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講談社文庫、760円。
鎌倉後期の女流日記文学の傑作とされる「とはずがたり」の世界を小説化した長編歴史小説。
時代は鎌倉後期、後深草上皇・亀山天皇の御代である。
政治の実権は鎌倉幕府の執権、北条氏が握っており、京の宮廷はかつての平安王朝の栄光と夢を空しく追い求め、退廃的なムードに包まれていた。
後深草上皇の寵姫である二条が、後宮での数奇な性体験とその後の出家—諸国遍歴の旅の様子を、赤裸々に綴った書「とはずがたり」をもとに、西園寺家の家督を継ぎ、さらには当時の朝廷と幕府とを円滑にまとめていく関東申次役に就任した西園寺実兼を語り部として物語は進んでいく。
歴史小説の舞台としては、あまり人気のない(!?)鎌倉時代後期から南北朝時代までの、朝廷と幕府の政治駆け引きや元寇による痛手、底辺に生きる庶民の生命力にあふれた姿までを、あますところなく描いている。