〈長田 弘〉
書名&たまえもん度★をクリックすると「たまえもん書評」が表示されます
晶文社、1359円+税、ファンタジーエッセイ。
長田氏の『ねこに未来はない』にむきあう物語エッセーとして書かれた作品。
自由という名をふたつもつジュジュは、ありふれた何でもないただのひとりの女の子。
ウサギという名の、みにくいでぶねこと一緒に毎日、街を歩きます——著者のあとがきにもあるように、この本は『ねこに未来はない』と同様に、日々のこころのみえない余白に書かれたもの、と表現されている。
43編のショートストーリーは、まさしく「こころの余白に書かれたもの」という、表現がぴったりのお話ばかり。
何の変哲もない、平凡な街の様子や、人々や、景色も空気さえも、「ジュジュ」というフィルターを通すと、全く異なるものに見えてくるから不思議である。
まるで絵本の世界に紛れ込んだような錯覚さえ覚えながら、1編ずつ、口の中でお気に入りのキャンディをころがすように楽しめる。
さすがは著者が詩人なだけに、詩的な世界が広がる1冊。
副題の「サラダの日々」は、「Salad days : a period of youthful inexperience」…の「Salad
days」を日本語訳したもの。 (1991.3.15初版発行)