。
国境も、歴史も、宗教も、性別・年齢も関係なく、何故こんなにも世界中でサンタクロースが愛されるのか?
サンタクロースの愛される秘密を探るために、あらゆる角度から読書体験・ボランティア活動・自らのクリスマス体験、果てはサンタクロースの原型とも言われる聖ニコラウスの生家と教会を訪ねる旅にも出かける。
特に心に残った点は、著者の二人の息子たちと共有している児童書の心温まる思い出である。
また文中の「本は人間が人間社会に残した栄養であり財宝だと、私には思える」という一文は、読書好きにもそうでない人へも、最高のメッセージであるように思う。
著者の豊かな知識や経験は、得がたい宝石のような言葉となって、1冊の本の中にあちらこちらにちりばめられている。 (2003.11.27初版発行)