〈ノーラ・ロバーツ〉

扶桑社ロマンス文庫、上下巻、上７０５円、下６６７円。
ワシントンの上流家庭で、心優しい父親と厳格な祖母に何不自由なく育てられた２６才のケルシー。
結婚も、申し分のない相手であるウエイドとしたはずだったが、たった２年で破綻してしまった・・・しかも、夫の浮気という理由で。
これまでの人生において、挫折した経験が皆無のケルシー自身、そんな自分にとまどい、傷つき途方に暮れていた。
ある日、そんな日々を過ごすケルシーのもとに、一通の手紙が届けられた。
しかも、差出人は、幼い頃に死んだと聞かされていた、産みの母親であるナオミからのものだった・・・！
さらに驚くことに、ナオミは２３年前に殺人事件を犯し、刑務所にいたということが手紙には書かれていた。
成長した娘ケルシーに、一目会いたいというナオミだが・・・。
衝撃を受けつつも、悩んだ末にケルシーはナオミに会うことを決意。
会いに行ったナオミの家では、優秀な競走馬を育てる、牧場を経営していたのだった。
家柄や世間体に縛られ、「自慢の娘」として、家族の期待に応えようとして、自分を抑えつけ、型にはめてきたケルシーが、「離婚」と「実の母親との衝撃的な再会」といった事件を乗り越えつつも、本来の自分を見つめ取り戻していく姿が描かれた作品。
さらに、走る宝石ともいえる、サラブレッドを巡る陰謀が渦巻き、単なる「ロマンス」だけではなく、同時にミステリー色も味わえる。
ノーラ・ロバーツの数多い作品の中で、「サラブレッド」などの馬をあつかう作品は、特に気に入っている。