〈ダグラス・ラミス〉

平凡社、１２００円、全１１編、訳・知念ウシ、絵・村上勝美。
八月のある日、にぎやかな縁日の中で、不思議な人がいることに子どもたちが気づいた。
屋台と屋台の間に敷物を敷いて、座っているだけ・・・売っているものは何もない。
しかも日本人ではないし、アメリカ人にもヨーロッパ人にも見えない。
ただただ静かに座っているだけのこのおじさんに、子どもを代表してミコが話しかけてみることになった。
「おじさんはどこから来たの？」
「おじさんは何を売っているの？」
すると、おじさんは「南からやってきたんだよ。考えを売っている、考え売りだよ」と答えるのだった。
その日から、子どもはもちろんのこと、町の大人たちも、考え売りからさまざまな考えや思いつきを買っていくのだが・・・。
ささやかな小さな物語一つ一つの中に、著者のメッセージが込められているように感じる。
一つの考え方の変化が、一人の人間を変え、少しずつ広がって、大きな変化になっていくのだというメッセージ。
薄くてすぐに読み終わるが、厚くて時間のかかる１冊だ。