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新潮社、新潮エンターテインメント倶楽部SS、1500円、短編連作集。
麹町郵便局裏の小さなビルの一室に〈九段南事務所〉を構える、所長こと私は、さまざまな職種と名前を持っている。
そんなある日、路上で呼び止められて背広服地を売りつける、古典的街頭商法に引っかかる。
偶然、その場面に遭遇した自称経営コンサルタント『四面堂 遥』と名乗る女と関わり合いになったことから、さまざまな仕事にありつくことになる。
テレビ『X−ファイル』のジリアン・アンダースンに似ていることから、ジリアンと影では呼んではいるが、頭の回転の速さといい、クソ度胸といい、
いやはや、とんでもない女と組んだものだ・・・と、タメ息すら出てきてしまう始末。
世渡り上手な世間師コンビが活躍する、ウィットあふれる短編連作集。全5編収録。
新潮社、1900円。
上下2段組で500頁に迫る勢いの、分厚い長編。
しかも今回の物語の舞台は、おなじみスペインだけでなく、東京、静岡、そしてどうやら北朝鮮までからんできているような気配・・・。
実は途中まで本気で「五つ☆」を考えてました・・・結局、☆一つ足らずになったのですが。
八甲製薬秘書室員の寺町麻矢は、ある日アポイントメントなしで直接社長に会いたいという男に詰め寄られた。
しかもその吉本と名乗る男は、「八甲製薬は人殺しの会社だ、その責任を取れ」と穏やかならぬ言葉を残す。
後日、麻矢は吉本から「人殺し」という言葉の意味──吉本の父親の死因は、八甲製薬が製造した人工血液「フロロゾル」が絡んでいるのではないかという疑い──を聞かされ、しかもその証拠となる写真まで託される。
麻矢は宣伝部員の古森卓郎や親友でフリーカメラマンの秋山のぶ代と共に真相究明に乗り出したが・・・。
他にも多彩な登場人物が現れ場所も変わるが、それぞれの役割を演じながら、物語は最終的に一つの方向に向かって収束していく。
この作品の軸は、ズバリ「タイトル」にあり!
前半・後半では、登場人物の果たす役割の比重がかなり違ってるように思えたのですが、いががでしょうか?
講談社、2200円。
逢坂氏の作品群の中では、タイトルでもわかるように「スペイン」もの。
第二次世界大戦突入の頃の、ヨーロッパを舞台に繰り広げられる。
日系ペルー人である北都昭平は、内戦後のマドリードで、高価な真珠を中心に商いをする宝石商だった。
その頃、ベルリンでは聯盟通信の尾形は、ハイメ・ソトマジョルというスペイン人のABC紙特派員から、ある情報を得る。
マドリード、そしてベルリン、アルヘシラス、アンダイと舞台を変えながら、いつしかドイツ・イギリス・スペインの3国に加えて、ロシア・ペルーと、駆け引き巧みな情報戦が繰り広げられていく。
そんな中で、二人の日本人や、まわりの人々も時代のうねりに巻き込まれていった。
読み進んでも、進んでも結末がなかなか見えてこない作品。
講談社、2200円+税。
『イベリアの雷鳴』の続編にあたる。
逢坂氏のライフワーク第2弾。
泥沼化する第二次世界大戦時のヨーロッパを舞台に、各国の諜報戦を描く長篇。
中立国スペイン・マドリードでは、枢軸国側と連合国側で虚実入り乱れての壮絶な諜報戦が繰り広げられていた。
そんな情勢の中で、日系ペルー人の宝石商である北都昭平は、イギリスの旅券管理事務所に勤めるヴァジニアといつしか恋に落ちてしまうのだが…。
そんな折、ついに日本が真珠湾を奇襲し、アメリカが参戦、ますます予断の許せない状況に陥っていく。
『イベリアの雷鳴』と『燃える蜃気楼』の中間に位置するため、本書だけを最初に読むと何が何だかわからなくなってしまう。
物語の流れからいっても、3タイトルに分ける必要性はなく、上中下巻に分類して欲しいと思った。
(2001.12.8初版発行)
講談社、2300円+税。
『イベリアの雷鳴』、『遠ざかる祖国』の続編にあたる。
逢坂氏のライフワーク第3弾。
第二次世界大戦の最中、連合国側と枢軸側の思惑が、中立国スペインで火花のように飛び交う。
英仏露に加え、米の参戦により、勢いを盛り返す連合国側は、より優位に立とうと諜報戦を仕掛けようとする。
苦戦を続ける枢軸側では、戦争終結と和平に向け、模索を始める人物も現れる。
さまざまな人物が入り乱れ、ますます目が離せない第3弾。
全編を通じていえることは、連載ものを本にまとめたため、何度も繰り返し同じ説明が繰り返される点が読んでいて何とも鬱陶しく感じる。
3冊を加筆修正したならば、もっとスムーズな流れで迫力あるストーリーになったのではないかと惜しまれる。
(2003.10.15初版発行)
文藝春秋、1524円、短編連作集。
これは逢坂氏の「その他短編集」に属する。
謎めいたバー「まりえ」を訪れるさまざまな客人の姿を通して語られる連作短編。
文藝春秋、2095円。
逢坂氏の作品を大雑把だが、「スペインもの」、「百舌もの」、「その他短編集」に分類するとすれば、これは「スペインもの」に属する作品。
スペイン・フラメンコギターといった、著者お得意の題材に、今回は史実でもある核爆弾落下事件を組み合わせた、超大作。
過去と現代のパートが交互に描かれて進行するが、最後に急展開して、時間的空間はもちろんのこと、それぞれの登場人物や錯綜した事件が、いっきに物語の渦に巻き込まれていくのが圧巻。
非常に読み応えのある作品。
さすが、ベテラン逢坂氏!と、感嘆せずにはいられない。
集英社、1700円、短編連作集。
ご存じ、御茶ノ水署生活安全課の迷刑事コンビ、斉木斉(サイキ ヒトシ)と梢田威(コズエダ タケシ)が、今回も大いに大活躍(!?)。
さらに今回は、のっけから斉木係長が一目惚れするという事態が発生!!
恋患い(しかもかなり重症)という、とおまけつき。
そして、これまで幼なじみでコンビを組んでいた2人のもとに、新しいメンバーが本庁から配属になる。
しかも万年、昇進試験に失敗し、今だに「巡査長」の梢田にとっては、年下で階級も上、何と女性刑事だったのだ。
斉木&梢田パワーをも、上回るこの女性刑事の登場で、ますます快調なシリーズ第二弾。
もう、とにかく小難しいことは一切考えずに、お腹の底から楽しんで読める作品。
次作はいつでしょうね!?
中央公論社、2000円、長編。
岡坂神策シリーズ。
現代調査研究所の所長である岡坂は、ある日ひょんなことから知り合った、大手広告会社「萬通」の社員、鳴瀬真純から、萬通主導で開催する大型イベントのオリエンテーションに参加してはどうか、と持ちかけられる。
「ハリウッド・クラシック映画祭」という名称で、古い映画ファンのための企画であった。
一方、同時期に、東都ヘラルド新聞社から、「スペイン内戦終結60周年記念シンポジウム」という仕事が舞い込む。
岡坂は2社の仕事を並行して進めながら、ある事件にも巻き込まれていくのだが・・・。
週刊読売に掲載されたもの。
映画(特に古い映画)に、興味のある人には、数々の作品の評価や蘊蓄が披露され、ある意味興味深いかもしれない。
ところが私自身、映画のタイトルや俳優たちの名前が列記されていても全くピンとこないので、600ページを越す長編でかなりのページ数を割くと思われる映画等の説明には、いささかうんざりしてしまったのが本音である。
最後の結末から言っても、これは短編小説でもいいのではないかといった、気がするのだが・・・。